脳神経外科

特徴

脳腫瘍は、患者/家族の生活の質に大きく関与する重要な疾患です。携わる医師が習得すべき内容は患者背景の理解から、手術テクニックまで広く深く、それだけにやりがいのある仕事です。
原発性脳腫瘍は病理学的に種類が多く、臨床像も多彩です。多くの症例が紹介され、集学的な治療が行われる当がんセンターのように、充分な経験をもった施設で研修することが重要です。一方、転移性脳腫瘍の患者が明らかに増加しています。以前は腫瘍内科医に適応外とされていた脳腫瘍を持つ患者にも、全人的積極的治療が実施されるようになっています。脳は最重要臓器と位置づけられ、脳外科医の役割はますます重要になっています。
当科では、脳腫瘍(良性/悪性)の診断/外科治療/アジュバント治療を積極的に行っています。FDG-PET-CT、320列CT、3T-MRによるMRS、Tactgraphyを術前、経過観察の診断に駆使し、機能診断を含めた脳腫瘍画像診断の新しいプロジェクトを企画しています。病理診断の理解は非常に重要です。病理診断科と共同で脳腫瘍の薬剤耐性を研究しており、定期的カンファレンスにおいて治療方針の妥当性などを検討しています。
手術室では手術顕微鏡、術中ナビゲーション、超音波吸引、神経内視鏡など最先端の機器をそろえ、基本/原則に忠実な手術から低侵襲を目指す方針です。とくに下垂体腫瘍、後頭蓋窩腫瘍には、多くの経験を有しています。頭蓋底腫瘍は、頭頸部外科/再建・形成外科/眼科との合同手術を行います。また、陽子線治療科と共同で頭蓋底腫瘍、神経膠腫などの困難な治療に取り組んでいます。定位放射線治療は、放射線治療科と共同で診療を担当しています。血管内手術を積極的に取り入れ、脳/頭頸部領域における腫瘍血管の塞栓術、血管の閉塞試験、急性/慢性期血管障害の診断治療も行っています。また、神経膠腫や悪性リンパ腫の化学療法も、自科でプロトコールを作成し、積極的に行っています。さらに2007年から、研究所免疫治療部と共同で、悪性神経膠腫の免疫治療を開始しました。
以上のように多角的な情報を集め、豊富な手持ちの治療法のなかから、患者の病態や条件にあわせた治療の組み合わせを選択します。他科、他職種との緊密な協議から、幅広く知識や経験を増幅することが日常臨床の進歩につながると考えております。また、近隣施設および世界各地の脳神経外科施設との人的交流や症例検討会の共同開催を通じて、新しい知識と技術の習得に努めています。

カリキュラム

後期臨床研修プログラムでは、静岡県立3病院、すなわち県立総合病院/こども病院/がんセンターの各脳神経外科をローテーションし、それぞれの専門分野の症例を集中的に学習します。静岡がんセンターでは、基本的に100例/年の脳腫瘍症例で手術/アジュバント治療を経験することを求めます。院内外の医師や他の職種との共同作業の経験を積むとともに、自身で診断し治療適応を判断する能力を身につけ、指導医の監視下で血管撮影/穿頭術/開頭術など基本手技が実践できるようになることを目標とします。
チーフレシデントも受け入れ可能です。静岡がんセンターのコース選択により、外科系の他科(頭頸部外科、再建・形成外科など)、病理診断科などのローテーションが可能です。画像診断科、麻酔科のローテーションは必須です。研修過程を自分の将来設計に基づいて、また脳外科学会専門医資格の取得から専門分野への成長を視野に、選択することを薦めます。
手術は基本/原則をマスターしてから、低侵襲を目指す治療を指導します。毎日の科内病棟/外来症例検討会、1回/月のMMカンファレンス、さらに前記多科カンファレンスに参加し、積極的に発言することを目指します。 研修中には、1回/年以上の学会発表と論文投稿を目標に、学会発表、論文随筆の基礎も指導します。

疾患・手術内容

良性/悪性の脳腫瘍、がん患者に関連する急性期脳血管障害/頭部外傷を診療対象にしています。入院患者数は、年間約250例です。手術件数は約130件/年。開頭術が約70%を占め、他は経蝶形骨洞手術、頭蓋底手術、定位的生検術、脳室腹腔シャント術などです。定位的放射線照射は70例/年、化学療法は約50件/年、また、血管内手術は約10件/年です。いずれも毎年増加しています。

専攻科

専攻科