病院の活動_薬剤師_各部門技師

(P171-181)

薬剤師・各部門技師など

  総括

総括技師長 半村  勝浩

 20年のあゆみ

 静岡がんセンターにおけるコメディカルチームの活動は、開院にさかのぼること2年半、2000 年2月に秋丸正博(初代 画像診断科技師長)が県庁西館5階のがんセンター開設準備室に診療放射線技師の立場で入職したことから始まります。秋丸は主として画像診断部門の整備を担当し、以後のコメディカルチームの監督的立場を務めました。当時の準備室長は大須賀俊郎(後の静岡県副知事)でした。その後、2001年1月に半村勝浩(初代 放射線治療科技師長)と南里和秀(初代 生理検査科技師長)が入職しました。半村のミッションは秋丸と連携して放射線治療部門の開始準備をすること、南里は臨床検査技師の立場で生理検査含む臨床検査部門の整備でした。4 月には、沼野真澄(初代 陽子線治療科技師長)、医学物理士として山下晴男、二見康之が入職して陽子線治療部門の準備が加速しました。また、増田芳之(初代 リハビリテーション科技師長)、佐藤智明(初代 感染症科技師長)、石原秀樹(診療放射線技師:PET、核医学担当)、永田心示(薬剤師:PET薬剤担当)、稲野利美(初代 栄養室長)らが合流し、コメディカル分野をほぼカバーできる体制となりました。
 メンバーは皆、臨床で活躍していた医療技術者でしたが、準備室業務は未経験で、勝手の違う仕事に戸惑うこともありました。しかしながら、行政職、医師、看護師のスタッフと共に熱く議論し、充実した日々でした。準備室には、「自分たちの手で、他にはない、先進的ながんセンターを立ち上げよう」という熱意がありました。静岡がんセンターのモットーである「多職種チーム医療」は、準備室時代から「多職種開院準備チーム」の形で実践されていたといえます。苦労を共にした準備室時代の人脈は、その後も個々の財産となっています。県庁での準備室チームは2002年の3月末に解散し、医療職種のメンバーは現在の地に移動し、最終準備に入りました。
「完全フィルムレス・ペーパーレス環境での医療」は、実際には準備室時代の机上の想定とは大きく異なり、特に当時は機器から出力される各種情報の規格がそれぞれ異なったため、送受信やサーバーへの保存方法の調整で苦労しました。各部門では開院直前まで綿密な検討とリハーサルが繰り返され、無事に2002年9月6日の開院日を迎えることができました。
 メンバーは開院後も高い能力と熱意で、担当部門を発展させました。
 放射線・陽子線治療部門でも、当時完成形といえる治療部門システム(治療RIS)がない中で、メーカーと議論を重ねて実現した「完全フィルムレス・ペーパーレス環境での放射線治療運用」について伊藤哲(現 放射線・陽子線治療センター技師長)が、2003年春の放射線技術学会総会でポスター発表したところ、「金賞」を受賞し、皆で喜ぶとともに、静岡がんセンターの電子化システムの先進性を華々しく印象づけました。薬剤部は、薬剤師による抗がん剤無菌調製、レジメンオーダーによる薬剤事故防止体制でスタートし、また「経口抗がん剤チェックリスト」を出版し、経口抗がん剤の安全使用について広めました。検体検査部門は、2013年の病院機能評価にて、教育プログラムの質の高さから、また輸血管理部門は、患者の安全性を配慮した管理機能の質の高さから、両部門とも「S=秀でている」評価を受けました。その後、生理検査部門と病理診断部門を含めて、2016年にISO15189を取得し、その品質管理の高さを証明しました。リハビリテーション部門は、「がんのリハビリテーション」という新分野を確立し、その実績はその後の保険適用に反映されました。栄養部門では、日本大学の吉田教授と「がん患者さんと家族のための、抗がん剤・放射線治療と食事の工夫」を共著し、患者さん、ご家族に有用な情報を提供しました。画像診断部門では、多種類の診断機器を一元管理し完全フィルムレス・ペーパーレス環境での実運用を軌道に乗せました。また、2005年には、豊富な画像データ資源を背景にメーカーと世界初の「類似症例検索システム」について共同研究を締結しました。医療機器管理室は、7000台を超える機器を効率的に管理し、かつ緻密なデータ分析により、適切な点検が装置寿命を延ばすということを実証し論文化しました。これらの業績により2018年の病院機能評価では、「S=秀でている」という高い評価を受けました。
 この20年で強く記憶に残っているのは、2011年の東日本大震災とそれに伴う「計画停電への対応」です。3/11のその瞬間は、リニアックの出入口重量扉が大きく揺れて、待合室に置いてある水槽は水面が大きく波打ちました。私たちは、リニアック室内に患者が閉じ込められないように速やかに退室させ、安全な場所へ誘導しました。3/14以降の計画停電では、日々変化する電力供給時間帯に合わせて、なんとか治療を継続しようと連日多職種で協議、時間調整し、患者さん一人一人に治療時間を連絡する日々が続きました。おかげで完全な治療休止日は発生しなかったと記憶しています。約1週間の計画停電の期間中は、総力戦で臨み、結果としてこの期間の治療を停滞させなかったことは、“Good Job”だったと自負しています。

 現在の状況

 開院して20年、コメディカル各部門は、これまでの実績を基礎にさらに発展させ、成長と進化を継続しています。
 薬剤部は、病棟薬剤師を配置し、病棟での薬剤指導体制を拡充させています。画像診断科も連日の多くの検査に加えて読影レポートの既読管理も行い「レポート未確認」による医療事故を防いでいます。放射線・陽子線治療センターは2015年に、放射線治療科と陽子線治療科が一体化して発足しました。この時のミッションの一つに「両分野に習熟した技師を育成すること」があり、勤務表を一元化し業務上の交流を推進しました。これは後に新型コロナウイルスのクラスターが技師室で発生した際に、「両方の業務ができる技師が多数育成されていた」ことが、業務調整に有利となり、危機を乗り切ることができました。生理検査部門の超音波検査は「fusion image」など高精度技術を日常検査に活用し、加えて深部静脈血栓の検査や抗がん剤による心筋障害の評価にも取り組んでいます。検体検査部門は、従来の業務に加え、2019年の新型コロナウイルス感染症が発生して以降は、その関連業務が急増しましたが、委託業者と連携し重要な役割を果たしています。また、外来化学療法患者の急増に伴い、関係者で調整し7時45分から採血を開始しました。これにより採血結果確認とその後の化学療法の開始時刻を格段に早めることができました。病理診断部門は中間評価を受けながらISO認定を継続し、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の適用を決める「コンパニオン診断」にも対応しています。リハビリテーション科は、「社会復帰支援」を目標に掲げ、高齢者の入院前支援を開始し、廃用症候群や誤嚥性肺炎などの術後合併症を低減させています。また、がんの身体活動に関するリハビリテーションやリンパ浮腫のケアについて、学会での受賞や講演など、国内外で高い評価を得ています。医療機器管理室は、ダヴィンチなど高精度医療機器を含めて管理する機器の台数が急増する中で、使用者に対する安全研修を適切に実施し、医療機器の安全使用について引き続き推進しています。栄養室は、提供コストと患者の希望に配慮した選択食システムを両立させています。また、栄養指導や多職種で構成する栄養サポートチームで活動し、支持療法や患者家族支援にも取り組んでいます。     

 未来に向けて

 コメディカルが関係する今後の課題として、「陽子線治療の将来構想」や「患者利便施設(仮称)の活用」などがあります。前者はこれまでの実績を元により進化させた形での陽子線治療のあり方を多職種で議論し、後者では、現在の薬の受け取り待ち時間の大幅な改善を目指しています。2023年4月より、コメディカル部門は独立した「医療技術部門」として組織化され、より独立性が認知されました。総括技師長としては、コメディカル部門を横断的に俯瞰、管理し、横串の働きをすることが重要と思っています。各部門の独立性を尊重し、専門職種として向上させながら、横の連携も重視し、多職種チーム医療の一翼として成長と進化を継続させていきたいと思います。

 

  薬剤部

薬剤部長 篠 道弘

 薬剤部のあゆみ

 2002年4月、抗がん剤関連の医療事故が多数報道される中での開院準備となりました。がん化学療法の安全性を高めるため、レジメンオーダー方式の導入を強く提案しました。実施入力を併用して記録を確実にするとともに、薬剤師による抗がん剤の無菌調製を実施し、後に確定ボタンを押した際の検査値自動チェック機能も追加して安全性の向上にも寄与できました。麻薬管理を効率化するため、開院時より麻薬管理システムも導入し、採用薬を決定するとともに、周知を目的として薬剤部ホームページも作成しました。その結果、国内トップクラスの麻薬使用量でありながら麻薬管理を格段に効率化できました。また、開院後20年間で種類が増加したオピオイドの等価換算や切り替えタイミング、レスキュー・ドーズを簡便な操作で計算できるツールを作成し、薬剤部ホームページにて使用可能としたところ、他院から譲渡希望をいただくようになりました。併せて、オピオイド注射液の濃度や流速などの計算を行えるツール等も作成し、ライブラリー化することができました。

 現在の状況

 開院時より抗がん剤調製を薬剤師の基本業務と位置づけており、土日・祝祭日、黄金週間や年末年始にも業務を拡大してきました。習熟すべき抗がん剤調製技術を段階的に設定した4段階教育ラダーも作成しました。病棟への完全常駐を目標としつつ、緩和ケアチーム等の多職種チーム医療に積極的に参画してきました。また、化学療法センターや手術室にも常駐する等、薬剤業務の拡大努力を継続してきました。従来からの対物業務においても、薬物療法の安全性や効率の向上に寄与できるようになってきました。調剤業務でもチェック機能を向上し、抗がん剤の場合には初期投与量や休薬期間、検査値の確認、処方歴を確認した上での調剤に変化しました。特に抗がん剤の検査値確認時には、職員の能力差を極力排除し、精度の高いチェックに結びついていると他院からも高い評価を得ています。

 未来に向けて

 上記のように、対物業務は一定のレベルに達しましたが、臨床業務は人員不足やPBPM(Protocol Based Pharmacotherapy Management)の導入が遅れており、高い評価を得るには至っていません。病棟をまたがって活動するチーム医療には早期より参画していますが、全病棟への平日完全常駐を早期に実現する必要があります。今後、病棟や化学療法センターでの薬剤業務についてはPBPMを軸に見直す必要があります。さらに、がん専門薬剤師等の認定取得者の業務権限を見直し、非認定取得者のそれと区別すれば、認定取得にインセンシブを与えるとともに、高度な技能に裏付けられた権限を行使した専門薬剤師の業務結果を可視化できると考えています。開院以来、インフラの整備や充実を継続しつつ、臨床面での活動範囲を広げてきました。薬剤師からの発案の中でも、レジメンオーダー方式は当院のみならず国内のデファクトスタンダートとなり、精度の高い抗がん剤調剤時の検査値チェックは書籍化して普及を目指しています。今後も薬剤師からの発案を具現化し、薬物療法の安全性向上や効率化に寄与したいと考えています。

  画像診断科

技師長 池ヶ谷優美

 画像診断科のあゆみ

 国内最先端、県内初となるフィルムレス・ペーパーレスを目指し、経験者13名、新卒者3名の 16名からなる診療放射線技師が集結し、部門システムの構築から、撮影方法や患者確認、造影剤管理等を中心に開院準備にあたりました。すでに画像診断装置の選定は済んでいましたので、搬入から稼働に向けてのハード面の準備が行われました。ペーパーレスを掲げていましたが、患者確認などは紙運用の利点を取り入れ、患者誤認を防ぎ医療安全を考慮した運用を行っています。また、検査同意書も同様の運用であり、現在もその運用は続いています。さらに、造影剤アレルギー・体内金属の確認のため、検査前確認票を追加し、患者情報の収集に努めています。
 がん診療の進歩に貢献できる画像診断を担うため、一般撮影は、トモシンセシス機能付き・ FPD装置への更新、CT装置は16列CT2台からADCTや高精細CTへ更新し画質向上はもちろん脳・心臓などの血流評価が可能となり、現在4台を有しています。また、MRI装置2台は高磁場・高速撮影可能な装置へ更新し、1.5T装置1台、3T装置2台となり、IVR系装置は、IVR-CT がADCT搭載へ、CBCT機能付加装置へと更新しました。サイクロトロンによる院内製剤の利用を拡大させるため、PET装置をPET-CT装置へ更新し、PET-CT装置2台体制となりました。これら装置更新に伴い、開院当初から増え続けている画像診断検査のニーズに対応すべく、現在は開院年度の2−3倍程度の検査件数を安全で質の高い検査を行っています。また検査件数の増加に伴い造影検査も増加し、国内でもトップクラスの造影剤使用数となっています。この多くの造影検査に対し、いつ起こるか分からない造影剤アレルギーに速やかに初期対応ができるように、医師・看護師の多職種にて急変時対応トレーニングを定期的に行い、安全性を考慮した検査を日々行っています。

 現在の状況

 現在、診療放射線技師31名、検査助手5名となり、5チームで業務にあたっています。造影剤アレルギー歴や既往歴、体内金属の確認を行うため作成した検査前確認票は常に見直しを図り、タイムアウトの実施などを用いて医療安全に努めています。また、医療放射線の安全で適正な管理体制の構築が求められており、当科を中心に医療放射線安全管理委員会を立ち上げ、医療被ばくの管理および記録、画像診断機器の線量評価を検討しています。

 未来に向けて

 近年発展が著しいAI技術の進歩は、画像診断の各分野においてもその適用範囲が広がってきています。これらの技術を取り入れ、医療被ばく、職業被ばくの最適化を考慮し、多職種チームとしてがん診療に貢献していきたいと考えています。

 

  放射線・陽子線治療センター 

技師長 伊藤哲/沼野真澄

 放射線・陽子線治療センターのあゆみ

 開院当初、放射線治療科・陽子線治療科の診療科として両科部長の下、放射線技師がそれぞれ 4名と2名、陽子線治療研究部と陽子線治療科兼任の物理士2名、看護師2名が配置され、放射線治療と陽子線治療が開始されました。放射線診療設備はリニアック2台、陽子線治療室1室のほか、治療計画CT2台、X線シミュレータ1台を整備し、少ないスタッフ数でも安全を最優先して治療を行うため、常に多職種で話し合いながら業務を行うチーム医療を実践する環境が出来上がりました。
 20年の間で一番大きな変化は、2015年11月に放射線治療科と陽子線治療科が一つとなり放射線・陽子線治療センターが発足したことです。これと同時に放射線治療棟を増築し、リニアック更新時にも常に4台の装置を使用することが可能となりました。

 現在の状況

 患者数や高精度照射の増加に伴い、リニアック4台、CT同室設置の小線源治療室、陽子線治療室も2室稼働させ、スタッフは技師21名(内10名放射線治療専門放射線技師)、物理士6名となりました。治療室の数や放射線治療技術者の人数は全国トップレベルの数を有するとともに、年間の治療患者数も常に全国5位以内と多忙を極めています。開院3年後に開始した強度変調放射線治療(IMRT)は年々増加し、現在は全治療患者の2割がこの治療となっています。陽子線治療は先進医療として始まりましたが、徐々に保険診療が認められ、現在は7割以上の患者さんが保険診療で治療を受けています。
 放射線・陽子線治療センター発足後は勤務配置を柔軟に行い、短期間で全ての装置に精通する人材育成が可能となりました。また、治療技術や医療安全について、互いの良いところを学び議論することにより、真の一体化を成し遂げることができました。また、ファルマバレーセンターを活用し、治療用補助具を開発し日々の治療に活用しています。

 未来に向けて

 放射線治療の流れは腫瘍への高線量投与と正常組織への線量軽減がより重要となってきています。放射線・陽子線治療技術部門では、医師の意図する治療計画を安全に、そして正確に行うため、常に最新技術を学び業務を推進するとともに、患者さんとのコミュニケーションを大切にして日々安心して治療が受けられる環境や体制作りが重要であると考えています。放射線・陽子線治療技師は医師以外の職種として直接治療に関わるという重大な責任を担っていることから、これからも安全と安心をモットーに最先端放射線治療に取り組んでいきたいと思います。

 

  生理検査科

技師長 米山 昌司

 生理検査室のあゆみ

 生理検査室は、開設以来がん医療における診断、治療が効果的、効率的に行われるよう迅速かつ正確な検査報告を提供し、センターの拡充に伴い超音波検査を中心に検査数を増やしてきました。診療に必要な生理検査結果を診療科にタイムリーに報告することに努め、2013年から外来診察時には結果を参照できるように取り組み、現在はほとんどの外来診察で必要な超音波検査の結果が参照できるようになりました。検査数の増加はがんの診断に加え、2011年よりがん患者さんの高リスクである深部静脈血栓検査の増加が著しく、近年では抗がん剤治療による腫瘍の評価や心筋障害の評価、長期抗がん剤投与による動脈硬化の評価によりさらに増加しています。また、新技術を積極的に日常検査に取り入れ、造影超音波検査、組織の硬さを評価するエラストグラフィ、CTやMRIとリンクするフュージョンイメージによる肝腫瘍・乳腺腫瘍評価や、心筋障害評価のためのスペックルトラッキングを行い、診断に寄与できるように超音波検査を実施しています。2016年には国際規格ISO15189を取得し、2022年には超音波検査に関して学会認定の検査室となり、高度がん専門病院の検査室として精度の高い検査結果の提供に努めています。

 現在の状況

 開院以来、超音波検査・心電図検査・肺機能検査・脳波検査を行い、各検査のデータを一元管理するシステムを構築し生理検査全般を管理運営しています。開院当時は技師5名で運営していましたが、現在は技師12名、検査助手1名の体制となり、年間27,000件の超音波検査を実施しています。日々の検査を検証して、その結果のレビューを行うことでスキルアップに努め、開院時には2名であった超音波検査士は9名となり、超音波検査に関する論文では9回の表彰を受け、国内で高い評価の検査室となっています。検査室内では医師と連携して頭頚部腫がんの穿刺検査や、形成外科領域では術前に皮弁の微小血管の評価を行い、多職種チーム医療の一員として活動しています。皮弁の微小血管の評価は、国内で先駆けて日常検査として取り入れました。今後もがん診療の最前線の超音波検査を提供していきます。

 未来に向けて

 がん診療における生理検査の役割は第一にがんの診断ですが、治療前後や治療中の全身状態の評価も行います。以前は診断しなかった深部静脈血栓や近年提唱されている抗がん剤治療関連心筋障害、長期抗がん剤投与による動脈硬化など新たな評価も求められ、精度の高い効率的な新技術が開発されています。検査の需要は今後も増加する中で、技師の知識や技術レベルが診断結果を左右することが多い分野です。先進的な検査技術や知識を常に学ぶ姿勢で取り組み技術を習得し、今後も高度がん専門病院の診療に高いレベルの検査結果の提供を実践してまいります。

 

  病理診断科

技師長 刀稱 亀代志

 病理診断科のあゆみ

 開院時は、わずか3名の臨床検査技師でスタートしました。迅速かつ丁寧にキレイな組織・細胞標本を作製し、病理医に正確な診断をしてもらう、これが昔も今も病理の臨床検査技師に課せられた使命でもあり目標です。病理標本作製は「職人技」的な世界でもありますが、時代とともに標準化の必要性が叫ばれ、2016年12月には厳しい審査の末、世界標準であるISO15189の認定を取得しました。当時、病理でのISO取得は全国的にも少なく、静岡県内では第一号の取得となりました。今現在、ISO15189お墨付の病理検査室として、人・物・技術の標準化と適切な精度管理の下、安全で質の高い病理診断を提供しています。2020年4月には、がんゲノム医療中核拠点病院の指定を受けましたが、ISOによる「第三者認定を受けた病理検査室」の存在は非常に大きな役割を果たしました。近年、病理診断用のみならず、がん遺伝子パネル検査やコンパニオン診断用の標本作製も激増していますが、時代のニーズに合わせて休むことなく変革を続けています。

 現在の状況

 組織診断において重要な標本作製を臨床検査技師が全面的に担っています。また細胞診断においては、細胞検査士による顕微鏡下での的確な異常所見の拾い上げや、診断においても病理医と対等な立場で議論ができています。病理医と臨床検査技師はいわば車の両輪であり、その良好な相互関係があってこそ正確な病理診断が成り立ちます。病理診断は「確定診断」であり、そこに検体取り違え等のミスは絶対にあってはなりません。「患者安全第一」であり、人・物・システムで可能な限りの手段を尽くし、ミスの防止に努めています。そのような体制下において、多岐にわたる病理業務に加えて、今後も増え続けるがん遺伝子パネル検査、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の適応を決定するコンパニオン診断への対応を行っています。近年、病理診断件数は増え続け、高止まりのまま推移しています。さらに治験や臨床研究への対応件数も非常に増えています。病理業務における臨床検査技師の負担は大きくなる一方ですが、使命感と達成感を維持して邁進していきます。

 未来に向けて

 日々新たに適応となる診断薬や検査にも迅速かつ柔軟に対応していきます。また、生検材料などワンデイパソロジーにも対応すべく標本作製過程における体制の強化を図ります。さらにデジタルパソロジーに適応した標本作製や人工知能(AI)による病理診断支援にも対応のできる体制を構築します。

 

  リハビリテーション科

技師長 田尻 寿子

 

 リハビリテーション科のあゆみ

 リハビリテーション(以下リハ)科は、理学療法士2名、作業療法士1名、言語聴覚士1名で開院を迎えました。当時は、がんリハに関する教科書は皆無に等しい状況でした。2007年4月に施行されたがん対策基本法に基づく第1期がん対策推進基本計画では、「すべてのがん患者とその家族に対して、療養生活の質の向上を果たすべき」とされ、がん医療の中でもリハの重要性が認識され始めました。さらに第2期の計画には、明確にリハの文言が盛り込まれました。そうした中、初代科部長であった辻哲也医師の編集のもと、がんリハの教科書『癌がんのリハビリテーション』(金原出版)、『実践! がんのリハビリテーション』(メヂカルフレンド社)、『がんのリハビリテーションマニュアル 周術期から緩和ケアまで』(医学書院)などが立て続けに出版の運びとなり、当院の多くのスタッフが執筆しました。段階的なスタッフの増加に伴い、各職種の機能の分化が進んでいき、予防的・回復的・維持的・緩和ケアを主体としたリハに取り組みました。

 現在の状況

 がん患者の高齢化や罹患率の増加・生存率の向上に伴い、がんやがん治療の後遺症と長期にわたり共存していくことが課題となってきました。そこで開院15年頃より、リハ科全体の目標を「社会復帰支援」と掲げ、理学療法/言語聴覚療法は「高齢者の術後合併症を予防し社会復帰支援」を、作業療法では「就労・就学世代も含めた社会復帰支援」を目標にと明確に定めました。
 その後、高齢者に対し、入院前から機能を評価し、肺炎や廃用症候群などの術後合併症を予防し、早期に社会復帰を促す病院全体の取り組みの一環として、理学療法・言語聴覚療法の介入を充実させ、術後の誤嚥性肺炎を抑制する結果を得ています。作業療法では、学業・家事・仕事・趣味などを支援するべく身体機能や生活面/ QOLの評価や、リンパ浮腫予防・治療などへの取り組みを充実させています。リンパ浮腫においては、形成外科、栄養科や病棟との協業により、運動指導や体重管理、不安の軽減などにも取り組み始めています。

 未来に向けて

 理学療法・言語聴覚療法では、外科治療に加え、化学療法や放射線療法の前から、廃用症候群・誤嚥性肺炎などの合併症を予防する取り組みを開始したいと思います。作業療法では、AYA 世代の課題にも留意した社会復帰支援を充実させたいと考えています。
 また、活動性の維持・向上や運動が健康に与える好影響を鑑み、在宅ベースでも支援できるよう外来リハの必要性について検討してまいります。

 

  医療機器管理室

室長 窪 孝充

 

 医療機器管理室のあゆみ

 安心利用ができるように医療機器を管理することと、安全に治療できるよう臨床をサポートすることを目標としています。管理する医療機器は年々増加しており約300台(2002年)の保有台数は今では約7,000台(2022年)となりました。また、臨床サポートも要望に応じて拡張しており、医療機器管理業務以外に人工呼吸器業務、血液浄化業務、循環器業務、内視鏡室業務、手術室業務と幅広く活躍しています。
 ダヴィンチによるロボット支援の低侵襲手術は、2011年の開始当初から参画しており2012年度の136症例は2021年度には567症例となりました。その全ての症例が円滑に進行できるように医学と工学の知識を活かした臨床技術を提供しています。また、腹腔鏡や胸腔鏡といった体腔鏡を用いた低侵襲手術では、専用の治療器具(体腔鏡専用の鉗子など)が様々で部品数は515部品あります。それらも医療機器であるため、定期的な点検による安全使用に貢献しています。
 体温計から人工呼吸器に至るまで、院内で保有する多種多様な全ての医療機器の安全管理が評価された結果として2018年、特定機能病院の要件の一つである病院機能評価一般病院3[3rdG:Ver.2.0]の医療機器管理部門における最高レベルの「S」評価を取得しました。

 現在の状況

 国家資格の臨床工学技士10名が、医療機器管理業務、人工呼吸器業務、血液浄化業務、循環器業務、手術室業務、内視鏡室業務を担当しています。2020年度における医療機器の点検数は 41,157台/年でトラブル・修理の対応数は4,039件/年、人工呼吸器業務は83件/年、血液浄化業務は139件/年、循環器業務は356件/年、手術室業務は581件/年、内視鏡室業務は2,336件/年でした。その他に医療機器を安全に使用できるよう医療従事者を対象にした研修会を開催しており、80回/年で3,002名の参加者でした。

 未来に向けて

 医療機器は年々高度化しています。性能を最大限に引き出せるよう知識技術の提供と信頼性を保持するための定期的な保守に努めるとともに、故障期間やトラブル・修理の発生数を可能な限り少なくできるよう日常点検を継続していきます。

(参照1)→

  栄養室

室長 稲野 利美

 栄養室のあゆみ

 まだ、がんに対する食事や栄養管理について世間でも模索している中、当栄養室では、開院以来「患者さんと家族を徹底支援する」を基本理念として、「変化する状態に即した安全な食事提供と栄養管理」「美味しく個人の嗜好を反映した食事の提供」「病気や治療を忘れホッとする一時の提供」「患者さんや家族が“自己管理できる力”の向上を目指した栄養指導と適切な情報提供」を目標に、日々業務を積み重ねてきました。近年、治療の進歩に伴い、効果的な治療や自分らしい日常生活の継続に必要な体力を維持するため、栄養管理の重要性に目が向けられるようになり、積極的な早期栄養介入が求められてきています。当院でも、患者家族支援として多職種による入院前スクリーニングや指導、外来化学療法における栄養評価や指導を行っています。さらに、入院期間短縮や高齢少数家族という近年の背景を考慮し、外来での栄養指導の対象を拡大しています。QOL改善にも目を向け、リンパ浮腫の方への栄養介入なども開始しました。また、データをもとに栄養介入パスや当院患者に即した嚥下基準を作成したり、各種研究に参画し、根拠に基づく効果的な栄養管理方法の構築にも努めています。患者給食においては、全国的に見ても画期的なタッチパネル式の選択食サービスを、開院以来、現在に至るまで給食委託業者の協力を得て運用を継続し、満足度や摂取量の向上、情報提供に努めています。また、治療中の食事や栄養についての情報提供も、書籍やホームページ、患者サロンなどを通じて積極的に行っています。

 現在の状況

 栄養室では休日に関係なく毎日、食事提供と栄養指導、相談を行っています。スタッフは現在、管理栄養士9名+事務職員1名で、うち3名が「がん病態栄養専門管理栄養士」を、4名が栄養サポートチームに求められる資格を有しています。その他にも様々な専門知識を得るため個々に研鑽を行い、治療や生活の支援のため、支持療法や患者家族支援に多職種と共同し取り組んでいます。

 未来に向けて

 今後はさらに患者や家族の高齢化と核家族化が進み、支援者である若者が減少することを踏まえ、健康や生活の基盤である栄養を、いかに患者や家族自らの手で管理できるように教育・支援していくかが課題であり、地域との連携体制を含め、取り組んでいかなくてはならないと考えています。また、短い入院期間の中で、各患者の背景にあった効果的で退院後につながる栄養管理を提案すべく、病棟専従管理栄養士の体制づくりを進めていきたいと思います。

 

静岡がんセンター・ファルマバレープロジェクト 20年のあゆみ

静岡がんセンター・ファルマバレープロジェクト 20年のあゆみ