静岡県立静岡がんセンター総長

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挨拶

静岡がんセンターのあゆみ
-理想のがん医療を目指して-

静岡県立静岡がんセンター
総長 山口 建    

 2002年4月1日、静岡県立静岡がんセンター開設の日、416名の医療スタッフや職員がこの地に集結し“理想のがん医療”を目指した活動を始めました。それに先立つ8年前からの準備段階では、母体となる医療機関はなく、担当職員と少数の医療スタッフの業務は困難を極めました。しかし、真っ白なキャンバスに思い通りの絵を描けるのが魅力で、多くの仲間が集まり、開設にこぎ着けることができました。以来、20年の歳月が流れ、業務委託職員も含め2, 250名が勤務する我が国三大がんセンターの一つにまで成長を遂げています。現在、厚生労働省により、特定機能病院、がんゲノム医療中核拠点病院、都道府県がん診療連携拠点病院などに指定され、日本のがん医療をリードし、国際的にも高く評価される存在となりました。
 静岡がんセンターは、病院、疾病管理センター、研究所の三部門と、運営を支える事務局、マネジメントセンターからなる医療・保健行政・産業活性化機構複合体として設計されています。開設以来、各部門は力を合わせ、がん対策、診療、患者・家族支援、臨床研究、人材育成、医療産業活性化などに力を注いできました。
 がん対策では、国や県のがん対策関連計画の策定に寄与するとともに、県内がん医療レベルの向上に貢献しています。診療面では、20年間で数万人のがん患者の命を救うとともに、多くの良性疾患を正しく診断し、不要な治療を回避してきました。また、約2万人の難治がん患者の最期を「死の質」に配慮して看取っています。この間、臨床研究を推進し、ゲノム医療など、最先端医療の開発・導入にも尽力してきました。患者・家族支援の分野における静岡がんセンターの先進的な取り組みは、全国医療機関の先駆者として評価され、現在は、がんよろず相談を始めとした包括的患者・家族支援体制の整備に努めています。人材育成についても、豊富な症例をもとに、がん専門医、認定看護師、薬剤師など、毎年100名近くを養成し、全国各地に送り出しています。
 ファルマバレープロジェクトでは、医療産業活性化による「医療城下町」の形成に取り組み、多くの製品を開発し、静岡県の医薬・医療機器生産額を日本一に押し上げました。 本書の編纂にあたり、準備期間を含めた過去28年間を振り返ってみると、明確な計画を立て、決してぶれることなく実行してきた取り組みが、「理想のがん医療」の実現につながっています。それには、県民・患者・家族の皆様と静岡県・静岡県議会による強力な支援、そして、職員一人ひとりの不断の努力が大きく貢献しています。
 日本は、世界に先駆けて超高齢社会に突入しました。多くの高齢者が罹患するがんの克服に向けて、静岡がんセンターの挑戦は、初心を忘れることなく続きます。また、ファルマバレープロジェクトでは、「医療城下町」を基盤として、住民重視の「医療田園都市」の構築を追求します。こうした活動は、更なる未来に向けて、「超高齢社会の理想郷」を目指す静岡県の取り組みでもあります。

 

静岡がんセンター・ファルマバレープロジェクト 20年のあゆみ

静岡がんセンター・ファルマバレープロジェクト 20年のあゆみ