「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

入院の手続き・準備

助言

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【入院の手続き】
入院が決まると、入院予約の手続きをします。
このとき、病室に関しては、差額ベッド代がかかる病室、差額ベッド代がかからない病室、どちらでもよいかなど希望を尋ねられます。差額ベッド代がかかる病室を選択する場合は差額ベッド代を確認しておきましょう。

◇--◇--◇言葉の解説:差額ベッド代◇--◇--◇
差額ベッド代は、正式には「特別療養環境室料」といいます。「特別療養環境室料」は、入院環境の快適さを高める目的で、個室など、少人数の病室を希望した場合に生じる費用のことです。
差額ベッド代がかかる病室は、厚生労働省が定めた一定の面積、設備(個人用の私物の収納設備、個人用の照明、小机等および椅子)、病床数(一室のベッド数)は4床以下(4人部屋以下)、病床ごとのプライバシーを図るための設備などの充足が求められています。
その他にも、差額ベッド代の徴収に関して、細かく決められています。たとえば、差額ベッド代がかかる病室に入院させ、患者さんに差額ベッド代を求めることができるのは、患者さん側の希望がある場合に限られ、患者さんに対して、十分な情報提供を行い、患者さんの自由な選択と同意に基づいて行われる必要があることなどの決め事があります。
通常入院する部屋代は、入院費に含まれ保険適用ですが、差額ベッド代は保険適用外です(高額療養費制度の支給対象になりません)。
病室のタイプや費用は、医療機関ごとに異なりますので、ご確認ください。

多くの場合、入院日は、「大体〇〇頃」となっていて、入院の前日か前々日などに病院から連絡があると思います。
これは、入院中の患者さんの治療の状況やその後の回復状態などで、予定入院期間より早く退院になる場合、あるいは退院が延期になる場合などが起こることがあるためです。

【入院までの過ごし方】
(1)検査について
以前は、入院してから治療前のさまざまな検査を行われることが多かったのですが、最近では、入院までの期間に、治療の前段階として治療のために必要な全身状態の検査などを進めていきます。入院を待っている間、何もしていないというわけではなく、治療に向けた計画がその間も進んでいます。

(2)入院までの過ごし方
入院日決定の連絡があるまでは、どのように過ごせばよいのか不安かもしれませんが、体調を整えるなど身近な目標を設定して日々を送りましょう。
医師や看護師から、入院前に説明・指導、指示がある場合は、それに従ってください。
特になければ、基本は「適度な運動と休息、栄養バランスのよい食事、十分な睡眠」です。入院前、治療前だからといって、家にこもっている必要はありません。また、栄養バランスのよい食事といっても、同時に、食事の時間を楽しむことも大切です。栄養だけにこだわるのではなく、(おいしい)、(楽しい)と感じながら食べることも体と心に大切なことです。

どのような治療を受ける前でも基本的に注意する点としては、
a)持病の管理やお薬の管理をしっかりしておく。
b)サプリメントや健康食品は、がんの治療に支障をきたすこともあるので、使っている場合は必ず担当医に伝える。
c)手洗いやうがいの習慣を身につける。これは、患者さんだけではなく、誰にとっても大切なことなので、できれば、ご家族も一緒に日頃から習慣づけておく。
d)口腔ケアを身につける。口と歯の健康は大切です。日頃から、かかりつけ歯科をもち、定期的にチェックを受けるとよいでしょう。できれば、治療が始まる前に、歯科医院で虫歯や歯周病などの治療や歯のクリーニングを受けることが望ましいのですが、治療開始までの期間の問題もあるので、担当医とも相談しましょう。
ブラッシングの仕方、入れ歯の管理なども、習慣として身につけるようにしましょう。これも、特別なことではありません。

(3)入院費用の概算の確認
入院費用がおよそどのくらいかかるか事前に聞いておくと、待機期間に、入院費用の準備をしたり、『認定証』の交付申請を行ったりできるでしょう。病院の会計事務や相談窓口などで確認してみましょう。

(4)民間保険に加入している場合の確認
加入している民間保険(がん保険、医療保険など)があれば、もう一度保険証書を確認し、不明な点があれば、加入している保険会社の相談窓口に連絡して確認しておきましょう。
どのような条件だと支払われるのか、1日いくら支払われるのか、いつ頃保険がおりるのか、申請手続きはどのようにすればよいのかなどもあらかじめ確認しておくと安心でしょう。契約されている保険によっては、保険会社に提出する診断書が不要な簡易請求(医療機関で発行される診療明細書や治療状況報告書で請求)が可能な場合や、他の生命保険会社に提出する診断書のコピーで対応ができる場合もあるので、保険請求手続きをする前に確認しておきましょう。

(5)会社への確認
会社勤めの方などは、就業規則に目を通し、「休暇」のこと、「傷病手当金」のことなどを確認しておきましょう。

(6)医療費控除の準備
本人または家族(税法では「生計を一にする親族」といいます)が、1年間(1月1日~12月31日)で、10万円を超える医療費を支払った場合、申告すれば医療費が控除され税金を返してもらうことができます。あらかじめ医療費の領収書や保険者(公的医療保険)から送付される『医療費のおしらせ』は整理しておきましょう。医療費控除の際は、『医療費控除の明細書の添付』が必要になり、また医療費の領収書は自宅で5年間保存する必要があります。
対象になる医療費や手続き等に関しては、国税庁のホームページや静岡がんセンター作成の「医療費控除のしくみ」をご参照ください。

【入院費用と高額療養費制度】
■入院費用に関するポイント
◎高額の支払いが見込まれる治療が予定されている場合には、事前に所得区分の『認定証』を保険者に申請し、入手しておく
◎差額ベッド代がかかるのか、差額ベッド代がかかる病室を利用する場合は費用を確認
◎請求書はいつ頃きて、いつ頃までに支払うのか
◎支払い方法(カードは利用できるかなど)
◎退院が決まったら、支払い前に概算金額を確認し、費用を準備しておく(カード以外の場合)

診察、検査、処方、手術といった保険診療の単価は、診療報酬制度といって、全国共通の基準が設けられています。病院の機能、規模や職員配置によって、入院医学管理料、看護料は異なります。

入院前に、ご自分の入院費用が全体としてどのくらいかかるのか、医師あるいは会計事務に確認してみましょう。どのくらいお金を準備しておいたらよいか把握しておくことは、安心感につながります。また、クレジットカードが使えるかなど医療費の支払い方法も確認しておいた方がよいでしょう。

入院費は、治療や薬代以外に、入院基本料(平均在院日数や看護師配置より異なります)、食事代などを合わせたものになります。
がんの治療や検査にかかる医療費は、予想以上に高額で、経済的に悩んでしまうことがあると思います。このように高額な医療費による経済的負担を軽減するために、高額療養費制度(対象となるのは、公的医療保険が適用される医療費)があります。
ただし、高額療養費制度には、差額ベッド代、食事代、診断書等の書類作成費用、保険対象外の治療費などは含まれないのでご注意ください。
高額療養費制度などの制度は、わかりにくいと感じる方もいらっしゃると思います。静岡がんセンターのホームページで公開している小冊子『医療費のしくみ』(https://www.scchr.jp/book/manabi4/manabi4-4.html)は、図表などでわかりやすく詳細な説明がありますので、ご参照ください。PDF形式でダウンロードできます。

■『認定証』の申請
『高額療養費制度』は、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費(差額ベッド代や食事代などは別途必要になります)が、月の初めから終わりまでの1か月で一定の額(自己負担限度額)を超えた場合に、保険者に申請することで(多くの健康保険組合は、自動的に高額療養費が支給されます)、その超えた金額を支給する制度になります。
医療費は年齢や収入に応じて1カ月に支払う自己負担限度額が定められています。
医療費が高額になりそうな時には、所得区分の認定証を保険者に申請し、入手しておきましょう。交付を受けて治療をする医療機関の窓口で認定証を提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。
なお、70歳以上で所得が「一般」、もしくは「現役並み所得III」の方が治療する場合は、窓口での支払いが自動的に自己負担限度額までになるため手続きは不要です。

『認定証』の申請をせずにいったん窓口で支払いをした場合も、後日、保険者に申請をして自己負担限度額を超えた金額の払い戻しを受けることができます。ただし、高額療養費を申請して支給されるまでには、少なくとも3ヶ月程度かかります。1ヶ月に1つの医療機関での支払いが高額になる可能性がある場合は、『認定証』をあらかじめ申請しておきましょう。

なお、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関や薬局では、マイナンバーカードだけではなく、通常の健康保険証の記号番号等によりオンライン( オンライン資格確認等システム)で資格確認をすることが可能になります。これにより、患者さんは限度額定期用認定証を持参しなくても限度額の区分が医療機関に伝わります。ただし患者さん側に限度額の区分を証明する書類はありませんので、オンライン資格認証をした場合にはご自身の限度額の区分を確認しておいたほうがよいでしょう。
おかかりの医療機関等が「オンライン資格確認等システム」を導入しているかどうかは、医療機関等の支払い窓口、あるいは厚生労働省のマイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関リスト(都道府県別)等でご確認ください。

2022年10月の改正で、75歳以上の後期高齢者について、新たに負担割合が2割になる方がいらっしゃいます。対象となる方は、2022年10月1日以降の3年間(2025年9月30日まで)は経過措置として1か月の外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う負担限度額を3000円までに抑えられます。
なお、払い戻しの対象になる方は、高額療養費として事前に登録されている高額療養費の口座に後日払い戻します。
2割負担になる方で、高額療養費の口座登録をされていない方は、2022年秋頃に都道府県広域連合や市区町村から申請書が郵送されます。

『認定証』の申請の際には保険証のほか、印鑑等が必要になることもあるので、あらかじめ自分が加入している保険者に電話等で確認するようにしてください。

保険の種類が3割負担の患者さんの場合、医療費の総額のうち3割が自己負担となります。これに、入院中の食事代(保険に関係なく1食460円、ただし、住民税非課税世帯で認定証をお持ちの方は食事代が減額)、差額ベッド代などを加えたものが入院費用の総額となります。

【入院時に必要なもの】
入院時の持ち物については、入院の説明時に渡される『入院案内』のパンフレットに書いてあります。また、治療ごとに必要な物品は、外来で、もしくは入院初日に、看護師から説明があります。これらは、病院の売店でそろえることもできます。

最近は、入院期間自体短くなっているので、必要最低限にしておくと、入院・退院時の荷物が少なくてすみます。
寝衣は、病院によって決められたものがある場合、自分で持ち込むか病院内リースか選択できる場合、自分でそろえる必要がある場合とあります。

あると便利なものとして、
◇面会時や売店や検査に行くときなどにはおることもできるカーディガンや前開きの上着など。カーディガンや上着は、袖がゆったりしている方が袖を通しやすい。
◇売店や検査等に行くとき、お財布等を入れるミニバッグや巾着袋、あるいはエコバッグ
◇ベッド柵にものを引っ掛けるときに使うS字フック
◇ストロー付きコップ(横になったままで使ってもこぼれにくい。蓋もあると便利。乳幼児用のものでも代用できる)
◇筆記用具、ノートやメモ帳
◇クリアファイル:病院から渡される書類や説明の紙などまとめていれておくと、紛失しにくく便利です。
◇ビニール袋(持ち手付きのほうが使い勝手はいい。ゴミ入れや下着やパジャマなどを入れておくなど)
◇本や音楽プレーヤー、携帯電話やタブレットなど
音楽プレーヤーや携帯電話、タブレット等は、イヤホンも忘れずに準備し、使用に関しては病院の注意事項やマナーを守りましょう(持ち込み禁止の場合、時間や場所の指定がある場合のなどあります)。充電などは、病院によっては電気料が有料の場合もあります。充電ケーブルは長めだとコンセントの位置を気にせず使いやすいと思います。
◇ウエットティッシュ
などがあります。

【入院時の付き添いについて】
現在は、入院基本料のなかに看護料が含まれています。ですから付き添いは必要ありません。
1950年に「完全看護制度」が導入され、その後、診療報酬の改定により「基準看護」という言葉になりました。「基準」とは、患者数に対する看護師の配置人数を示すもので、その基準に応じて入院基本料が定められています。
入院生活に関して心配や不安なことがありましたら、看護師にお伝えください。
なお、ご家族の希望や患者さんの状態により、医師が必要と認めた場合には、付き添いが認められることがあります。

【相談窓口の確認】
これは、入院前というだけではなく、初診の時にでも確認しておきましょう。今は、悩みも困りごともないと思っても、いざというとき、相談できるところをあらかじめ知っておくと安心です。
また、全国のがん診療拠点病院には、「がん相談支援センター」があり、ここでは、設置されている病院の患者さんやご家族でなくても相談ができます。

(最終更新日:2022年10月22日)



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