「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

抗がん剤による食欲不振や味覚変化

抗がん剤治療で、食欲不振になり、食事がとれなかったことがとてもつらかった。
14件の体験者の声があります。
抗がん剤の副作用による味覚の変化や鈍さで、何を食べてもまずく、つらかった。
9件の体験者の声があります。
副作用で気分が悪くなったり、味覚が変化したり鈍くなり、よけいに食欲がなくなった。
8件の体験者の声があります。
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助言

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【食欲不振があるときのポイント】
食欲不振に対する工夫のポイントとして
◎ 食欲不振の原因が明らかなときには、その原因を改善する工夫をする(例:吐き気、味覚の変化、気分の落ち込みなど)
◎ 気分のよい時に、食べられるものを食べる
◎ 抗がん薬治療(※1)に伴うからだの変化を知り、食事のとり方にメリハリをつける
※1 抗がん薬治療:がん薬物療法(細胞障害性抗がん薬、ホルモン療法薬、分子標的薬等を含んだ総称)の別の呼び方として使用しています。以降、わかりやすいように『抗がん薬治療』とのみ表記します。なお、悩み文は、2003年、2013年の調査で患者さんが書かれた表記のままとしています。
◎ 口に合う、たんぱく質豊富な食品をさがす
◎ 栄養補助食品を利用する
などがあります。

【味覚の変化があるときのポイント】
食欲不振の原因の一つである味覚変化があるときのポイントとして
◎ 口の中を清潔な状態を保ち、保湿(口の中の乾燥を防ぐ)にも心がける
◎ 違和感のある味(まずい、金属のような味など)は避けて、いろいろな味付けを試してみる
◎ 自分にとって、他の食べ物よりは少し多く食べられる、少し食べやすいなど、比較的食べられる食べ物の味や特徴をチェックし、食事に積極的に取り入れてみる
◎ 口の中が乾燥しているときは、お茶や汁物等で口の中を潤したり、あんかけ料理にしてみたり、食べ物に水分を補ってみる
◎ 味を感じにくい場合は、味付けをはっきりさせてみる
◎ 治療による影響とは別に、もともと味覚は個人差がある(年齢、性別、精神的な条件や身体的な条件、気候風土などによっても異なる)ため、同じメニューや素材でも、人によって合う、合わないはある

【食欲がないときには、抗がん薬治療に伴うからだの変化を知り、食事のとり方にメリハリをつける】
治療中は正常細胞へのダメージも強く、通常よりもエネルギー量を必要とするため、体力を維持するための食事は重要で、栄養価が高い食品、タンパク質をとることは大切です。

けれども、栄養面や体力にこだわりすぎていると、食べることが『義務感』となり、かえってつらくなってしまいがちです。食欲は、精神的なことからも影響を受けるので、『食べること』が重荷になってしまうと、これまで食べられていたものも食べたくなくなるという状況に陥ってしまうことがあります。このバランスをとるのは、難しいとは思いますが、自分の食事に関係する症状(吐き気、味覚の変化、口内炎など)やその度合いの日々の変化を知り、『無理をしない時期』と『自分なりにがんばってみる時期』を探してみましょう。

食欲がないときは、一日3食など食事の基本的なルールはあまり気にせず、気分のよい時に食べられるもの、好きなものを食べるという気持ちをもつように意識してみます。
また、食欲がないとき、味覚がおかしいときは、これまで好物だったものを食べると、『おいしくない』と感じ、好物が嫌いになってしまうことがあるので、症状がひどいときは、好物は控えるようにしてみましょう。

同時に、メリハリをつけて、少しがんばって、食事や栄養をとることを意識する期間も作りましょう。
食欲の状態や、吐き気、味覚の変化など食欲不振に関わる症状の状態の日々の変化をみながら、症状がやわらいでくるポイント(期間)を見つけます。その時期は、『がんばって食べてみる』ことを意識し、タンパク質や栄養価の高い食品をメニューに取り入れてみる、あるいは自分で食事に関する目標を決めてみましょう。
その目標は、小さなものでかまいません。
たとえば、『1日1つ(1パック)は、ヨーグルトか牛乳を摂る』、『1日1回果物を食べる』などです。

具体的なメニューやレシピ、副作用への対応策に関しては、静岡がんセンターHPの『冊子・動画ダウンロード』のページにある『がんよろず相談Q&A  抗がん剤治療・放射線治療と食事編』が参考になります(PDFファイルで、該当する箇所の分冊、もしくは1冊全てダウンロードできます)。

また、インターネット上の情報提供サイトとして、『SURVIVORSHIP.JP』も参考になります。
『SURVIVORSHIP.JP』のコンテンツの一つである『抗がん剤・放射線治療と食事のくふう』では、180近いレシピを絞り込み検索して表示したり、症状別に一覧表示したりできます。
『SURVIVORSHIP.JP』のトップページでは、上記のアプリ版の紹介があります。iPad版、iPhone版、Android版のアプリがあるので、アプリをダウンロードしておけば、いつでも症状に合わせて、メニューやレシピ、ちょっとした工夫を確認できます。
その他参考になるホームページは、助言の最後をご覧ください。
この項目の最後に掲載している『コラム』では、がん患者さんの治療中等の食事のメニューやレシピの載った書籍をいくつかご紹介しています。

1. 食べやすく、栄養をとりやすいもの
(1) おもちやおはぎ
エネルギーにもなり、比較的消化のよい食品の一つにおもちがあります。おもちは粘りけがあり、のどにつかえやすいので、つかえないように食べやすい大きさに切って調理するなど工夫をしましょう。
大根おろしや削り節、きな粉にからめて食べたり、お雑煮やお汁粉のように煮込んで食べたりするのもよいでしょう。また、エネルギーを更にたくさんとりたい時は、揚げもちにするのもよいでしょう。

(2) 汁物
手軽にたくさんの種類の食品をとる方法として、みそ汁やスープのような汁物をおすすめします。いろいろな食品を一緒にとることで、相互作用が引き出され栄養価が高まります。また、温かいスープや冷たいスープなど工夫して食べてみましょう。

(3) カレーライス・めん類・酢の物
香辛料や味の濃いもの、酸味などで食欲を刺激することもあります。

(4) プリン・茶碗蒸し・豆腐・山いも
食べられるようであれば、たんぱく質が多く含まれている食品を加えてみましょう。また、のどごしを良くするのも、おすすめです。豆類、鶏肉、卵などが比較的加えやすいといえます。

(5) 季節のくだもの・野菜ジュース
何種類かのくだものや野菜を組み合わせて、効率よく栄養をとることができます。旬のものなどを取り入れ、おいしく飲みましょう。ただし、あまり甘くしすぎないように気をつけましょう。
※ イレッサ服用中は、グレープフルーツジュースを控えてください。

2. すぐに食べられる工夫
食事の時間にこだわらず、「今なら調子も少し良いし、食べられそう」というように、自分の体やこころに問いかけて、気分のよい時にすぐに食べられる工夫をしましょう。

◎ 好きなものや食べられそうなものをいつも準備しておくと、気分のよい時にすぐに食べられます。
◎ おむすびやおかずを小分けにするなどして、冷蔵庫や冷凍庫に入れておくと、食べたい時に電子レンジで温めれば、すぐに食べられます(吐き気があるときは、温かいごはんのにおいで吐き気がすることがあるので、マスクをしてからレンジのドアをあける、冷ましてから食べるなどしましょう)。
◎ 気分のよい時に作り置きしておくとよいでしょう。
おむすびは、普通の大きさではなく、一口で食べられるくらいの大きさにしておくと、食欲がなくても、(これくらいなら食べられる)と気持ちをプラスにもっていくきっかけになる可能性があります。達成感は、こころのがんばりの素になります。
◎ 食べられそうなものや食べやすかったものを覚えておいたり、作る人に伝えたりするとよいでしょう。

☆--★--☆ コラム:メニューやレシピが掲載されている本 ☆--★--☆
がんの治療を受けている患者さんや、食事を作るご家族のなかには、インターネットやスマートフォンなどのモバイルツール、パソコンなどが苦手という方もいらっしゃると思います。
最近では、治療を受けるがん患者さんのための食事の本も増えてきているので、いくつかご紹介します。
(1) 『改訂版 症状で選ぶ!がん患者さんと家族のための 抗がん剤・放射線治療と食事のくふう』
 出版社:女子栄養大学出版. 価格:税抜き2000円
 注)「がん体験者の声Q&A 抗がん剤治療・放射線治療と食事編」をリライトしたものです。)
(2) 『がん患者さんのための国がん東病院レシピ』
 出版社:法研 価格:税抜き2000円
(3) 『抗がん剤・放射線治療を乗り切り、元気いっぱいにする食事116』
 出版社:主婦の友社 価格:本体1500円
(4) 『抗がん剤・放射線治療をしている人のための食事』
 出版社:ナツメ社 価格:税抜き1700円
(5) 『抗がん剤・放射線治療と向きあう食事』
 出版社:女子栄養大学出版. 価格:税抜き1600円
(6) がん治療中の食事サポートブック2018
 発行:がん研究振興財団
(がん研究振興財団が発行している冊子で、1冊200円です。同財団のHPをご参照ください。なお、PDF版は無料でHPからダウンロードできます)

【環境を変える・五感を活用する】
食欲は食べる場所や雰囲気などによっても変わります。庭やベランダなど、いつもと違う場所での食事や、家族・友人と楽しく食事をするなど、気分を変えてみるのも食欲増進に効果的ですので、いろいろな工夫をしてみましょう。

1. 食感的な工夫
温かいものよりも、冷たいものの方が比較的食べやすいと感じられます。冷たくてもおいしく食べられるものを、メニューに取り入れてみましょう。

2. 視覚的な工夫
付け合わせや食器の柄などの色も食欲を増す効果があります。付け合わせは、食べられずに残すことになっても構わないと割り切り、それがあることで少しでも食べたいという気持ちにつながると考えるようにしましょう。
また、盛り付け方も工夫してみましょう。大きな器にたくさん盛り付けてしまうと、「こんなに残してしまった・・・」とか「これだけしか食べられなかった・・・」などと思ってしまうので、少しずつ盛り付け、いろいろな種類を用意してみるのもよいでしょう。

【味覚変化の症状と原因】
抗がん薬で起こる味覚の変化は、
◎ 舌にある味を感じる部分である味蕾(味細胞)のはたらきが低下する
◎ 末梢神経が傷つき、味を感じて脳に情報を伝達する神経が治療により影響を受け、<味覚中枢が信号を受信して感じられた味を判断する>という一連の流れがうまくいかない
などにより、起こります。
また、抗がん薬による口内炎(口の中の粘膜障害)、唾液の分泌が悪くなって起こる口の中の乾燥、心理的な要因などによっても起こります。

多くの場合、3-4週間後には回復するといわれています。ただ、2-3ヶ月かかるという報告もあり、口の中の清潔度、口内炎(口の中の粘膜障害)の有無、唾液分泌の有無や程度、抗がん薬の種類等によって影響を受けている可能性もあります。

抗がん薬に伴う味覚の変化は、「うま味」や「塩味」が感じにくくなる、「甘味」は強く感じるなどの症状があります。「酸味」の変化は少ないといわれています。

味覚変化で起こる症状には、下記のような症状などがあります。
◎ 自発性異常味覚
何も食べていないのに、いつも口の中で『苦い味』(あるいは、『渋味』など)がする自発性異常味覚が最も多くみられます。
例えば、「金属の味がする」、「苦く感じる」などです。
◎ 味覚の低下
抗がん薬の影響で、味覚を感じにくくなり、「特定の味がわからなくなる」、「何を食べても味がしない」、「砂をかんでいるみたい」などがあります。
◎ 味を強く感じる
「何でも甘く感じる」、「塩辛く感じる」などがあります。

【味覚の変化があるときの食事の工夫】
味覚の変化といっても、いろいろなパターンがあるので、どのような変化なのか、あるいは同時に生じている食事に関連した症状(吐き気、口内炎など)などもあわせて、味の調整を検討してみましょう。

<工夫のポイント>
1.味覚の変化や症状に合わせて、味の調整をする
2.うがいをしたり、あめをなめたりする
味覚の変化の状況によって、工夫を変えてみましょう。

1. 味が濃すぎると感じる場合
◎ 強く感じる味の調味料や素材は使わずに、他の味付けをメインにして工夫する。
◎ 状態に合わせて、薄味かだしのみの調理にしてみる。
◎ 化学調味料(だし)を使用せず、天然のだしを利用する。
◎ 食べるときに味付けできるようにしてみる。
◎ 特定の味(苦味・甘味・塩味など)を強く感じる場合は、だし煮やスープ煮のような調理法もおすすめ。
◎ 食品そのものが障害となる味のあるもの(例えば、ハムやソーセージなど)で、苦味を強く感じたり、干物などの塩味を強く感じたりする時は、障害となる味のあるものは控える。あるいは、甘みを強く感じるときは、干し柿やジャムのようなものは控える。

2. 甘みに敏感になり、何でも甘く感じる場合
◎ 砂糖やみりんを料理には使用しないようにする。
◎ 塩、しょう油、みそなどを濃いめにしてみる。
◎ ゆずやレモン、酢などの酸味を利用してみる。

3. 味が本来の味と違って感じる場合(苦い、金属ような味など)
◎ 肉類の味に変化が起きて食べられなくなった場合には、別の食品でたんぱく質をとる。
例)チーズ、ヨーグルト、牛乳、アイスクリーム、ピーナッツバターなど
◎ 肉や魚は、あく抜きや臭み抜きをする。

4. 味が感じにくい場合
◎ 味付けをはっきりさせる。
◎ 香辛料や香味野菜を使う。
◎ 香りやうま味を利用して、風味や深みを加える。
◎ 料理の温度を人肌程度にしてみる。

たとえば、「味がしない」、「味が薄すぎる」と感じる場合は、味のはっきりした料理にしましょう。
味付けがはっきりしている料理とは、味付けを濃くすることもそうですが、塩分を多くとったり砂糖を多く入れたりすることばかりを言うのではありません。味をはっきりさせる工夫を参考にしましょう。

◎ だしをきかせる
塩分を増やさずに、味をはっきりさせる工夫をしましょう。
削り節を煮出した後、しばらくおいて冷ますことで、だしがよく出ます。また、シチューにバターなどの乳製品を加えたり、煮物にみりんや酒を加えたりすることで味にコクが出ます。

◎ ごま、ゆずなどの香りや、酢を利用する
酢の物にレモン、かぼす、ゆずなどを添えると酸味がよく効くようになります。
焼き魚は、塩や酒で臭みを抜いて、味付けなしで焼き、レモンやかぼす等を添え、酸味を利用しましょう。また、アジを素焼きにして、レモンなどをしぼって食べてみましょう。しょう油をかける時は、なるべく少量にするよう心がけます。また、片栗粉をまぶして揚げてから酢醤油につけ、南蛮風にしてみるのもよいでしょう。

◎ 食材のうまみをいかす
食材を増やすことで、具のうまみがたくさん出て味がはっきりします。
汁物を作る時は、みそやしょう油の量は普段通りで増やさずに、具をたくさんにする、具の種類を増やすなど工夫します。また、うま味を利用して、味を薄めにして、だしを濃くしてみましょう。

◎ 味にアクセントをつける
味の変化が少し分かる場合には、味に変化をつけたりアクセントになるものを添えたりすることが効果的です。
からしあえ、ごまあえ、梅肉あえ、しょうが焼き、セロリやクレソンのサラダ、カレー風味など、多少の香辛料や香味野菜を用いて味に変化をつけるとよいでしょう。また、漬物などを味のアクセントにそえることも効果的です。

◎ 少し低温の料理にする
できたての温かいものを食べるよりも、少し冷めた程度の料理を食べる方がおいしく感じることがあります。
肉じゃがやシチュー、茶碗蒸しなどは、冷ましてから食べてみましょう。

苦味、薬のような味、金属のような味など、本来と違う味を感じたり、嫌悪感を覚えたりする食品や調味料は控えましょう。
◎ 塩味を控えめにする。
◎ だしを利かせたり、ごまやゆずなどの香り、酢を利用したりしてみる。
◎ 化学調味料の味が気になることがあるので、控えめにする。

【口に合う、たんぱく質の豊富な食品をさがす】
患者さんの多くは食欲不振などの症状から低栄養状態になり、食べやすいものとして糖質系(めん・パン・くだものなど)が中心になりがちです。そのため、たんぱく質の補給がとても重要になります。
けれども、実際にはたんぱく質を多く含む食品は、においなどから敬遠されがちです。患者さんの口に合うもので、たんぱく質が豊富に含まれる食品を探してみましょう。

1. チーズ
◎ 料理にのせて焼いてみましょう
   パン・ハンバーグ・ホットドック・ピザ・肉・魚・野菜・卵
◎ すり下ろして料理にかけてみましょう
   スープ・ソース・グラタン・野菜・マッシュポテト・パスタ
◎ サラダに混ぜてみましょう
◎ 料理に加えてみましょう
   パスタ・オムレツ・炒り卵・カレー
◎ おやつに加えてみましょう
   チーズケーキ・ホットケーキ・クレープ

2.牛乳・ヨーグルト
◎ 飲み物や料理に使ってみましょう
  カレー・シチュー・グラタン・卵焼き・スープ・ホットケーキ・ヨーグルトサラダ
◎ インスタント食品に加えてみましょう
  シリアル(コーンフレーク)・スープ・ココア
◎ その他
  ドレッシング、魚や肉の下味、ヨーグルトシェイクやヨーグルトアイスなどデザートに

3. 豆・豆腐
◎ 煮たり、裏ごしにしたりして、食べてみましょう
  茶碗蒸し・あんこ・プリン
◎ 料理に加えてみましょう
  カレー・グラタン・ハンバーグ・煮物・炊き込みご飯

【栄養補助食品を利用する】
食事に対する基本的姿勢としては、「食べられる時に食べられるものを」ですが、重度の体重減少またはそう予想される場合は、濃厚流動食(バランス栄養飲料)や他の補助食品などで栄養状態を維持・向上する必要があります。

「栄養補助食品」とは、一般的にはビタミンやミネラルなどのサプリメントがよく知られていますが、通常の食事で必要な栄養が得られない場合に、効率よく栄養を補うために用いるものです。
また、最近の栄養補助食品は、種類や形状、味も豊富になりました。中には、お茶、あずき、黒豆、コーンスープなどの味もあり、飲みやすく摂取しやすいドリンクタイプもあります。

◎ 栄養補助食品の購入方法
「栄養補助食品を買おうと思ったけれど売っていません。どこで買えばいいの?」と、いうような声を耳にすることがあります。
残念ながら、栄養補助食品は、一般のスーパーなどで買えないものが多いのが事実です。しかし、通信販売などシステムは充実していますので、かかっている病院の管理栄養士に相談して購入できるところを教えてもらうのもよいでしょう。

【口の中をきれいにして、保湿する習慣を身につける】
口の中には、もともとたくさんの雑菌(細菌)が存在します。本来なら、唾液が自然と口の中をきれいにしてくれたり、歯磨きやうがいで口やのどをきれいにしたりしていますが、副作用で唾液の出が一時的に悪くなる場合もあります。

そこで、副作用で体調が悪いときも、できるだけ口の中のきれいにして、保湿することが重要です。そして、口の中をきれいに保つためには、以下のことを毎日続け、習慣化していくことが大切です。
 a)正しいブラッシングを覚え実行する
 b)歯間清掃を行う
 c)うがい
 d)保湿

1. 歯みがき
◎ ヘッドは小さなもの
◎ 毛の硬さ:通常はナイロン毛の『ふつう』の硬さの歯ブラシ
注)ただし、出血傾向、歯ぐきなどの痛み、骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板などが低下しているとき)が強いときは、「軟毛」、「超軟毛」を使用
◎ 歯ブラシの交換:1ヶ月に1回程度
◎ みがき方:ペンを持つように歯ブラシをもち、歯と歯ぐきに対して、90度、あるいは45度くらいの角度であてて、歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目にあてて、軽い力で小刻みに動かす。
◎ 歯磨き回数:起床時、毎食後、寝る前
注)だるさが強いとき、吐き気があるときなどは、無理して、回数を守らなくてもかまいません。ただ、その場合でも、1日に少なくとも1回はきれいに磨くように努めましょう。

2. 歯間清掃
◎ 歯間をきれいにする際、歯間清掃用の歯間ブラシやフロスなどを使うと、歯と歯の間の歯垢を取り除く効果が高くなる。
注)ただ、使い方に気をつけないと、歯ぐきを傷つけやすいので注意する。

3. 口の中の粘膜の清掃
◎ 口の中の粘膜をきれいにすることで、口の中の細菌数も減る。
◎ 粘膜清掃の道具:『軟毛の粘膜ブラシ』、『スポンジブラシ』など
◎ 歯磨き剤は、使用しない
◎ ブラシやスポンジに少量の水を含ませて、口の中の奥側から手前に動かしてきれいにする。
両側の頬の粘膜、舌の下側、舌など

4. 入れ歯の管理
◎ 入れ歯の表面は、入れ歯の材質や形などの関係で、細菌が付着しやすく、カビの一種(カンジダ)も増えやすい。そのため、入れ歯を汚れたまま使っていると、感染の危険性が高くなる。
◎ 毎食後、入れ歯を外し、入れ歯用のブラシを使い、流水で入れ歯についている食べ物かすや汚れなどをきれいに取り除いてから、『義歯洗浄剤』につけておく。

5. うがい
◎ 口の中をきれいにして、保湿も保つために、1日に4回以上、水、あるいは生理食塩水でのうがいを行う。
◎ 生理食塩水の作り方
(1) 準備するモノ:きれいに水洗いした500mlのペットボトル1本、食塩4.5g(小さじ1杯弱)、水500ml
(2) きれいに洗った500mlのペットボトルに、食塩小さじ一杯弱と水を容器の9割くらい(約500ml)まで入れる
(3) ふたをして、塩がとけるまでよく振る
(4) コップに小分けして、うがいに使用する
注)生理食塩水のうがい水は冷蔵庫で保存して、1日で使い切る

6. 保湿について
口の中が乾燥しないように『保湿』につとめることは、口内炎ができたり、悪化したりするのを防ぐための大切です。
市販の保湿剤には、マウスウォッシュタイプ、スプレータイプ、ジェルタイプがあり、多くのメーカーから多種多様な保湿剤が出ています。
頬の粘膜や舌のふちは、歯のとがった部分や歯並びの影響で頻回に接触して刺激を受けることで、よけいに障害を受けやすいので、予防的にジェルタイプの保湿剤などを塗りましょう。
また、就寝時にも口腔内が乾燥しないように、マスクをつけて寝るのもよいでしょう。

【食事とご家族と】
患者さんやご家族、どちらからも食事に関する悩みやつらさをうかがうことがあります。
たとえば、患者さんからは、「せっかく私のためにと、一生懸命に工夫して作ってくれているのに、食べられなくて申し訳ない。食べられない自分を責めてしまう。」、ご家族からは、「少しでも栄養になれば、力になればとがんばっているけれど、(患者さんの)つらそうな表情や、一口、二口しか食べられないのをみていると、どうしてよいかわからなくなる。無力感を感じる。」など、お互いを思いやるが故、自分を責めてしまったり、無力感に襲われたりすることがあるようです。

患者さんにとっては、がんばってもどうしても食べられない時期があります。また、ご家族が一生懸命、体力がつくように、栄養がとれるようにとがんばってつくっても、患者さんは食べられないこともあります。けれども、これは、患者さん、ご家族、どちらが悪いわけではありません。

お互いががんばりすぎないように、そして、食に関連する症状が強いときは、ご家族は、患者さんが体とこころを休め、無理をしない時間の中でつらさがやわらぐように、『見守る』ことを第一にしましょう。そして、患者さんの具合が少しずつ楽になってきたら、そのときは、一緒に食卓を囲み、おしゃべりをしながら食べてみましょう。

『自分を責める』、『相手を責める』、どちらも、自分も相手もつらくなるばかりです。相手をほめたり、ねぎらったり、「ありがとう」をいえたりするのは、お互いにとって、力にもなります。

患者さんが、自分の食事に関係する症状(食欲不振、吐き気、味覚の変化、口内炎など)やその度合いの日々の変化を知り、『無理をしない時期』と『自分なりにがんばってみる時期』のめりはりをつけるように、ご家族も、『見守る時期』と『食事作りなどをがんばってみる時期』というように、めりはりをつけてみましょう。

《参考文献》
(1) 静岡がんセンター. がん体験者の声Q&A 抗がん剤治療・放射線治療と食事編.2007(冊子)
(2) 監修 日本がん看護協会. 編集 狩野太郎、神田清子. がん治療と食事 治療中の食べるよろこびを支える援助. 医学書院. 2015(書籍)
(3) 岡田明子、他. 乳癌化学療法による味覚障害の実態調査. 外科 2017 ; 79 : 257-260
(4) 神田清子、他. 化学療法を受けた患者の味覚変化に関する研究. 日がん看会誌.1998 ; 12 : 3-10
(5) 石川徹 、他.アンケート調査による外来がん化学療法に伴う味覚異常の発生に関する検討. 癌と化学療法. 2013; 40: 1049-1054
(6) 市川度 編著. がん薬物療法の副作用ケア とことん攻略本. メディカ出版. 2016
(7) 日本がん口腔支持療法学会/ 日本がんサポーティブケア学会.がん治療に伴う粘膜障害マネジメントの手引き 2020年版. 2020.金原出版

(最終更新日:2020年6月22日)



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