研究所長挨拶

研究所長 秋山 靖人

 DSC01228静岡がんセンター研究所は、2002年静岡がんセンター発足と同時に開設され、2005年の新研究棟建設と共に研究活動を活発化し、現在8部3支援室体制で運営されています。

研究所の使命は、「がんを上手に治すための医療技術の開発」、「患者・家族支援技術の開発」そして「ファルマバレープロジェクトの推進」という三本柱で、病院における患者診療の支援を重視しています。またファルマバレープロジェクトは、静岡がんセンターが拠点となり、静岡県主導の活動を推進し、多くの医療関係の製品を生み出してきました。現在では全国の地域研究クラスターの手本とされ、地方自治体による医療健康産業推進の成功例として評価されています。

静岡がんセンター病院は、開設以来すでに17年が経過し、診療実績では我が国のがんセンタートップスリーの一角を占め、患者家族支援を始めとする全人的医療の実践ではフロントランナーとして活動しています。静岡がんセンター研究所は、病院と協働し、日本人のためのがんゲノム医療の推進を目標に2014年よりProject HOPE(High-tech Omics-based Patient Evaluation、高度オミクス技術を用いた患者評価)を開始し、網羅的ながんゲノム解析研究を追求してきました。すでに5,000症例のがん患者についての臨床データと解析データを統合したデータベースの構築を終え、その成果を発表しています。このデータベースは、日本人のがんゲノム医療の実践において、全国で活用される予定です。今後、がんの全ゲノム解析研究にも取り組んでいく予定ですが、これまでの成果を受けて2019年9月にがんゲノム医療拠点病院に指定されました。今後、新たな臨床応用として、将来的ながんの新しい治療薬(特にがんに特異的な免疫抗原となるネオアンチゲンを用いたがんのワクチン療法)や診断技術の開発を進めていきます。

次に、がん患者とその家族を徹底支援するため研究所に設置された患者・家族支援研究部と看護技術開発研究部の2部門が、静岡がんセンター独自の活動を行っています。
患者・家族支援研究部は、がん患者の悩みや負担を軽減するための患者家族支援を当事者の視点で進めていくために、2回の大規模全国横断調査を行い、1万2千人あまりのがん体験者の生の声を集積してがん患者の悩みの全体像を明らかにしました。悩みのデータベースは、<がん体験者の悩みQ&A>サイト(https://www.scchr.jp/cancerqa/)で公開され、成果に基づいた冊子やコンテンツなどの情報支援ツールを作成し提供しています。また看護技術開発研究部では、がんの薬物療法を受ける患者さんが知っておくべき情報を的確に提供する「処方別がん薬物療法説明書」(https://www.scchr.jp/information-prescription.html)を作成しています。患者さんが、病気の種類や使用する薬の組み合わせ別に、治療の内容や効果、副作用の対処と工夫等について理解を深め、より積極的に治療参加できるようにしています。

 日本では、すでに令和の新しい時代が始まっています。近年、働き方改革や高齢者の再雇用の動きもあり、少子高齢化に負けない次世代のための新しい日本の国づくりも始まっています。そこで、静岡がんセンター研究所は、人生100年時代への対応を目指し、静岡県、静岡がんセンター、ファルマバレーセンターを中心とした医看工連携グループにより、新たに「健康長寿・自立支援プロジェクト」への取り組みを始めています。その目標は、静岡県東部の医療健康産業クラスター(ふじのくに医療城下町)をさらに強化し、アジアを始めとする世界のがん医療・高齢者ケアの中心となることです。

 

 

静岡がんセンター研究所部門

静岡がんセンター研究所

overview_clip_image002_0000

研究活動

研究活動