賀茂佳子薬剤師が日本緩和医療薬学会年会において「優秀演題賞」を受賞しました

2025年6月26日
静岡がんセンター
薬剤部長 佐藤 哲

2025年6月21日~22日、幕張メッセにて開催された第18回日本緩和医療薬学会年会において、薬剤部の賀茂佳子薬剤師が優秀演題賞を受賞しました。

【研究概要】
 抗がん剤による化学療法に比べて、鎮痛療法においては未だ遺伝子検査による個別化医療の実現が遅れています。しかしながら、オピオイド受容体や代謝酵素に関わる遺伝子変異の有無により、治療必要量の差や副作用発現率に違いを生じることが徐々に解ってきています。遺伝学的観点から患者に最適なオピオイドを選択するためには、さらなる研究が必要と考え、静岡がんセンターにおける全エクソームデータベースProject HOPEを用いて、タペンタドールの個別化医療における遺伝子変異の影響を調査しました。今回の解析では、オピオイドμ受容体遺伝子(OPRM1)の一塩基多型rs1799971において、G保持者でオピオイド投与量増加速度(OEI:Opioid Escalation Index)が低くなったことから、μ受容体活性が増大することが示唆され、既報で明らかになっているモルヒネとは逆転した結果となりました。さらに、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)のSNPであるrs4680は、タペンタドールの治療必要量には影響しないことが示唆されました。

受賞者から

今回の結果は、がん疼痛治療におけるオピオイド選択と投与設計の個別化に有用なデータであると考えます。今後はアレル別の副作用発現率に違いがあるかなどを調査したいと考えておりますが、タペンタドールは日本での販売が中止されていますので、未だ遺伝情報が知られていない他の薬剤に研究手法を応用することで、オピオイドの個別化医療発展が可能になると考えます。

薬剤部 賀茂 佳子

薬剤部

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