「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの
「がん相談支援センター」をご利用ください。
持続する傷跡とその周辺の痛み、しびれ、つっぱり感
手術した痕やその周辺の痛みがあり、つらい。
45件の体験者の声があります。
- (患者本人、70代、男性、大腸、2003年版)今まで5回の手術後の身体的痛みは感じなかったが、平成15年の肺がん手術後、退院してからの痛みに悩み、医師に訴えたが、痛み止めの投与のみで解決策はなかった。現在も背中と胸の痛みは続いている。
- (患者本人、50代、女性、食道、2003年版)手術後の傷の痛みに悩む。
- (患者本人、50代、女性、肺、2003年版)手術後の痛み、右手があがり難く痛いことを悩む。
- (患者本人、70代、女性、肺、2003年版)手術後、日夜ひどい痛みがあり、なぜ私だけがと思い、こんな苦しいなら手術をせず自然に任せればよかったと思った。痛みはだいぶ薄れたが、8年過ぎた今も残り1日1日が苦しい。
- (患者本人、70代、男性、肺、2003年版)外科手術後の傷口の痛みと、抗がん剤の副作用による、足の裏の痺れ、巻爪、皮膚の柔らかい部分の亀裂、発疹、皮膚乾燥、眼瞼炎に悩む。整形外科、皮膚科、ペインクリニック科、眼科等で診療をしているが傷口の痛み、足裏の痺れは長時間継続しており悩んでいる。
- (患者本人、70代、女性、乳房、2003年版)手術が終わり精神的苦痛は少なくなったが、手術部位があまりに大きく1年たっても痛むことがあり、気力と体力も低下し、物事に立ち向かう気力がなくなる。
- (患者本人、60代、男性、肺、2003年版)胸膜炎で水を抜いたところが時々痛む。
- (患者本人、40代、女性、子宮、2003年版)手術後の副作用、めまい等の更年期症状や股関節の痛みと腫れ具合に悩んだ。
- (患者本人、50代、女性、肺、2003年版)手術後の背中の痛みや息切れなどの身体の苦痛がつらい。
- (患者本人、50代、男性、その他のがん、2003年版)月1回の検診を受けているが時々痛みが多少ある。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)抗がん剤の副作用と、切除した方の手の動き、痛みに悩む
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)左乳房を全部取ったことで、肩こり、腕の痛み、脇の痛みなど毎日が辛い。
- (患者本人、70代、男性、咽頭・喉頭、2003年版)手術の痕が痛いことが辛い。
- (患者本人、70代、男性、咽頭・喉頭、2003年版)手術後6年も過ぎたが、首の周りが締めつけられるように痛みがあり、未だに悩んでいる。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)天気の悪いときなど、肩が痛くなる。
- (患者本人、60代、男性、膵臓、2003年版)手術部付近の鈍痛が消えず、食事後は苦しい。夜充分睡眠がとれず安定剤を飲用している。
- (患者本人、50代、男性、食道、2003年版)喉が常にかすれ声で、声が出なくなるのではないかと思った。手術の痕が時々痛い。
- (患者本人、70代、女性、食道、2003年版)喉周りの苦痛、食欲不振。動悸。食後の膨満感、すべてに意欲減退
- (患者本人、60代、男性、肺、2003年版)術後の痛みに悩んだ。
- (患者本人、60代、男性、大腸、2003年版)傷口が痛み、おならが出ることに悩む。
- (患者本人、50代、男性、胆道・胆のう、2003年版)体力も落ち、傷口も痛く、突然熱が出たりするのがいつまで続くのか。この熱がどこからきているのか。傷口の痛みがだんだんよくなるのか。
- (患者本人、40代、女性、胆道・胆のう、2003年版)子どもが自分の入院手術で精神的に落ち込み、そのフォローと術後の傷の痛みが重なり、しばらく大変だった。
- (患者本人、70代、男性、大腸、2003年版)傷の痛み。
- (患者本人、70代、男性、肺、2003年版)手術後の神経の痛み。
- (患者本人、70代、男性、その他のがん、2003年版)手術後の後遺症の痛みに悩んだ。
- (患者本人、70代、男性、その他のがん、2003年版)手術あとの痛み。
- (患者本人、70代、女性、肺、2003年版)胸の痛み、咳のときの痛み、背中の痛み、手術後の副作用、後遺症等日々の状態で変わってでてくる。
- (患者本人、50代、男性、口腔・舌、2003年版)手術部の痛み(しびれ)と飲食が辛いこと、話しにくいということ。
- (患者本人、60代、女性、胃、2003年版)手術の傷が現在も痛むこと。
- (患者本人、70代、女性、肺、2003年版)手術したところの痛みと、呼吸が苦しくなることがつらい。
- (患者本人、40代、女性、甲状腺、2003年版)手術の傷が痛む。
- (患者本人、80代、男性、食道、2003年版)今まで便秘で苦しんだが、やっと改善してきた。現在は胸やけ、患部の痛みがある。
- (患者本人、50代、男性、肺、2003年版)いつ病気が出るか再発するかの不安と、手術後の胸、傷口の痛みに悩む。
- (患者本人、50代、女性、乳房、2003年版)命は助けてもらったが、痛みがきつく、主治医に相談した。温めるとよいと言われ、手術後1年半過ぎた頃から温泉に行き、うたせ湯でリハビリしている。胸、背中、腕などの痛みが和らいだ。
- (患者本人、70代、男性、食道、2003年版)水泳を続けているが痛みは少し残っており、完全に治るのか心配だ。
- (患者本人、60代、男性、胃、2003年版)胃がんの外科手術で縫い合わせた場所の痛みがある。
- (患者本人、70代、男性、胃、2003年版)退院後、腹部に痛みがあり、その都度気になる。
- (患者本人、70代、女性、乳房、2003年版)退院時、色々とアドバイスをいただいたが、家に帰ると仕事もあり無理をするので、時々傷口が痛み、ちょっと心配している。
- (患者本人、50代、女性、乳房、2003年版)手術の後遺症で腕が痛い。
- (患者本人、60代、女性、肺、2003年版)半年後から現れた手術創のケロイドの引きつれ、ごろごろしたはれぼったさの痛み、呼吸や会話のときの肺の痛み、道路を歩くときや会話のときの息苦しさ、歩いているときに出る過呼吸発作の辛さなどに悩む。
- (患者本人、70代、女性、軟部組織系、2003年版)咳が出だすと、しばらく止まらない苦しさ、傷口らしき所の痛みが時々ある。
- (患者本人、50代、女性、子宮、2003年版)身体の痛み、脱力感、うつ状態がでて、心療内科を含めあらゆる医者に通った。
- (患者本人、40代、女性、大腸、2003年版)3ヶ月は腸に違和感があった。先生に話しても、「神経質だね」と軽くあしらわれ、先がわからないのが不安だった。
- (患者本人、40代、女性、乳房、2003年版)傷の痛みと腕のだるさ、むくみ、疲れ。経口抗がん剤の副作用やホルモン剤の副作用などについて一つ一つ解決していくのに大変な日々だった。4年半薬を飲み、身体に激痛が走るようになっても、医師は「それは副作用ではない」と聞く耳を持ってくれなかった
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)背部痛と上腕の浮腫、倦怠感がある。
手術の痕やその周辺部の痛みや不快感が長期間続き、悩んでいる。
37件の体験者の声があります。
- (患者本人、60代、男性、胃、2003年版)退院して普通の体調になるのか、術後9ヶ月の今もまだ傷口が痛み、どの位で元の身体になるのか不安だ。
- (患者本人、80代、女性、乳房、2003年版)今でも手術の傷が神経痛のようにちくちく痛む。
- (患者本人、70代、女性、胃、2003年版)5年近く経った今でも痛みや再発の不安に苦しむ。
- (患者本人、60代、男性、膀胱、2003年版)手術後の手術部分の痛みがいつになったら軽くなるのか。もう1年になってきているが2年はかかるのか悩む。
- (患者本人、60代、男性、胃、2003年版)外科手術で悪いところと取り除いたら、もう転移はしないかどうか心配だった。手術をしてから満5年経過したが、切った痕の痛みによる後遺症が絶えず気になる。
- (患者本人、60代、男性、胃、2003年版)現在でも手術の後遺症による痛みやつっぱり感がいつも気になる。
- (患者本人、70代、男性、食道、2003年版)退院後、がんに対する治療は説明されていたが、手術跡の痛みが残っていたので苦痛であった。がん治療に対する苦痛はなかった。
- (患者本人、60代、女性、胆道・胆のう、2003年版)術後10ヶ月経っても未だ痛みがあり、再発か転移の恐れを抱いている。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)リンパ腺を切除し、患部の痛みがなかなか取れず悩んでいる。
- (患者本人、70代、女性、肝臓、2003年版)手術後の痛みが長く恐怖に怯え、内科にまわされても、どうにもならなくて生きる意味なく、毎日不安な日を過ごした。
- (患者本人、50代、女性、乳房、2003年版)手術後も痛みが続き再発しているのではないかと心配した。
- (患者本人、60代、男性、食道、2003年版)四季それぞれの季節に現れる症状。気圧の変化による傷の痛みや寒さによる傷口の痛がゆさ等に対する不安
- (患者本人、60代、男性、大腸、2003年版)術後半年は痛みに苦しみ、妻の励ましで生きる望みを強く持つようがんばったが、後遺症も残り、身体障害者になってしまい、社会生活から逃げたような日常の中で家族にだけは隠すことなく努力をした。
- (患者本人、40代、女性、不明、2003年版)手術して1ヶ月になるが、腹の傷が痛む。
- (患者本人、70代、男性、肺、2003年版)手術後2年になるが、痛みは少しだがこの状態が死ぬまで続くのか心配だ。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)術後、胸、肩、腕の痛みで普通の生活に戻るまで5年はかかった。1人で検査のための病院にはいけたが、自分の身体をかばうためうつむきがちになり姿勢が悪くなった。温泉等に行けず生活に張りがなくなった。
- (患者本人、80代、女性、肺、2003年版)2、3年前より患部に痛みがあり、次第にその痛みが強くなってきている、特に雨天の時はひどい。
- (患者本人、50代、女性、乳房、2003年版)1年半くらい痛みが続き、一生懸命リハビリして段々痛みがとれ、楽になると日常生活が楽しくなった
- (患者本人、70代、女性、肺、2003年版)退院して2ヶ月余りになるが、まだ少し痛みがある。
- (患者本人、60代、男性、胃、2003年版)点滴時、身体中が痛くて4、5日苦しかった。術後1ヶ月半位たつと痛みもなく順調になったが、食事が多すぎると苦しくなり少し痛む。
- (患者本人、60代、男性、大腸、2003年版)痛みに悩み、痛みが取れるのか心配だ。
- (患者本人、70代、女性、乳房、2003年版)半月くらい痛みがあり苦しんだ。
- (患者本人、50代、女性、乳房、2003年版)抗がん剤投与中、副作用で倒れ意識を失った際に頭を打ち、その後また手足のしびれが出て、胸の傷とともに大変な苦痛の中、仕事に出ることが辛かった。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)身体が痛くて一日中苦しい日々が5年くらい続き、その後少し和らいだ。
- (患者本人、60代、男性、肺、2003年版)胸の痛みが取れるかどうか心配だ。
- (患者本人、50代、女性、胃、2003年版)肺の術後約1年となるが、まだ痛みもある。
- (患者本人、50代、女性、乳房、2003年版)手術の痕が時々傷んだりすると、どうにかなっているのではないかと不安だ。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)術後胸の痛みが残り、6年過ぎた今でも、胸や腕の痛みがある。術前に手術の後遺症についての説明をはっきり聞くべきだった。
- (患者本人、50代、女性、大腸、2003年版)術後半年は創部の痛みがウエイトを占めていた。
- (患者本人、50代、女性、子宮、2003年版)痛みがひどく、1ヶ月あまり24時間傷が痛んだ。1ヶ月検診のとき医師に痛みを訴えても、「私が切ったわけではない」といい、その他の症状も聞いてくれなく、日々悶々と悩んでいた。
- (患者本人、60代、男性、大腸、2003年版)初回から9年、再発から5年経ったが、肺の手術痕は今でも時々痛む(気圧の影響などと軽く片付けて欲しくない)。首のこりや肩こりがある。
- (患者本人、不明、不明、乳房、2003年版)手術後次第に軽くはなったが、痛みがとれず不安だった。医師に話すと仕方がない、痛み止めの薬をあげましょうかと言われるだけだった。
- (患者本人、50代、女性、肺、2003年版)肋骨を3本切除し、痛みが少しも良くならないことに悩む。
- (患者本人、40代、女性、乳房、2003年版)術後の痛みが今でもあり悩む。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)手術直後浸出液がたまり、抜いても抜いてもたまったので悪性ではないかと思った。その部分の痛みが1ヶ月くらいあり、2-3ヶ月は、その部分に触れることができず、風呂に入っても洗えなかった。
- (患者本人、40代、女性、乳房、2003年版)放射線照射の後遺症の皮膚の赤みは、術後数ヶ月で治るとの説明だったが1年過ぎても残り、乳房手術側全体の感覚、痛みも治らずどうなるのかと思った。
- (患者本人、50代、女性、乳房、2003年版)手術での全摘を選び退院後自宅での生活に戻ったが身体が思うようならず、夜は痛みで眠れない。
手術後の傷の痛み、突っ張り感や傷痕内部のうずくような痛みに悩まされている。
15件の体験者の声があります。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)手術した後の傷の痛み。ひきつること。
- (患者本人、70代、男性、大腸、2003年版)傷の痛みと再発の恐れ。
- (患者本人、70代、女性、乳房、2003年版)手術後4年程経つが、患部のなくなった周囲、胸の骨、脇等、時折激痛に声をあげるときがある。床についても毎晩しばらくさする。直接がんとは関係ないかもしれないが、食事も唾液が出なくなり、味がなく、舌も痛く、口中がガバガバな感じがして、食べる楽しみがなくなった。これが3年程続いている。専門医の世話になり、少しは良くなりつつある。
- (患者本人、50代、男性、胆道・胆のう、2003年版)傷口が痛いこともあり、つっぱる感じがあって、不快なときもある。
- (患者本人、60代、男性、胆道・胆のう、2003年版)痛み、つる感じがいつになったら取れるのかという思いと、再発への不安。
- (患者本人、30代、女性、乳房、2003年版)術後、腕、手のすじのつっぱりがあり、今後回復するのかどうか不安だ。
- (患者本人、50代、女性、大腸、2003年版)退院後、自宅での生活を始めると手術の傷跡が内部にうずくような痛みがあった
- (患者本人、70代、女性、肺、2003年版)右の肩と胸が痛み、毎日苦しい。しかし、今生きていられるのは先生たちのおかげ。毎日一生懸命で、私は悩んでいるのかわからない。
- (患者本人、40代、女性、乳房、2003年版)腕を動かした時、たまに激痛が起こること。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)ホルモン剤服用で太ったためか胸が重く張って、時折傷口に鈍痛が走る
- (患者本人、50代、女性、胃、2003年版)傷が今も痛む。
- (患者本人、60代、女性、乳房、2003年版)術後1年半位になるが、傷の部分が痛む。
- (患者本人、70代、男性、肺、2003年版)傷口が時々傷み、力仕事や飲酒を控えている。
- (患者本人、不明、不明、乳房、2003年版)傷の痛みがある。
- (患者本人、40代、女性、乳房、2003年版)寒くなると傷が痛む。
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【手術の傷跡や周辺の痛みやしびれ、つっぱり感など】
手術後の傷の痛みは、多くの場合、次第にやわらいできますが、慢性的な痛みが、数ヶ月以上、あるいは何年も続くこともあります。
手術後少なくとも3ヶ月持続する痛みを『遷延性術後痛(CPSP)』といいます。がんの手術では、以前から、肺がんや食道がんの手術後などでは『開胸術後疼痛症候群』、乳がんでは『乳房切除後疼痛症候群』と呼ばれている痛みがありました。これらも、『遷延性術後痛(CPSP)』のなかの一つです。症状としては、傷のまわりの痛みやうずき、チリチリ、ピリピリしたような感覚、ひきつれたような感覚などが続き、痛みが長く続くことで、生活への支障が出る場合もあります。
痛みの原因は、手術による周囲の組織のダメージ、手術による神経の一部の傷つき、傷のひきつれ、癒着による痛みなどさまざまなことが考えられます。また、『遷延性術後痛(CPSP)』では、その他に心理的な要因、社会環境的な要因なども影響するといわれます。
痛みは個人差があり、客観的には判断しにくいものなので、医師などの医療者、家族などに伝わりにくいことがあります。伝える時は、相手にわかりやすく伝える工夫をしてみましょう。詳細は、後述しますが、痛みを数字で表し、一日のなかでの痛みの変動を数字の変動でわかりやすく示したり、痛みのために生じている生活の中でのつらさや支障などを具体的に伝えましょう。
痛み止めを使えば痛みは一時的にやわらぐかもしれませんが、痛み止めは、使いすぎると胃に負担がかかることがあります(これは、市販の痛み止めを使用したときにも同様です)。お薬だけではなく、長く続く(慢性的な)痛みに対処するためには、毎日の生活の中で、痛みを和らげるための自分なりの工夫も取り入れてみましょう。
痛みが続き、つらいようであれば、痛みの専門であるペインクリニック(痛みの治療を専門にする診療科やクリニック)やペインクリニック専門医などで診てもらってもよいと思います。日本ペインクリニック学会のホームページには、専門医が施設などを都道府県別に探すことができます。
傷跡が、ケロイドや肥厚性瘢痕になっている場合は、形成外科でみてもらってもよいと思います。
【痛みの状況の整理と人への伝え方】
前述したように、痛みは主観的なものなので、痛みの程度や痛みに伴うつらさは、なかなか人に伝わりにくいともいえます。そのため、医師など医療者が判断している痛みによるつらさと、患者さんが感じる痛みによるつらさに隔たりが出ることもあります。そこで、医師や他周囲の人々などにも理解してもらえるように、ご自分の痛みについてよく知り、人にわかりやすく伝えるという、伝える時の工夫も必要です。
同じ痛みでも人によってその苦痛は異なります。痛みに伴うさまざまな生活の支障(動くと痛いので、あまり動きたくない、体をひねると痛いので動作が制限される、手を使うと痛みがひびく、痛みのせいで集中して仕事ができない、立ったり座ったりがつらい、家事ができない、眠れない、夜痛くて眼が覚める、寝返りを打てないなど)なども、整理して医師に伝えましょう。
1. 痛みを整理してみましょう
(1)どのような時に痛みが出てくるのか、あるいは強くなるのか
例)歩いているとき、動き始めるとき、からだの向きで、からだをひねったとき、重いものを持ったとき、雨の日や湿気の多い時期、下着などで傷跡周辺がこすれたときなど
(2)どのへんが痛むのか
例)創(きず)跡全体、創(きず)の左側の奥の方、など
(3)どのくらい痛むのか
例)数字で表してみる
0-10の数字で表す(0: 全く痛くない.........10: 耐えられないくらい痛い)
一日のうち、時刻による変化を数字で表してみる
(4)どのように痛いのか
例)きりきり痛い、ずきんずきんする、時々ぴりっと電気が走るよう、など
(動作に伴って痛むときは、体を右にひねったとき、かがんだとき なども伝える)
(5)痛み止めを使っていればその効果
例)
・痛み止めをのむと、1時間くらいでいったん楽になるけれど、6時間くらいでまた痛くなる
・痛み止めを飲んでも、痛くて夜に眠れないときがある
・痛みのために、気分がふさぎがちになったり、いらいらしたりすることがある
2.痛みがあることで、生活上困っていることを整理してみましょう
例)食事がとりにくい、洗濯物をほすのが大変、布団をあげられない、家事全般で不自由している、買い物に行けない、パソコンを長い間打てない、体をひねると痛い、重いものが持てない、書き物がしにくい、寝返りが打てない、着替えなどで腕を動かすと痛みがある、咳をすると響いたように痛いなど
長く続く痛みに対処するためには、毎日の生活の中で、痛みを和らげるための自分なりの工夫を取り入れることが有効的な場合もあります。
そのためには、
◎どのような時に痛みが楽になったり痛みを忘れたりするときがあるのか
◎どのような姿勢のとき、痛みが楽なのか
など『痛みの日記』(メモ)をつけてみるのもよいでしょう。
痛みがやわらぐ状況は、時間帯、そのときしている活動、取っている姿勢など、人によっていろいろなきっかけがあります。『痛みの日記』をつけることで、“痛いところを温めたら楽になった”、“○○さんとしゃべっている時は痛みを忘れていた”、“よく眠った次の日には痛みが減った”、“お風呂で湯船に浸かり、十分温まったあとは楽だった”など、自分自身の痛みがやわらぐきっかけに気づくことができます。その中から、自分にとってよかった対処法を、日常生活に取り入れてみましょう。
ご自分なりの工夫で痛みをやわらげられることもあります。
自分の痛みと生活の過ごし方について、いろいろ検討し、よいと思われることは、生活の中に取り入れてみましょう。
【痛みの専門医に診てもらう】
痛みが長く続くようであれば、担当医に相談して、専門の医師を紹介してもらうことを考えてもよいでしょう。また、自分で探して診てもらってもよいでしょう。総合病院などでは、『疼痛外来』、『ペイン外来』、『ペインクリニック』などの名称で、痛み治療の専門外来などを設けている病院もあります。またペインクリニックも増えてきています。痛みの種類や原因によっては、麻酔科や形成外科に相談することが、痛みの解消に役立つこともあります。それぞれの窓口で対応できる痛みとそうでない痛みがあるので、受診する前に自分の痛みの状況を伝えて、対応してもらえるかどうか確認するようにしましょう。
<参考資料>
(1)西日本がん研究機構.患者さんのためのガイドブック よくわかる肺がんQ&A 第4版 .金原出版. 2014
PDF版:http://www.wjog.jp/doc/guidebook/guidebook_v4.pdf
(2)日本乳癌学会編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版. 金原出版.2019
HP版:http://jbcs.gr.jp/guidline/p2019/
(3)日本形成外科学会:一般の方へ
https://jsprs.or.jp/general/
(4)日本ペインクリニック学会:一般の皆様へ
https://www.jspc.gr.jp/ippan/ippan.html
(最終更新日:2022年4月12日)
 (1)日本ペインクリニック学会 https://www.jspc.gr.jp/ 『一般の皆様』の項目に、ペインクリニックとはどのようなところか、専門医のリストなどがあります。 (2)日本乳癌学会:乳腺専門医と『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』 https://www.jbcs.gr.jp/ 日本乳癌学会のホームページです。トップページで、[市民の皆様に知ってほしい情報]ボタンをクリックすると、患者さんやご家族、一般の方々向けのさまざまな情報が掲載されています。『専門医一覧』は、地域別・都道府県別に確認できます。『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』では、『質問集』として、患者さんからの質問に対する回答(Q&A)という形式で、乳がんの原因と予防、検診と診断、治療、再発・転移について、療養上の諸問題についてなど幅広い情報が掲載されています。 |
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