「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

悩み

健康保険組合が保険者だけれども、高額療養費の手続きはどのようにしたらよいか。
健康保険組合が保険者だけれども、高額療養費の手続きはどのようにしたらよいか。(患者本人、不明、2003年版)

助言

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【高額療養費制度とは】

【ポイント】
医療費による経済的な負担を軽くするための高額療養費制度という制度があります。
『高額療養費制度』は、医療機関(差額ベッド代や食事代などは別途必要になります)や医療機関で処方された処方箋で薬局の窓口で支払った医療費が、月の初めから終わりまでの1か月で一定の額(自己負担限度額)を超えた場合に、保険者に申請することで(多くの健康保険組合は、自動的に高額療養費が支給されます)、その超えた金額を支給する制度になります。
医療費は年齢や収入に応じて1カ月に支払う自己負担限度額が定められています。

医療費が高額になりそうな時には、あらかじめ所得区分の『認定証』の交付を受けて医療機関の窓口で提示することで、入院、外来診療ともに窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。
なお、70歳以上で所得が「一般」、もしくは「現役並み所得III」の方が治療する場合は、窓口での支払いが自動的に自己負担限度額までになるため手続きは不要です。
注意)国民健康保険・後期高齢者医療保険制度の被保険者の方で、保険料の滞納がある方は認定証の発行がされない場合があります。

『認定証』の申請をせずにいったん窓口で支払いをした場合も、後日、保険者に申請をして自己負担限度額を超えた金額の払い戻しを受けることができます。ただし、高額療養費を申請して支給されるまでには、3ヶ月程度かかります。1ヶ月に1つの医療機関での支払いが高額になる可能性がある場合は、『認定証』をあらかじめ申請しておきましょう。

なお、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関や薬局では、マイナンバーカードだけではなく、通常の健康保険証の記号番号等によりオンライン( オンライン資格確認等システム)で資格確認をすることが可能になります。これにより、患者さんは認定証を持参しなくても限度額の区分が医療機関に伝わります。ただし患者さん側に限度額の区分を証明する書類はありませんので、オンライン資格認証をした場合にはご自身の限度額の区分を確認しておいたほうがよいでしょう。
おかかりの医療機関等が「オンライン資格確認等システム」を導入しているかどうかは、医療機関等の支払い窓口、あるいは厚生労働省のマイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関リスト(都道府県別)等でご確認ください。

【高額療養費制度の対象になる費用・対象にならない費用】
■高額療養費制度で対象となる費用
高額療養費制度で対象となるのは、公的医療保険が適用される医療費です。病院や診療所の窓口で支払う保険診療の自己負担分のほか、処方せんをもらって調剤薬局で購入する薬の代金も含まれます。

■高額療養費制度の対象にならない費用
公的医療保険が適用されない費用(差額ベッド代、入院中の食事代、診断書等の書類作成費用、先進医療にかかる費用など)は、この制度の対象とはなりません。
注)先進医療にかかる費用以外の通常の治療と共通する部分(診察・検索・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。

医療制度の改正は随時行われています。変更になることがあるので、ご注意ください。特に、4月と8月は、制度改正が行われることがあるので注意しましょう。
2022年10月の改正では、75歳以上の方等で一定以上の所得のある方は、医療費の窓口負担割合が2割になりました(医療費の窓口負担割合が3割の『現役並所得者』を除く)。
この制度改正で、窓口負担割合が2割負担となる方には、負担を抑える配慮措置があります。2022年10月1日から3年間(2025年9月30日まで)の間は、経過措置として1ヶ月の外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う負担増加額を3000円までに抑えられます。
なお、払い戻しの対象になる方は、高額療養費の払い戻し用として事前に登録されている口座に後日払い戻しになります。該当の方で、高額療養費の払い戻し用の口座登録をされていない方には、都道府県広域連合または市区町村から申請書が郵送されます。

【高額療養費制度では】
◎1カ月(1日~末日)に支払った医療費が対象
◎自己負担の限度額は年齢や所得によって異なる
◎保険適用外の医療費は高額療養費制度の対象ではない
◎人ごと、医療機関ごとに計算する
◎同じ医療機関であっても、(1)医科入院、(2)医科外来、(3)歯科入院、(4)歯科外来は分けて計算する
(院外処方代は処方せんを発行した医療機関の医療費に含まれる)
◎さらに医療費が軽減できる仕組みとして、多数該当や世帯合算がある
◎70歳未満の方、70歳以上の一部の方(住民税非課税世帯など)は、事前に所得区分の『認定証』を申請し入手すれば、窓口負担は自己負担限度額までになる
◎高額療養費を申請して支給されるまでには、少なくとも3ヶ月程度かかる

※条件によっては、複数の医療機関や訪問看護等の費用、世帯内であれば複数の方の医療費を合算することができます。
※医療保険と介護保険の自己負担額を合わせた額を軽減する制度(高額医療・高額介護合算制度)が設けられました。
詳しくは、ご自身の保険証に記載のある「保険者」までお問い合わせください。

【高額療養費の払い戻し(いったん、会計の窓口で支払い、後日保険者に申請して払い戻しを受ける場合)】
高額療養費の払い戻しは、保険証に記載のある保険者に、必要書類を添えて申請します。必要書類は保険者によって異なりますので、お問い合わせください。

■注意点
◎保険者によっては、高額療養費制度に該当することの通知がない場合もある。
◎医療機関にかかった翌月以降に申請する
◎支払い直後に申請をしていなくても、2年前までさかのぼって申請することができる。
◎払い戻しには、治療を受けた月から、通常3カ月程度の期間がかかる。
◎加入している保険の種類や地域によっては、払い戻しまでの当座の支払いを支援する貸付制度や委任払い制度を利用することができる。
詳しくは、保険者までお問い合わせください。

【世帯合算】
世帯(公的医療保険の被保険者とその被扶養者のこと、つまり、同一の医療保険に加入する家族を単位とする)で複数の方が同月に医療機関で受診した場合や、一人で複数の医療機関で受診する場合などは自己負担額を世帯で合算することができます。その合計額が自己負担限度額を超えた場合、後日、加入する保険者に申請することで高額療養費が支給されます。
自己負担額は、医療機関ごとに計算します。また、同じ医療機関であっても、(1)医科入院、(2)医科外来、(3)歯科入院、(4)歯科外来は分けて計算します。

<注意点:年齢により合算の仕方が異なる>
◎70歳未満
同じ月に世帯内でかかった自己負担額のうち21,000円以上でないと合算できない。
◎70歳以上
同じ月に世帯内でかかった自己負担すべてを合算できる

◎70-74歳の高齢受給者:
同じ世帯の70-74歳の人だけではなく、70歳未満の者とも合算できる
◎75歳以上
後期高齢者医療制度の対象となり、世帯内の若年者とは合算できない

【高額医療・高額介護合算制度】世帯内の同一の医療保険の加入者の方について、1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担を合計して、基準額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
同一世帯において、医療と介護でかかった費用の負担が緩和されます。

<注意点>
◎保険適用外の医療費や介護サービスなどは、高額医療・高額介護合算の対象にはならない
◎基準額は、世帯員の年齢構成や所得区分によって異なる
◎高額医療・高額介護合算療養費制度の算定期間は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間
◎申請先は、毎年7月31日(基準日)時点で加入している公的医療保険
◎同一の公的医療保険制度に属する世帯同士でないと対象にならない
◎期間内に異なる健康保険・市町村の介護保険で自己負担額がある場合は、それぞれの保険者から交付される自己負担額証明書が必要となる


 


 

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