「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

悩み

父親がかかっている。がんと診断を受けているが、あまり状態がよくない。医師からも積極的治療を行うのはどうか?という話があった。緩和ケアのことを知りたくてインターネットで調べたが、緩和ケア病棟とはどういうところかなど知りたい。
父親ががんと診断を受けているが、あまり状態がよくない。医師からも積極的治療を行うのはどうか?という話があった。緩和ケアのことを知りたくてインターネットで調べたが、緩和ケア病棟とはどういうところかなど知りたい。(家族、不明、2003年版)

助言

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【「緩和ケア」を専門的に提供する病棟です】

体やこころのつらさなどをやわらげることを目指して行われる総合的なケアのことを緩和ケアと言います。緩和ケア病棟は、このような緩和ケアを専門的に行う病棟のことです。
緩和ケア病棟は、患者さんとご家族が安心して療養生活を送ることができるように、さまざまな配慮がなされています。たとえば、患者さん一人あたりの病棟や病室の面積は、一般の病棟に比べて広くなっています。看護師の配置についても、一般の病棟に比べて手厚いものになるように基準が作られています。

緩和ケア病棟の入院料は、1日単位で診療報酬点数が決まっている定額制です。
緩和ケア病棟に入院する際、1日分の入院費用の目安は、(A)1日当りの緩和ケア病棟入院料の自己負担分+(B)食事の自己負担金+ (C)差額ベッド料など(保険外費用) となります。

平成30年度の診療報酬改定で、緩和ケア病棟の入院料が変更になり、複雑になりました。これまでも、入院日数によって3区分に分かれていましたが、この区分に加え、施設の状況(施設基準)により、入院料は2種類(緩和ケア病棟入院料1か緩和ケア病棟入院料2のどちらか)に分かれるようになりました。
入院料の区分は複雑ですが、(A)<緩和ケア病棟の入院料>の部分に関しては、高額療養費制度が適用されるので、1ヶ月の自己負担額を一定の金額におさえることができます。

※高額療養費制度と所得区分の『認定証』について
医療費が高額になりそうな時には、あらかじめ所得区分の『認定証』の交付を受けて医療機関の窓口で提示することで、入院、外来診療ともに窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。
70歳未満の方、70歳以上で所得区分が現役並みIか現役並みIIの方、住民税非課税世帯の方で、高額の支払いが見込まれる治療(緩和ケア病棟での治療やケアも「治療」に含まれます)を予定する場合には、事前に所得区分の『認定証』を自分が加入している保険者(保険証に記載あり)に申請し、入手しておきましょう。申請の際には保険証のほか、印鑑等が必要になることもあるので、あらかじめ自分が加入している保険者に電話等で確認するようにしてください。
『認定証』の申請をせずにいったん窓口で支払いをした場合も、後日保険者に申請をして払い戻しを受けることができます。
なお、70歳以上で所得が「一般」、もしくは「現役並み所得III」の方が治療する場合は、窓口での支払いが自動的に自己負担限度額までになるため手続きは不要です。
申請の際には保険証のほか、印鑑等が必要になることもあるので、あらかじめ自分が加入している保険者に電話等で確認するようにしてください。
『認定証』の申請をせずにいったん窓口で支払いをした場合も、後日保険者に申請をして払い戻しを受けることができます。
注意)国民健康保険・後期高齢者医療保険制度の被保険者の方で、保険料の滞納がある方は認定証の発行がされない場合があります。

このように、緩和ケア病棟の入院料は、高額療養費制度で自己負担限度額がおさえられますが、(B)の食事代の自己負担分、(C)差額ベッド料(室料)などの保険適用外の費用等は高額療養費制度の対象にはなりません。入院を予定する病院であらかじめ概算など確認しておくようにしましょう。
なお、緩和ケア病棟の病床の半数以上は、差額ベッド料がかからない病床にする、という決まりがあります。費用負担が心配な場合には、差額ベッド料がかからない病床を利用できないかどうか、合わせて相談してみるとよいでしょう。

また、どのような患者さんに緩和ケア病棟に入院していただくか、という方針は、医療機関によっても違いがあるようです。ただ、がんの進行に伴う体のつらさ(痛みや呼吸困難など)や精神的な症状(抑うつ状態やせん妄など)などがあり、外来や在宅でつらさをやわらげることが難しい患者さんが利用されることが多くなっています。症状が落ち着いたら、退院して自宅に戻り、緩和ケア外来や在宅緩和ケアを受けながら過ごされることもあります。最期まで緩和ケア病棟(ホスピス)で緩和ケアを受けながら過ごす場合もあります。あるいは、レスパイト入院といって、在宅で過ごされている患者さんのご家族の負担を軽減するために一時的に入院する場合もあります。
それぞれの施設で受け入れ基準があります。

一方では、緩和ケアは、在宅ケア(外来通院、訪問診療など)や一般病棟などでも受けられるようになっています。今後、担当医と緩和ケアについて相談を進めていくのであれば、緩和ケア病棟だけでなく、自宅や一般病棟なども含めて、どのような形で緩和ケアを受けるのが患者さんにとって一番よいか、ということを話しあってみるとよいでしょう。

緩和ケアについては既にインターネットで調べたとのことですが、静岡がんセンターホームページの『冊子・電子書籍・動画』には、電子書籍(PDF版)の『緩和ケアについて知りたい』を公開しています。また、[特定非営利活動法人 日本ホスピス緩和ケア協会]のサイトには、全国の緩和ケア病棟のある病院を都道府県別に表にして公開しています。日本地図の該当する都道府県名をクリックすると、当該施設の緩和ケア病棟のベッド数とともに、ホームページへのリンクがあり、より詳しい情報はHPで確認することができます。ご自身のお住いの近くに緩和ケア病棟があるか、設備や費用はどのようなところかなどをまず確認にしてみましょう。


 
参考になるホームページ
(1)日本ホスピス緩和ケア協会
https://www.hpcj.org/index.html
サイドメニューに、『ホスピス緩和ケアをご利用の方に向けた情報』があり、『ホスピス緩和ケアQ&A』(ホスピス緩和ケアに関することをQ&Aで情報提供しています)、『ホスピスってなあに?』(冊子PDF版)などホスピス緩和ケアに関する情報や、ホスピス緩和ケアの解説やホスピス緩和ケアを受けられる医療機関一覧(ホスピス緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、在宅ホスピス緩和ケア)の情報があります。
(2)国立がん研究センター『がん情報サービス』:相談先・病院を探す
https://hospdb.ganjoho.jp/
がん情報サービスの[相談先・病院を探す]では、全国のがん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院、希少がん情報公開専門病院等の一覧が掲載されていて、さまざまな条件で検索できます。病名やがんの種類、地域や病院の種類、診断や治療の実施状況、小児がん治療後のフォローアップ状況、小児がんの治療方法やセカンドオピニオンの対応状況などから探すことができます。また、成人や小児の相談先・病院一覧を見るでは、相談支援センターの名称や電話番号、病院情報などを閲覧できます。
(3)緩和ケア.net
https://www.kanwacare.net/
緩和ケアに関する総論的な情報、痛みや痛み以外の症状、緩和ケアの医療費に関する情報、こころの変化やつらさへの対処法などの情報が掲載されています。

 

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