「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

悩み

子ども達がかわいそうと思いながらも、不安から子ども達に八つ当たりしたりしてしまった。
2 件の体験者の声があります。

助言

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【あなた自身のつらさの理解者を見つける】

あなたはなぜ、『子ども達がかわいそう』とお感じになるのでしょうか。いろいろな理由が考えられます。
がんという病気になって、子ども達に自分の体のことについて心配をさせている、という思いでしょうか。
治療費が家計を圧迫し、自分の子ども達に周りの子と同じような学びや遊びの環境を整えられないという焦りでしょうか。
体やこころの調子が万全でないため、『親として当然果たすべきだ』とあなた自身が考えている役割を果たせないことでしょうか。
それほど遠くない未来に、何より大切な子ども達に、別れを告げなくてはならないかもしれない、という不安からでしょうか。
理由はどれか一つではなく、複数の理由が混じりあったり、つらさを強めあったりしているかもしれません。
そして何より、たとえ理由はあるにしても、心ならずも子ども達につらく当たってしまう、そのこと自体が、あなた自身にとって大変なショックであり、本当におつらいことでしょう。
『かわいそうな子ども達を支えたい』というあなたの願いや焦りは、とても強いものだと思います。
しかし、まず必要なことは、『子ども達を支えたい』と思う、そのあなた自身のつらさを理解し、支えてくれる理解者を見つけることだと思います。


 
【不安やつらさを抱えこまない】

子どもは、親が病気にかかった、という事実よりもまず、『お母さん/お父さんが、何かを不安に思っている』という事実を敏感に察し、不安を感じるものです。
もちろん、子どもに話をする前に、あなたがすべての不安を乗り越えておく必要はありません。しかし、不安が少しでもやわらげば、その分だけ、自信と余裕をもって子どもと向き合うことができるのではないでしょうか。
不安が強く、とてもつらいとき、自分の気持ちを受けとめてくれる人、家族や何でも話せる友人に、不安に思っていることや揺れ動く思いを聴いてもらうことは、気持ちを楽にします。
一人でつらさを抱え込まないで、誰か周りの人に話してみましょう。また、口にしなくても、ふっと自分を心配し気遣う周囲の人々の思いが感じられたとき、一人ではないと感じてあたたかい気持ちになれるものです。
もしも身近に自分の気持ちを受け止めてもらえそうな理解者がいないと感じるときには、病院の『医療相談室』や地域のがん診療連携拠点病院にある『相談支援センター』にいる相談員に相談してみるとよいでしょう。
看護師やソーシャルワーカーが務める相談員には、守秘義務があります。あなたが話した内容が外にもれてしまうようなことは決してありません。また、相談のプロですので、話している途中で、あなたがたとえ動揺したり、緊張したりしても、きちんとあなたの気持ちにきっとよりそい続けてくれるはずです。
つらい気持ちを誰かに打ち明けることは、あなたが自分の考えや思いを整理し、自分自身の中にある強さに自分で気づくことにも役立ちます。
さらに、相談員は地域の様々なサービスに関する情報も持っています。もし、どうしても子ども達との間に一定の距離を置いた方がお互いのためになると考えられる時には、利用できる地域のサービスについて尋ねてみるのもよいでしょう。


 
【あなたと子どもの両方が望む親子の距離感】

親子の『適切な距離感』は、それぞれの性格や、それまでに積み上げてきた家族の歴史によって違ってきます。
また、がんという病気になる前後の変化についても、距離感が開く親子、距離感が縮む親子、あるいはまったく変わらない親子など、いろいろな場合があると思います。
あるべき『家族の理想像』のようなものにとらわれる必要はないのです。大切なことは、病気になってからの親子の距離感が、自分の家族にとってふさわしい、納得のいくものだと感じられるものなのかどうか、ということです。
逆にもし、その距離感が、あなた自身にとって、なんらかのつらさをもたらすようであれば、調整していく必要があるでしょう。その際には、『医療相談室』や『相談支援センター』の相談員に相談してみるのも一つの方法です。
ここで一つ、親子の距離感を考える時に意識してほしいことがあります。
それは、親子の距離感は、親であるあなたが一方的に決めるのではなく、関係のもう一つの端にいる、子どもの希望にも配慮が必要だということです。
子どもの方からも距離感を調節できるようにするためには、あなたの病気について、子どもが理解していなければなりません。
もちろん、言葉を選んだり、何度かにわけて段階的に伝えたりする配慮は不可欠です。しかし、病気について嘘をついたり、聞いてはいけないような雰囲気を作ったりすることは、病気という事実以上に子どもを傷つけ、不安にさせてしまうことがあります。
がんについて子どもと一緒に考えるための絵本もいくつか出版されています。言葉の選び方や、話す順番について迷った時には、患者図書室、図書館、書店などで調べてみるのもよいでしょう。
病気であることを分かち合った上で、あなたと子どもが、お互いに今、何ができるか探しあううちに、お互いに納得することができる親子の距離感が見えてくるのではないでしょうか。


 
【あなただからこそ、伝えられることもある】

がんという病気になることで、これまで自分が果たそうと考えていた『親としての役割』を果たせなくなったことに、あなたはとまどいや怒り、焦りのようなものを感じているかもしれません。
しかし、病気をきっかけとして、果たす形ややり方は変わるかもしれませんが、あなたが親として果たすことができる役割がある、という事実は、変わるわけではありません。
がんという病気の有無にかかわらず、あなたは親としての責任を果たすことができます。病気になったことで、引け目を感じたり、自分を責めたりする必要は一切ないのです。
がんになることで、親として果たそうとしていたことのいくつかは、できなくなったり、あきらめたりしなければならないこともあると思います。
けれども、がんになることで、あなたには、あなたにしか果たせない、新しい役割の果たし方も見えてくるのではないでしょうか。
病気に毅然と立ち向かう姿はもちろん、人間らしく悩んだり落ちこんだりする姿や、自分の病気をさしおいて見せてくれた気遣い、そういったものの一つひとつが、あなたのお子さんにとって、きっと、かけがえのない学びとなり、人生の糧となるはずです。
“こうするべきだ”、“こうあるべきだ”、という自分自身の思いこみにもし気づいたときには、そういった思いこみと少しだけでも距離をとることができないか、考えてみてください。


 

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