自分の助言集をつくる
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退職という選択については、おそらくご主人もよく考えて選ばれたのだと思います。あなたを支えたい、というご主人の思いがよい形で実を結び、ご夫婦が安心して暮らしていくためにも、経済面の気がかりは早めに解消しておきましょう。
いろいろな状況が考えられ、取るべき対処法もそれぞれに異なると思いますが、前提として、今後の治療やからだの状態の見通しについて、担当医から話を聞いておくことが大切です。
治療がどのくらい続き、その間にどの程度の医療費の負担が見込まれるのか、また、看病のために人の手を借りなければならない状態がどのくらい続きそうなのか、担当医に確認して、ある程度の目安を教えてもらいましょう。
今後必要になるお金や人手について、おおよその見当がつけば、具体的に準備を整えていくこともできるでしょう。
お悩みについてですが、かかっている医療費の額、からだの状況、家庭の状況、ご夫婦の希望、といった条件が合えば、次のような制度が活用できるかもしれません(かっこ内は問い合わせ窓口)。なお、これらの制度は変更になる場合があるので、ご注意ください。
○ 高額療養費制度(保険証、資格確認証、資格情報のお知らせ記載の保険者)
保険診療の対象となる医療費について、1か月に収入に応じて決められている自己負担限度額を超えた場合、その超えた金額が返還される制度です。ただしマイナ保険証を利用される場合等については、病院の窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えることができます。
〇国民健康保険の高額療養費貸付制度(市区町村の担当課、もしくは社会福祉協議会)
医療費が高額で一時払いも難しいとき、国民健康保険の保険者によっては高額療養費貸付制度を持っている場合があります。
この制度は後から払い戻される高額療養費分を先に戻してもらうものであり、借金とは異なります。貸付金と本人負担分を添えて、医療機関にお支払いください。
なお、加入している保険者によって貸付金額は、異なります(高額療養費の8~10割相当額)。また、国民健康保険の保険者によっては受領委任払いを採用している場合もあります。その場合にはまず自己負担分を医療機関にお支払いいただくと、残りの高額療養費の該当分を保険者が直接医療機関に収めることになります。
○ 傷病手当金(保険証、資格確認証、資格情報のお知らせ記載の保険者)
会社員や公務員等の場合、病気の治療や療養のために連続して3日以上仕事を休み、収入を得ることができなかった場合、4日目より健康保険から傷病手当金の給付を受けることが可能であり、通算で1年半まで受け取ることができます。(国民健康保険には傷病手当金の制度はありません)
なお、退職によって被保険者でなくなる場合も、継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に給付を受けているか、または受けられる状態にある場合には、引き続き傷病手当金の給付を受けることができます。
○ 介護保険制度(お住まいの市区町村の担当課)
65歳以上の介護が必要な方は、市区町村に申請して認定を受けることで、収入に応じて1割から3割の自己負担でさまざまな介護サービスを受けられます。40歳以上65歳未満の方も、特定の疾病にかかっている場合(がんもがんの治療が難しくなり、生活で何らかの介護が必要になった場合には特定疾病の一つに含まれるます)で要介護認定を受けると利用できます。
○ 身体障害者手帳(市区町村の担当課)
病気や病気の治療で回復の見込みがない障害が残った場合、身体障害者として認定を受け取得できます。医療費の助成(障害等級等条件があります)、障害の種類に応じた補装具等の交付、税金の控除、交通機関・公共施設・携帯電話の料金の割引など、さまざまな支援が受けられます。
○ 障害年金(国民年金:市町村役場、厚生年金:年金事務所等)
病気そのものの影響や、病気の治療による障害や全身の衰弱が原因で働くことや日常生活に制限を受けたり、生活上の介助が必要になったりしたときに、生活の保障として利用できる制度です。一部の例外を除き、初診から1年半経過後に申請することが可能となり、初診時に加入していた年金の種類や障害の状況等によって受け取れる年金額が異なります。
○ 老齢年金の繰り上げ支給(国民年金:市町村役場、厚生年金:年金事務所等)
60歳以上であれば、通常65歳から支給される老齢基礎・厚生年金を申請によって繰り上げて受給することができます。ただし繰り上げをした時期に応じて年金額は減額されます。
○ 医療費控除(税務署)
生計を一にする親族の医療費の合計が1年間に合計10万円(所得金額が200万円未満の人は所得金額の5%)以上になった場合、確定申告をすることで所得税等が軽減されます。
○ 生活保護(市区町村の担当課)
資産や能力等使えるすべての手段を活用してもなお、生活に困窮する方に対し、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度になります。日常生活に必要な生活費や家賃等は現金給付で、また医療費や介護費等についてはサービスを現物給付するというシステムになっています。
これらの制度は、それぞれ利用するための条件があり、問合せや申請の窓口も異なります。インターネットで調べたり、各窓口に問い合わせたりするほか、当ホームページで公開している学びの広場シリーズ暮らし編『医療費控除のしくみ』、『医療費のしくみ』でも情報を得ることができます。
制度の詳しい内容を調べ、自分たちの場合にどう活用していけばよいか検討するためには、時間もエネルギーも必要になります。
調べるのが大変なときには、おかかりの病院のソーシャルワーカーに相談してみるのがよいでしょう。ソーシャルワーカーは、あなたの状況を詳しく伺った上で、制度の活用を含めた生活に関する様々な助言をくれると思います。
おかかりの病院にソーシャルワーカーがいない時には、お住まいの近くにあるがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターを調べて、電話等で相談してみてもよいでしょう。なお、ソーシャルワーカーへの相談は一般的には無料です。

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