自分の助言集をつくる
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がんと診断されると、それがたとえ早期であっても、これまであまり意識することのなかった死が脳裏をよぎったり、未来が突然ふさがれたような感覚に陥ったり、様々な思いが渦巻くことがあります。がんは自覚症状がないときに診断されることも多く、“今までと何も変わらない自分がここにいるのに”と、からだのなかで起こっていることが信じられないときもあります。また、再発や転移を経験すると、より強く将来(未来、今後)の不確定さを感じることがあるかもしれません。
生きること、そして死について考えることは、自分自身にとって意味のある大切なことだと思います。日常生活の中では、あまり、生きること、死ぬことを考えるということはなかったのかもしれませんが、ただ0(ゼロ)ではなかったはずです。そして、そのとき、そのときで考えたことは、あなたのなかのあなたらしさや生き方に影響があったと思います。
これからどういう生き方をするのか、それはその人自身にしか見つけられない問いかけかもしれません。そして、明確な回答を導き出そうとしても、難しいかもしれません。
ただ、今、自分の生と死を考えているあなたは、この瞬間を生きています。そして、日常生活の様々な出来事や人と人とのふれあいのなかで、そういった様々なことを、今まで以上にこころに響いて感じ、意識することがあるでしょう。
患者さんによっては、今まで無意識に過ごしていた時間や出来事の一つ一つが自分にとってかけがえのない大切なものになり、そのなかに希望を見いだしたという方もいらっしゃいましたし、自分なりに日常のなかで小さな目標を設定し(たとえば、ごはんは3食食べる、睡眠は必ず6時間とる、うれしいと感じることを振り返ってみるとかいろいろです)一つ一つ目標を達成していくという方もいらっしゃいました。まずは、やりかけの仕事や物事を最後までやりとげることを目標にする方もいらっしゃいましたし、家族や友人と会話し、共にいる時間を過ごしていくことを大切にするという方もいらっしゃいました。たぶん、それぞれがその人にとっての自分らしさで、回答は、これから過ごしていく時間のなかにあるのだと思います。
回答を見いだそうと焦ってしまったり、様々な気持ちが錯綜して、落ち込んでしまったり、自分を責めてしまうと、こころが重くなってしまいます。そして、この重みをずっと抱え込んだままにしておくと、冷静に自分のことや周囲のこと、人の思い、人との関係などを、判断したり調整したりできなくなり、悪い方へ悪い方へと考え込んでしまいがちです。こういうときは、いったん考えるのをやめて、少しその重さを軽くするために、こころの専門家(精神腫瘍科医、心療内科医、精神科医、臨床心理士、心理療法士、リエゾンナースなど)、病院の相談室、あるいはご家族にご自身のつらい気持ちを話してみてください。話してみるというのは、こころが少し楽になる方法の一つです。また、聴いてもらっているうちに、自分のこころのなかが整理できて、気づいていなかった新たな発見があるかもしれません。
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