自分の助言集をつくる
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がんと診断されることは、衝撃的な出来事です。
がん体験者の方への悩みの調査では何人もの方が「その瞬間頭が真っ白になってしまって、その後先生が何を話したのか全然覚えていない、どうやって自宅に帰ったのかもわからない。」、「呆然として何が何だかわからない。」などの言葉を書かれていました。その衝撃の大きさをあらわしていると思います。
がんがたとえ早期であっても、これまであまり意識することのなかった死が脳裏をよぎったり、未来が突然ふさがれたような感覚に陥ったり、様々な思いが渦巻くことがあります。がんは自覚症状がないときに診断されることも多く、“今までと何も変わらない自分がここにいるのに”と、からだのなかで起こっていることが信じられないときもあります。また、再発や転移を経験すると、より強く将来(未来、今後)の不確定さを感じることがあるかもしれません。
混乱のなかで、気持ちが落ち込んだ状態が続き、部屋に引きこもってしまったり、誰とも話したくなくなることもあります。ご家族や親しい人々の何とか支えたいという思いからかけた言葉も、時には白々しく感じ、誰にも自分のつらさはわからないのに、簡単なことを言うな!と怒りの気持ちがわくこともあります。同時に、どうなるのかわからない未来への漠然とした不安が次々と頭をめぐります。
こういうときは、こころがとても過敏になっていますから、周囲の何気ない言葉や振る舞い、視線などに対して、悪い方へと考えがちで、自分だけが孤立してしまったような感覚にもなります。こころの動揺や不安定さは、がんを告げられたとき、余命を告げられたとき、誰にでもあることです。ご家族や周囲の方々も、患者さんのこういったこころの状態を理解することが大切です。
こころが落ち着いてくるまでの期間は人によって異なりますが、2~3週間くらいすると、少しずつ具体的なことを考えたり、気持ちが落ち着いてきます。ただこれは、こころがすっかり落ち着きを取り戻したということではありません。何気ない周囲の人との会話や態度、病院に行ったときの診察や担当医との対話、検査などがきっかけでまた動揺したりこころが不安定になったりすることもあります。このようにまだ不安定なこころの状態ですが、少しずつ変化が出てきているということです。この時期になると、周囲の人々の自分へのいたわりや、自分を必要としてくれる気持ちが少しずつ素直にこころの中にも入ってきます。
がんになったことで、がんそのものや死への恐怖を感じたとき、どうしようもなくつらくなったときには、その不安やつらさを自分のこころの底に押し込んでしまわないようにしましょう。無理に押さえ込もうとしたり、がんばらなければ、こんなことを考えていてはいけないと自分を奮い立たせようとして無理をすると、こころがどこにも行き場がなくなってしまいます。こういうときは、こころが少しガス抜きができるように、自分の気持ちを受けとめてくれる人、家族や何でも話せる友人、病院の相談窓口の相談員などに、不安に思っていることや揺れ動く思いを話してみましょう。あなたは一人ではありません。
自分の病気について、治療について、何も分からなければ分からない分だけ、漠然とした不安は強くなります。
病気や治療の説明について、一度で理解できなかったら、理解できるまで医師に確認してみましょう。その場でわからないことや疑問点を確認してもかまいません。自宅に戻って、頭のなかで医師からの話を整理している中で、不安な点、疑問点などがでてくる場合もあります。その際は、次の診察までに、まず事前にわからない点などを整理したメモを作成します。メモがあると、要領よく、また聞き漏らしなく確認ができます。
治療によって起こる症状は、そのときそのときで、医師や看護師が患者さんのつらさを少しでもやわらげるようにしていきます。
分からないことは確認して、分からないままでいることで起こる不安を解消できるようにしましょう。
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