「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

悩み

治療開始後1か月以上過ぎてから皮膚の柔らかい部分が赤く腫れ、毎日かゆみとの戦いが続いている。
1 件の体験者の声があります。

助言

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【最初にお伝えしたいこと】

◎ここに表示されている悩み文は、2003年と2013年に全国のがん体験者の方々が参加された実態調査で、お一人お一人がご自分の言葉で書かれた悩み文を整理して構築した『がん体験者の悩みデータベース』にある悩み文の一部です。悩み文は、悩みごとに切り分けて一部加工もしています。
そのため、治療の変化(治療薬の種類、手術方法や放射線療法などの進歩など)、さまざまな制度の変化や社会情勢等で、類似した悩み文であっても、現在の病気や治療の状況、社会状況とは異なる部分も含まれている可能性があるので、ご注意ください。

◎悩みに関する助言や情報を探す際、もっと助言(情報)を求めて、同じように放射線治療で起こった皮膚の症状に関する別の悩みと助言を探す方もいらっしゃいます。ただ、悩み文はいろいろですが、助言の要点は異なるわけではありません。これは、他の治療に伴う症状などでも同じです。
一方、自分と同じ立場の方々が、たとえば放射線治療に伴う皮膚の症状などに関してどのようなことで悩んだのか、どのようにつらさを感じたのか読んでみたいときもあると思います。その場合は、『悩みのデータベース』(https://www.scchr.jp/cancerqa/iryou.html)をご活用ください。


 
【放射線治療と皮膚の変化】

放射線の治療を行っていると、放射線をあてている部位に炎症が起こり、皮膚の症状(皮膚が赤くなる、かさかさになる、かゆみがある、症状が強いと皮膚がめくれてただれたようになるなど)が出てくることがあります。皮膚の症状が特に起こりやすい部位は、首、耳の後ろ、乳房の下、肘関節やわきの下、足の付け根や外陰部などしわの多い場所です。これは、皮膚同士がこすれることが刺激になるためです。

これらの症状は治療の後半になるにつれ強くなります。皮膚の炎症は、治療が終われば徐々によくなってきます。ただ、炎症を起こして皮膚が弱っているところを、かゆみがあって無意識にかいてしまったり、下着や服などとの接触で、一時的に炎症が強くなったりすることもあると思います。

皮膚炎を悪化させないようにするためには、症状の予防や症状に対する対処などの自己管理が大切です。
抗がん薬と併用の治療の場合、また、部位によって、症状の出方や自己管理の注意点など異なる場合もあるので、担当医や看護師の説明やアドバイスにそって、わからないことや困ったことがあるときは、そのたびに、確認し相談するようにしましょう。


 
【保清・保湿・保護】

放射線治療をあてている部位、あるいはあてていた部位に対しての刺激(物理的刺激、化学的刺激など)を避け、清潔を保つようにします。

■清潔
◎入浴やシャワーは、熱いお湯は避けましょう。
◎入浴やシャワー時には、石けんやボディシャンプーをよく泡立てたうえで使用し(泡立てが大変な場合、もともと泡で出るタイプのものを利用してもかまいません。また、洗顔用などで売っている泡立てネットや泡立て器などを使うなどの方法もあります)ます。放射線を照射している(あるいは照射していた)部位は、手でなでるように洗い、ナイロンタオルなどで強くこすらないようにします。シャワーの場合は水圧を弱くし、あるいはぬるま湯で石けんの泡を洗い流すようにしましょう。
◎石けんやボディシャンプーなどは、特に指示がなければこれまで使用してきたものでも構いません。ただし、メントール(ハッカに含まれる成分)などの刺激物質が入ったものは避けましょう。
◎入浴・シャワー、洗浄後は、やわらかいタオル等で優しく押さえ込むようにしてふき、こすらないようにしましょう。
◎温泉、サウナ、岩盤浴、プールなどは避けましょう。

■刺激を避ける
◎照射部位(放射線をあてている、あるいはあてていた部位)の皮膚に摩擦等で刺激にならないように、しめつけないゆったりめでやわらかい素材の服や下着を着用します。
◎女性で胸部に放射線をあてるときは、ソフトブラジャー、ワイヤーなしのブラジャーなどを使用するようにしましょう。
◎直接肌にあたる下着などは、綿やシルクなど肌触りのよい素材にしましょう。
◎首の周りに放射線をあてるときは、襟付きの服は避ける(照射部位が、襟の布地でこすれて刺激になり、皮膚を傷める原因になる)、もしくは開衿シャツ(オープンカラーシャツ)とし、開襟シャツの場合は、からだの動きで襟が照射部位にあたらないか必ず確認しましょう。また、のりのついたシャツも避けましょう。
◎照射部位に絆創膏やテープ類は貼らない。
◎かゆみなどが出たときに、爪でひっかいて傷をつけたり刺激したりしないように、爪は短く切っておきましょう。
◎照射部位が陰部のときは、下半身をしめつけない下着や服にします。ジーンズのような固い素材は、歩くことなどでこすれて刺激になり、皮膚や粘膜を傷める原因になるので着ないようにしましょう。
◎肛門部にも放射線があたる場合、排泄後は優しく押さえるように拭きます。介護が必要な人用の『トイレに流せるお尻ふき』などを優しく押し当てるようにして利用してもよいでしょう。
ウォシュレットは、一番弱くしても、しみるときがあります。その場合は、ペットボトルにぬるま湯を入れて流したり、旅行用の簡易ウォシュレット(ノズルがついている)にぬるま湯を入れて使ってもよいでしょう(押すときに勢いよく押すと、刺激になるので、上からそっと洗い流すようにする)。皮膚を清潔にした後は、外的刺激から皮膚を守るため、保護オイルなどを使用するのもよいでしょう。その場合は、自己判断せずに、担当医や看護師に相談しましょう。

■保湿
◎照射部位は、皮膚の乾燥を防ぐために、保湿に努める必要があります。ただし、自己判断で市販の軟膏やクリームをつけたり化粧品をつけたりせず、まず担当医や看護師に相談しましょう。

■その他
◎照射部位に、使い捨てカイロ、電気あんかなどをあてないようにしましょう。
◎照射部位に熱感やかゆみがあるときは、クーリング(冷やす)を行いましょう。その際、保冷剤は冷凍庫から出してすぐの固いものではなく、シャーベット状にやわらかくしたものを使用するようにしましょう。
◎外出時、肌が露出する部分に放射線をあてている場合は、日傘、帽子、長袖の上着などを使用し直射日光を避けるようにするようにします。

皮膚炎も個人差があります。黒ずみが消えるまでに1年以上かかることもあります。


 
【放射線治療終了後】

放射線治療で起こった皮膚の炎症(ただれ、赤み、熱感など)は、放射線治療が終われば1ヶ月程度でよくなってきます。ただ、皮膚のつっぱる感じや乾燥などの症状が長く残る場合もあります。また、色素沈着(皮膚の黒ずみ)が残ることもあります。色素沈着の予防や改善のためには、紫外線対策が大切になります。紫外線予防は、帽子や日傘、長袖の洋服の着用、日中の外出時には、日焼け止めを塗るなどがあります。夏だけではなく、一年を通して対策を取りましょう。

《参考資料》
(1)定塚 佳子.放射線皮膚炎の最新の知見.がん看護23(5):463-465, 2018
(2)野澤桂子, 藤間勝子. がん患者のアピアランスケア. 南山堂.2017
(3)日本乳癌学会編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版. 2023
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/
(4) 日本がんサポーティブケア学会Oncodermatology部会編.がんサバイバーのための皮膚障害セルフケアブック. 小学館.2022

(作成日:2023年8月14日)


 

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