「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
なお、個別の回答やご相談は、仕組み上できかねますので、お困りごとやご相談がある方は、お近くの「がん相談支援センター」をご利用ください。

悩み

抗がん剤治療による手や足のしびれがあり、物をつかみにくい。歩きにくい状態が続き、つらい。
14 件の体験者の声があります。

助言

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【最初にお伝えしたいこと】

◎ここに表示されている悩み文は、2003年と2013年に全国のがん体験者の方々が参加された実態調査で、お一人お一人がご自分の言葉で書かれた悩み文を整理して構築した『がん体験者の悩みデータベース』にある悩み文の一部です。悩み文は、悩みごとに切り分けて一部加工もしています。
そのため、治療の変化(治療薬の種類、手術方法や放射線療法などの進歩など)、さまざまな制度の変化や社会情勢等で、類似した悩み文であっても、現在の病気や治療の状況、社会状況とは異なる部分も含まれている可能性があるので、ご注意ください。
しびれが起こる抗がん薬にも、いろいろあります。実際に、さまざまな病院で使われているお薬に関しては、静岡がんセンターで作成した小冊子『抗がん剤治療と末梢神経障害』(PDF版)(https://www.scchr.jp/book/manabi2/manabi-body10.html)の7章に、「末梢神経障害を起こしやすい抗がん剤について」の章に記載があります。

◎しびれに関する助言や情報を探す際、もっと助言(情報)を求めて、別のしびれに関する悩み文のページも探して読む方もいらっしゃいます。ただ、悩み文はいろいろですが、助言の要点は一つ一つで異なるわけではありません。これは、他の治療に伴う症状などでも同じです。
一方、自分と同じ立場の方々が、たとえばしびれに関してどのようなことで悩んだのか、どのようにつらさを感じたのか読んでみたいときもあると思います。その場合は、『悩みのデータベース』(https://www.scchr.jp/cancerqa/iryou.html)をご活用ください。

◎しびれがいつ頃まで続くのかに関しては、治療終了後、しびれがやわらいでくるのは半年くらい、あるいは年単位となることがあるともいわれています。
患者さんのお話では、「1年以上かかった」、「やわらいでくるまで、6-7年かかった」という方もいらっしゃり、「手のしびれはよくなったけど、足の指先はまだ残っている」等、部位により異なる回復状況の方もいらっしゃいました。また、残念ながら、改善しない場合もあります。
日常生活の中で、不快や不安を感じる時間が長く続くのは、とてもつらいことだと思います。だからこそ、治療を継続している際も、しびれに関して医師などの医療者にその状況を伝えること、また、しびれに伴う不快をできるだけ軽くする試みや、日常生活で注意することを生活の中に取り入れて自分でできることを行ってみましょう。

◎治療で末梢神経障害(しびれ)が出たときは、担当医や看護師に状況をきちんと伝えましょう。
しびれに関しては、医療者にその状況を伝えることが大切です。短いと感じるかもしれない診察時間や、医師や看護師、薬剤師等にうまく伝えられないと思うかもしれませんが、治療で末梢神経障害(しびれ)が出たときは、担当医や看護師に状況やその変化をきちんと伝えましょう。
しびれは、自覚している症状を他の人に伝えるのが難しい側面があります。ですから、しびれの程度だけではなく、日常生活の中での変化や困りごとも具体的に伝えることが大切です。
たとえば、服のボタンがとめにくい、字がうまく書けない、ものがうまくつかめない、靴がうまくはけない、つまずきやすい、はし(フォークやスプーンなど)をうまく使えない、階段の上り下りがつらいなど、しびれに伴う日常生活の困りごとは具体的に伝えること、そして、しびれや困りごとの程度や種類に変化があれば、その変化の状況も伝えることが大切です。
できれば、あらかじめ症状とその強さを記載する表を作成しておき、受診の前日に日付を記入してチェックしておき、その表を医師や看護師等に提示すれば、現在の状況だけではなく、これまでのしびれの症状の変化も相手に短時間で伝わりやすいと思います。また病院によっては、このようなチェック用紙をあらかじめお渡ししている施設もあります。
診察室での時間は限られている上、医師を前にすると緊張してしまう方もいます。伝えようと思ったことがすべて伝えられるとは限りません。少し手間は増えますが、しびれの状況を医師や看護師にきちんと理解してもらうためにも、外来前日に準備しておきましょう。

◎抗がん薬による末梢神経障害(手足のしびれや知覚異常など)は、
 ▽抗がん薬の種類や組み合わせによって異なる
 ▽症状の程度、持続期間等、個人差がある
 ▽治療を重ねるほど(総投与量が増えるに伴って)、症状が出てきたり、強くなったりする
などがあります。


 
【日常生活での注意点】

抗がん薬によるしびれは、日々の暮らしの中で、しびれによる不快と生活への支障の両方を感じることが多く、つらさや不安も大きいと思います。
つらさや不安はなかなかぬぐえないかもしれませんが、しびれをやわらげる可能性のあることを試してみること、また、しびれが原因で、やけどやけがなどしないように、日常生活のなかで注意することが大切です。

しびれの程度などは個人差があり、またしびれをやわらげる可能性のある試みも、すべての方に効果があるわけではありません。患者さんから経験談をお聞きすると、ご自分なりにいろいろ試して自分にあった方法を日常生活に取り入れたり、自分なりの工夫をしたり、されているようです。


 
【やけどに注意する】

◎ 手(指など)がしびれているときは、熱さを感じにくくなるので、湯飲みを持つときや熱い物にさわるときに、やけどに注意してください(湯飲みではなく、取っ手のついたカップを使うなど)。
◎ カイロなどでの低温やけどに注意してください(カイロを長時間身につけておかない、ストーブのそばに長時間いないなど)。
◎ 家事の時は、綿手袋などをし、直接熱いものに触らないようにしましょう。


 
【けがに注意する】

◎ 刃物を使うとき、指先がしびれて鈍くなっていることがあるので、けがをしないように注意しましょう(調理をしなければいけないときなどは、包丁は危ないので、料理用はさみ、ピューラー、フードプロセッサーなどを使用する、あるいは、野菜などあらかじめカットされた状態で購入できる材料を活用するなど)。
◎ 深爪をしないように注意しましょう(入浴後など爪がやわらかい状態のときに爪切りをする、爪やすりを使うなど)。
◎ 手や足のしびれがあるときは、買い物などで重いものを持てなかったり、買い物袋を落としてしまったりすることがあります。ショッピングカートの利用、リュックサックタイプのエコバッグの利用など、手で持つより負担は少ないと思います。ネットスーパーやネット通販の利用、スーパーの配達(配達してくれるところであれば)などを利用する方法もあります。


 
【転倒に注意する】

◎ 足(足先や足の裏など)がしびれているときは、滑りにくい靴をはき、段差は特に気をつけましょう。
◎ 脱げやすい履物(サンダルやゆるい靴)は避けましょう。
◎ ハイヒールは足先に体重がかかって転びやすいので履かないようにしましょう。
◎ 階段では手すりを使い、ゆっくり上り下りしましょう。あるいは、エスカレーターやエレベーターを利用しましょう。
◎ 足がしびれているときは、立ち上がるときに力が入りにくいことがあるので、ゆっくり立ち上がるように気をつけましょう。
◎ 部屋の床につまずきやすいものを放置しないようにしましょう。
◎ 滑りやすいカーペットやマットなどを敷かないようにしましょう。
◎ 転倒防止のためのバランス運動
特に高齢になると、筋力の低下、足首の関節が硬くなる、視力低下(老眼、白内障など)などが起こりやすくなり、そこに足のしびれが加わることで、転びやすくなります。家でできるバランス運動などを取り入れてみましょう。
バランス運動の例)
立った状態で、片足を軽くあげて(10cm程度でよい)、30秒間くらいそのままでいます。その後、反対側も同じようにします。なお、体がふらついても支えられるように、足を上げるのと同じ側の片手(たとえば、右足をあげるときは、右手)は壁などを触りからだがふらついても支えられるようにするか、動かないテーブルや椅子などを持ち、ふらついても大丈夫なように安全に十分気をつけましょう。


 
【日常生活での工夫】

日常生活の工夫の情報やグッズ等を探すときなど、『抗がん薬治療の副作用で起こるしびれ』と限定してしまうと、なかなか見つけにくいと思います。しびれという症状に着目して、『しびれがある』、『指や手の力が弱っている』ときに便利なものを探してみましょう。

特に、高齢者用やリハビリ用のグッズなど、100円ショップにも、使うと便利なグッズがあると思います。
◎ペットボトルやびんのフタなどがあけにくいときは、ペットボトルオープナーなどの補助具、指サックや太めの輪ゴムなどを使ってみる。指サックは、外出時に持ち歩くとどこでもすぐに取り出せ使える
◎ボタンのない服や、ボタンがはめやすい服を着る
◎靴下はしめつけないものを履く(履き口のゆるいものなど)
◎指に力が入りにくく、文字がうまく書けないときは、可能であれば、パソコンやスマホ、タブレット等を利用する
◎また、<筆記補助具(高齢者や手や指が不自由な方などための筆記具の補助具、すべりにくいシリコン製のグリップを筆記具の指があたるところにかぶせたものなど、いろいろ工夫されている>などを試してみる など


 
【しびれをやわらげるための試み】

指先や足先がしびれているときに、これらを動かす(運動する)ことで、しびれがやわらぐことがあります。1日に数回、症状のある手足の筋肉を曲げ伸ばしする運動を数回ずつ行ったり、くるみ大の小さな球やゴムボールを握ったりゆるめたり、手のひらで転がしたりと、手指の運動を行ってみましょう。
握力が弱った高齢者やリハビリ用に市販されているグッズもあります。

温めると血行がよくなり、しびれがやわらぐことがあります。入浴は、シャワーだけで済まさず湯船につかると、血行がよくなります。お湯につかっているとき、手指の運動も兼ね、手足の指先を動かしてみてもよいでしょう。
また、「温泉に行くと、温まるだけでなく、気持ちもほぐれて楽になる」と言われた患者さんもいらっしゃいました。
温めるという点では、特に寒い時期は、厚手の手袋や靴下で保温するのもよいでしょう。

しびれに対して対症的にお薬を使う場合もあります。ただ、日常臨床で使われていても、まだ科学的に有効かどうか検証されている途中のもの、十分に検証されていないものもあります。また、効果が期待できても、そのお薬の副作用(眠気やだるさ、ムカムカするなど)との兼ね合いで、慎重に検討する必要があります。
お薬を対症的に使うかどうかに関して医師は、患者さんのしびれの度合いや日常生活の支障、しびれのお薬の副作用との兼ね合いをよく検討します。しびれがつらいときは、主治医とよくご相談ください。
実際に、さまざまな病院で使われているお薬に関しては、静岡がんセンターで作成した小冊子『抗がん剤治療と末梢神経障害』(https://www.scchr.jp/book/manabi2/manabi-body10.html)の『対症療法について』をご参照ください。

《助言作成の参考にした資料》
(1)日本がんサポーティブケア学会編.がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン 2023年版.金原出版
(2)川口展子.化学療法誘発性末梢神経障害 本邦の現状とASCO/ESMOガイドライン 2020. CANCER BOARD of the BREAST 2022; 7: 50-53
(3)日本乳癌学会編. 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2023年版. 2023
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/
(4)市川度 編著.がん薬物療法の副作用ケアとことん攻略本.メディカ出版.2016
(5)飯田宏樹, 新田都子.痛み・神経障害ケア:がまんさせないケアへ.がん看護 2017; 22: 389-392
(6)草場仁志.末梢神経障害.がん看護 2017; 22: 222-224

(最終更新日:2023年8月09日)


 

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