自分の助言集をつくる
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一般に延命治療というと、回復の見込みがなく死が数日、あるいは数時間後にせまっているような患者さんに対して、人工呼吸器などの生命維持装置をつけたり、心肺蘇生(心臓マッサージや人工呼吸)などの処置を行うことをさしています。
ここでの悩みは、自分に死がせまった時に「どう生きたいのか」、そして「どう死にたいのか」に関する思いや悩みと思われ、延命治療という言葉が使われています。
一方、がん医療の中での延命治療にはもう一つ別の意味があります。
がんの治療の目的には、『治すための治療(治癒をめざした治療)』と『がんとできるだけうまくつき合っていく治療』があります。この後者の治療の場合に、延命治療という言葉を使ったり、イメージされたりすることがあります。
転移している状況でがんが見つかったり、がんの再発や転移がわかったりした場合、治療の目的は『がんとできるだけうまくつき合っていく治療』です。このような時、患者さんやご家族は、医師から治療の説明を受ける中で、『がんとできるだけうまくつき合っていく治療』ではなく、『治すための治療(治癒をめざした治療)ではない治療』という否定的な意味合いを感じ、強いショックや動揺を受けることがあります。
ただ、『がんとできるだけうまくつき合っていく治療』というのは、決して後ろ向きの治療でもないし、意味がない治療という訳でもありません。
患者さんの生活の質(QOL)を大切にし、生活の質(QOL)を維持しながら、がんの進行をできるだけ抑えたり、がんに伴うつらさをやわらげたりする治療を行っていくのです。現在は、新しい治療薬もいろいろ開発され使われてくるようになって、症状をコントロールしながら長期間の生存も可能になってきています。
あまり先のことを考えると、つい悪い方へと考えを進めてしまい、結果的に不安が増すこともあると思います。
今は、『今、自分にできること』を一生懸命やればいい、というふうに割り切って考えてみると、こころが少し、楽になるかもしれません。
一般論になりますが、「死んでしまいたい」と口にする方は、“死んでしまいたいと思うほど、つらい”というメッセージを伝えていることがある、と言われます。延命治療や安楽死について考えるのには、“いつか死が近づいた時には、耐えられないほどつらいと感じるのではないか”という予想があるのかもしれません。
確かに、がんという病気については、痛い、苦しいというイメージが根強く残っています。しかし、今日では、がんの患者さんが感じているつらさを総合的にやわらげる緩和ケアの研究が進み、がん医療の現場に広く普及しています。適切な緩和ケアを受けることで、がんの進行に伴うつらさの多くは軽減できるようになりつつあります。
もし、将来感じることになるかもしれないつらさへの予期があなたを悩ませているのでしたら、緩和ケアについて情報を集めることで、こころが少し、安らぐかもしれません。
![]() (1)日本ホスピス緩和ケア協会 https://www.hpcj.org/index.html サイドメニューに、『ホスピス緩和ケアをご利用の方に向けた情報』があり、『ホスピス緩和ケアQ&A』(ホスピス緩和ケアに関することをQ&Aで情報提供しています)、『ホスピスってなあに?』(冊子PDF版)などホスピス緩和ケアに関する情報や、ホスピス緩和ケアの解説やホスピス緩和ケアを受けられる医療機関一覧(ホスピス緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、在宅ホスピス緩和ケア)の情報があります。 (2)国立がん研究センター『がん情報サービス』:相談先・病院を探す https://hospdb.ganjoho.jp/ https://ganjoho.jp/public/index.html がん情報サービスの[相談先・病院を探す]では、全国のがん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院、希少がん情報公開専門病院等の一覧が掲載されていて、さまざまな条件で検索できます。 (3)緩和ケア.net https://www.kanwacare.net/ 緩和ケアに関する総論的な情報、痛みや痛み以外の症状、緩和ケアの医療費に関する情報、こころの変化やつらさへの対処法などの情報が掲載されています。 |
ご家族は患者さんの大切な支えです。ご家族によるサポートは、がん患者さんにとって、専門スタッフのケア以上に効果的な、かけがえのない支えになることがあります。そばにいる、というだけでもよいのです。
ただ、不安を抱えながら病気と向き合っているというのは、ご家族も同じです。ときには、大切な人を支えることにがんばりすぎて、疲れてしまったり、悩んだりすることもあります。
緩和ケアは、ご家族もサポートします。ご家族が穏やかにいることが患者さんの安心にもつながります。
適切な『緩和ケア』を受けることで、ほとんどの場合、体やこころのつらさをやわらげることができます。ただ、割合そのものは少ないのですが、現在効果があると考えられるどんな方法を使っても、つらさを十分にやわらげることができず、つらい状況が続いてしまうことも、まれに起こります。どんなに手を尽くしてもつらさをとることができず、最期の時が迫っている、と考えられる場合には、患者さんとご家族の意思を十分に確認した上で、薬を使って患者さんの意識が低下した状態を保ち、つらさをやわらげます。このようなつらさのやわらげ方を『鎮静』と呼びます。
つらさをやわらげることを目的とする『鎮静』は、命そのものを縮めることを目的とする安楽死とは異なるものです。安楽死は日本では認められていません。
大切なことは、適切な緩和ケアを受けることです。適切な緩和ケアを受けることができれば、つらさの軽減と引き換えに命を縮める、といったことを考える必要はなくなるはずです。
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