「がん体験者の悩みQ&A」では、2003年と2013年に実施した全国調査結果を整理して構築したがん体験者の悩みデータベースを公開しています。このデータベースに基づき、がん体験者の方々の悩みや負担をやわらげるための助言や日常生活上の工夫などの情報ツールの作成等を行っています。
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悩み

通院治療だが、好中球が減少しているので感染症が心配だった。
1 件の体験者の声があります。

助言

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【白血球(好中球)の減少】

白血球は、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球の3種類)、リンパ球、単球からなり、外から体に進入してきた異物を排除する役割をしています。白血球の中で、好中球は異物の代表である細菌を食べて体を守る役割があります。
抗がん剤は、細胞分裂の過程に働きかけて、がん細胞が無制限に分裂増殖しないようにしていくものですが、体の正常な細胞にも影響を与えます。特に、細胞分裂が活発な骨髄細胞、消化管細胞、毛母細胞などは影響を受けやすい細胞です。
骨髄細胞は、白血球、赤血球、血小板などの血球をつくる細胞です。抗がん剤治療によって、これらの血球をつくる働きが低下して、白血球、赤血球、血小板などの数が減少します。

ほとんどの抗がん剤で骨髄抑制は起こりますが、どの程度の骨髄抑制が起こるかは、薬の種類や組み合わせによって異なりますし、これまでの抗がん剤治療の回数や放射線治療と併用しているかなどが影響する場合もあります。
使う薬の種類や量にもよりますが、白血球(好中球)の数は、抗がん剤を投与してから1~2週間後に最も少なくなることが多いようです。ただし、抗がん剤による骨髄抑制は、時間の経過とともに回復していきます。
白血球(好中球)の数が治療を行うための基準を満たしているかどうか、抗がん剤を投与した後、骨髄抑制の副作用がどういう状況かを確認するため、定期的に血液検査を行いチェックします。好中球の数を回復させるための薬(G-CSF:顆粒球コロニー刺激因子)が使われることもあります。


 
【感染の予防】

感染予防は、白血球(好中球)が減ったときだけ行うというのではなく、日常的に清潔を心がけ、感染予防のためにできることを日常生活のなかで習慣化していくことが大切になります。

1.手洗い
外出後、トイレの前後、食事の前後に加えて、日常の様々な行為の前後に手を洗うように、意識して習慣づけましょう。
洗い方のポイントですが、手指の表面のよごれを流水で流して、せっけんを泡立てます。手のひら、手の甲に比べて、指先や指の間、親指の周囲、手首は、洗い方が不十分なことが多いので、よく洗うようにしましょう。流水で石けんを洗い流したあとは、清潔なタオルでしっかり拭いて、乾燥させてください。

2.うがい
うがいは、外出後、食事前後、起床時、就寝前など、まめに行うとよいでしょう。
のどの『がらがら』と口の中の『ぶくぶく』の両方を行って、口の中全体に行き渡るようにしましょう。
洗浄作用や粘膜保護作用のあるうがい薬を使用してもよいでしょう。ポビドンヨードなどのうがい薬やアルコールの入ったうがい薬はしみることもあります。しみるようであれば、消炎・粘膜修復効果のある水溶性アズレンのうがい薬などもあります。

3.口の中の清潔
口のなか、舌や歯ぐきの清潔に心がけましょう。
○ 毎食後、寝る前には柔らかめの歯ブラシで、歯や歯ぐき、舌を磨きましょう。もし、磨くときに痛みがあるときは、ぬるま湯を使ってより柔らかい歯ブラシを使うようにしましょう。
○ 抗がん剤で口内炎ができてるときは、刺激の少ないケア品を選びましょう。しみるときには歯磨き粉の使用をやめて水だけで磨いてもかまいません。
○ 入れ歯があわないと、粘膜を傷つける原因になったり食べかすが間にはさまりやすいので、入れ歯があわないときは、歯医者さんに相談し早めに対応しておきましょう。
○ 口の中に痛みや出血があるときは、出血している箇所や痛い箇所は避けて、歯の部分だけを小さな歯ブラシなどを使って磨きましょう。
○ 虫歯や歯周病があると、口の中の感染の原因になる可能性が高くなります。できるだけ抗がん剤治療を受ける前に歯科を受診し、虫歯や歯周病はないか、入れ歯はあっているかなどのチェックや治療、正しいブラッシング方法などの口の中をきれいに保つためのマウスケア方法の指導などを受けましょう。

4.からだやおしりの清潔
できるだけ毎日入浴かシャワーで全身の皮膚を清潔に保つように心がけましょう。体調が悪くシャワーや入浴が難しい場合は、からだをふいたり、温水便座(ウォシュレット)などを利用して陰部の清潔につとめましょう。
排便後は温水便座などを利用して、きれいに洗い流すようにしましょう(温水便座がない場合は、ペットボトルなどに微温湯を入れて洗浄しましょう)。また、便秘や下痢で肛門部の粘膜が傷つくと、そこから細菌が入って感染しやすくなりますので、排便のコントロールにも気をつけましょう。

5.調理と食生活について、
日頃から以下のようなことを心がけましょう。
○ 調理をする前に必ずよく手を洗いましょう。
○ 包丁やまな板は、使うたびに洗うか、肉用、魚用など複数そろえておくとよいでしょう。使った後は熱湯をかけてよく乾燥させておきましょう。
○ ふきんやタオルも清潔なものを使いましょう。
○ 肉や魚は傷みやすいので、できるだけ早く食べきるようにしましょう。
また、白血球(好中球)が下がりはじめる時期から回復してくるまでの期間は、原則的に加熱処理された食事をとるようにしましょう。

6.上気道感染(風邪など)の予防
白血球(好中球)が下がりはじめる時期から回復してくるまでの期間は、外出時はマスクをつけ、人の多い場所や時間は避けるようにしましょう。買い物などは、マスクをつけ比較的人が少ない時間にすませるようにしましょう。マスクをつけて外出しても、外出後は必ずうがいをしっかりするようにしましょう。

7.部屋の清潔
ほこりについている細菌での感染を防ぐためにも、部屋の掃除はできるだけ毎日行いましょう。

8.その他
皮膚の乾燥を防ぎ、切り傷などにも注意しましょう。庭いじりなどの際は手袋を使うようにしましょう。


 
【感染症が疑われる症状と対応】

感染症が疑われる症状としては、以下のようなものがあります。

○ 寒気や震えを伴う38度以上の発熱
○ 咳やのどの痛み
○ 肛門痛
○ 下痢や腹痛
○ 排尿時の痛みや残尿感、頻尿など
○ 歯ぐきの痛み、虫歯
○ 陰部のかゆみ、おりものが増える

38度以上の寒気や震えを伴う発熱があったり、発熱とともに咳、下痢、排尿時の痛みや頻尿、肛門痛などがでたときには、早めに担当医に相談しましょう。


 

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