主な診断方法・治療法・手術件数

主な診断方法

画像診断(MRI、CTスキャン、脳血管造影)

脳の中にある腫瘍の性状を把握し、的確な治療方法を選択するためには、脳の血管に造影剤を入れて画像化する「脳血管造影」やMRIが必要です。
さらに高解像度高速CTスキャンを用いた3次元脳血管造影画像で手術シミュレーションを行うことで、手術の安全性は飛躍的に向上しました。髄膜腫のような血管を豊富に含んだ腫瘍では、手術前に脳血管造影の画像で確認しながら腫瘍につながる血管をふさぐ「腫瘍血管塞栓術」が必要となります。

病理診断

手術で切除した病変部位の標本から、腫瘍の分類・悪性度を診断し、術後に放射線治療や化学療法を追加するかどうかの判断材料にしています。

遺伝子解析

腫瘍に特異的な遺伝子を解明し、今後の新しい治療法の開発に役立てています。

主な治療法

 当院では、術中ナビゲーションシステムや特殊な蛍光色素を用いて腫瘍を発色させ、摘出を進めていく方法で脳腫瘍摘出術の確実性を高める工夫を行なってきました。2019年からは術中CT装置(32列ヘリカルCT)を導入したため、腫瘍摘出程度を確認しながら手術を進めることができるようになりました。この装置の導入によって腫瘍周辺の脳に対する手術操作の影響を可視化することができるため、摘出術後の合併症の発生を予防することができ、脳腫瘍手術の安全性がこれまで以上に向上しています。

神経膠腫

依然として治療が困難な腫瘍です。腫瘍の本体を、手術でとりのぞきます。しかし、多くの神経膠腫は脳組織にしみわたって成長する性質をもち、外科治療だけの効果は限定されたものです。手術後に適応判断の上で抗がん剤、放射線治療を行います。当科では病理診断科と共同で、腫瘍の薬剤耐性を調べ、半オーダーメードの抗がん剤選択をおこなっています。また、静岡がんセンター研究所免疫治療研究部との共同研究として「活性化樹状細胞を用いた悪性グリオーマに対する特異的免疫療法」の第2相試験を行い、研究成果の英文発表を行いました。

悪性リンパ腫

脳にしみ込む、急激な進行をきたす腫瘍で、迅速な診断と治療が必要な腫瘍です。画像診断などからこの腫瘍を疑った場合、針生検または開頭生検で確定診断を急ぎます。その後、抗がん剤の治療が中心となり、放射線治療を組み合わせます。患者さんによっては、血液幹細胞移植科と協力して治療にあたります。

転移性脳腫瘍

個々の腫瘍の位置、数、患者さんの全身状態などをこまかく検討して、手術治療、定位的放射線治療、通常の放射線治療、またはこれらの組み合わせを、治療チームの豊富な経験に基づいてテーラーメードの選択をします。腫瘍を除去した部分の再発を防ぎ、生活の質(QOL)を保つ方法として、緊急手術を含めて対応しています。

髄膜腫

腫瘍への栄養血管が豊富にある方には、脳血管内手術の技法を用いて、手術前に腫瘍の血管だけを選択的に閉塞します。手術では、超音波破砕機、手術顕微鏡を用いて、正常組織を障害せずに摘出術を行っています。

神経鞘腫

手術中に顔面神経モニターをおこない、顕微鏡下で、微細な操作をおこなって摘出します。執刀医は後頭下開頭術に豊富な経験があります。

下垂体腫瘍

MR画像を駆使して診断を行います。手術は、三次元ナビゲーターを用いて、安全かつ短時間で摘出を行っています。執刀医は経蝶形骨洞手術に豊富な経験があり、患者さんの体力の負担が少ない治療として、この方法を選択することが多くなっています。患者さんは下垂体ホルモンの異常をもつことが多いため、注意が必要です。ホルモンの細かい調整を行います。

頭蓋底腫瘍

良性の場合と悪性腫瘍の場合とがあります。腫瘍の広がり、種類などによって、治療方針が大変異なります。頭頚科、形成外科、陽子線治療科などと協力して治療にあたります。

手術件数 2023年1月~12月

手術名 件数
頭蓋内腫瘍摘出術 73
その他の開頭術 8
広範囲頭蓋底腫瘍切除・再建術 4
内視鏡的経鼻的下垂体腫瘍摘出術 20
定位的脳腫瘍生検 3
水頭症手術(内視鏡手術含む) 19
その他の手術 11
脳血管内手術 2
合計 140

脳神経外科

脳神経外科