胸腔鏡手術

胸腔鏡(きょうくうきょう)手術とは?

 肺は胸腔きょうくうという肋骨や筋肉、横隔膜など囲まれた空間の中に存在しています。そのため、肺の手術では、胸腔内に到達した上で、その中にある肺を切除する必要があります。従来は皮膚を15cm以上大きく切開し、肋骨の間を器械(開胸器)で開いて外科医が直接肺を見て、触って切除を行う方法(標準開胸手術)が主流でしたが、近年では数cm以下の小さな皮膚切開を1~数個おいて、胸腔鏡きょうくうきょうという直径5~10mm程度のビデオカメラを胸腔内に挿入し、カメラを通してモニター画像で胸腔内を観察しながら専用の手術用器械を用いて切除を行う胸腔鏡下手術きょうくうきょうかしゅじゅつ(video-assisted thoracic surgery:VATSバッツ)が中心となっています(図1,2)。創が小さく、痛みや身体的負担が少ないのが特徴です。胸腔鏡手術の中には、胸腔内に手を入れずにモニター画面だけを見ながら、専用器械のみを用いて切除を行う手術(完全鏡視下手術かんぜんきょうしかしゅじゅつ)と、小切開創(8cm以下)からの直接視と直接操作を併用しながら行う胸腔鏡手術(胸腔鏡補助下手術きょうくうきょうほじょかしゅじゅつ)があります。更に近年は手術用ロボット(ダヴィンチ)を用いたロボット支援下胸腔鏡手術も行われています。この手術ではロボットにより繊細で精密な胸腔鏡手術が行うことが出来ます(詳細は前項の“ダヴィンチ手術”をご参照下さい)。孔の数や大きさや形美性や創の痛みにも関わりますが、手術の難易度と精確度にも影響します。同じ質の手術が可能であれば、創は小さい方が良いですが、安全性と手術の精度との兼ね合いになります。孔の数や創の大きさは病院によって異なりますし、病状によっても推奨される手術は異なりますので、手術の方法に関しては、病院の担当医と相談して決めるのが良いでしょう。

図1.胸腔鏡手術風景

図2.胸腔鏡手術の創の大きさと位置(例)

図1:胸腔鏡手術風景 図2:胸腔鏡手術の創の大きさと位置(例)

静岡がんセンターの胸腔鏡手術

 肺がんの手術は最初の手術が非常に重要で、やり直しというのは多くの場合はできません。静岡がんセンター呼吸器外科では、”肺がんの手術はしっかり治す、治る肺がんを絶対に治し損ねない”ということを最重要課題としています。その上で、出来るだけ患者さんの負担を減らす低侵襲の手術を行うよう心がけています。
 当院では2011年より原発性肺がんに対する完全鏡視下肺葉切除術を導入しました。ただし、胸腔鏡手術を行ったがための再発や手術の安全性を損なうことだけは絶対に避けなければいけません。したがって、病状を良く考慮した上で、胸腔鏡手術の適応を厳しく決めています。そのため、病状が早期で、ほぼリンパ節転移がないと思わ
れる小型の肺がんが対象になります。当院では最大の創が3cm程度、その他に12cmの創が3か所、合計4か所の創で、胸の中には手を入れず行う完全鏡視下手術行ってはいますが、実際には肺がんの病状に応じて、4つの小さな小孔にて行う完全鏡視下手術から、4cm以下の1つだけの創から行う単孔式(たんこうしき)胸腔鏡手術(ユニポータルVATS)8cm以下の小切開創と1つの小孔による胸腔鏡補助下手術、5つの小孔にて行うロボット支援下胸腔鏡手術、そして開胸手術の中から患者さんの病状等に応じて詳細に検討した上で、手術の方法を決定しています。また、前述のとおり、手術・胸腔鏡手術の方法は、病院によって異なるため、それぞれの病状をお聞きになって、患者さんの希望を伝えたうえで、主治医と相談されると良いでしょう。

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