腹腔鏡手術
腹腔鏡手術とは
腹腔内の臓器のがんに対する手術の基本は開腹手術ですが、近年低侵襲手術の一つとして腹腔鏡手術が行われています。腹腔鏡手術では、お腹に小さな穴を開けて、ポート(カニューラ)というスリーブ状のものを腹壁に挿入し、そのスリーブからカメラや鉗子を挿入して手術を行うものです。傷が小さいことから、開腹手術よりは体に与える負担が少ないですが、お腹の中で行う臓器の切除やリンパ節の郭清などは、開腹手術と同じ範囲で行われますので、胃カメラや大腸カメラによる手術よりは負担は大きくなります。
一部の医療機関では傷が小さい事だけにこだわって、不十分な切除が行われたり、術後合併症が増加したりする事が報告されています。実際、腹腔鏡手術は直線的な鉗子を使用して手術を行うため、開腹手術よりも難易度が高い事が知られております。従って、がん種によっては進行がんに対する手術が推奨されていなかったり、術式が制限されているものもあります。
当院では、開院当初より腹腔鏡手術を積極的に取り入れてきました。腹腔鏡手術を安全・確実に行えるよう、各がん種毎に腹腔鏡手術が行える患者さんの条件を細かく規定し、十分な技術を持った医師(日本内視鏡外科学会技術認定医など)が手術を担当します。臓器毎の適応や、治療内容などに関しては、この後に記載されております各診療科のホームページもご参照下さい。
手術の実際などにつきまして解らない事がありましたらいつでも担当医にご相談下さい。
胃外科
胃外科では胃がんに対して多数の腹腔鏡手術(ロボット支援手術も含む)を行っています。当科のスタッフは全員日本内視鏡外科学会技術認定取得医です。これまでは比較的進行度の低い胃がん患者さんを鏡視下手術の適応としてきました。多施設共同の大規模臨床試験において、進行度の高い胃がんであっても従来の開腹手術と比較して、腹腔鏡手術の成績(長期生存)が劣らないことが立証されましたので、今後はほとんどの手術(年間約200例)が腹腔鏡もしくはロボット支援手術の方針となります。具体的な適応に関しては担当医にお問い合わせください。
大腸外科
大腸外科では大腸がんに対して、日本内視鏡外科学会技術認定医のもと、多くの腹腔鏡下手術を行っています。年間の腹腔鏡下大腸切除術は550件以上あり、大腸(結腸・直腸)がんに対する手術のうち、9割以上を腹腔鏡下手術(ロボット手術含む)で行っています。適応に関しては担当医にお問い合わせください。
肝・胆・膵外科
肝・胆・膵外科では、肝臓と膵臓の疾患に対して腹腔鏡手術・ロボット支援手術を行っています。肝臓では肝細胞癌や転移性肝腫瘍など、膵臓では膵癌や良性膵腫瘍などが対象となります。肝切除では肝部分切除、肝亜区域切除、肝区域切除および肝葉切除の80%を、膵切除では膵体尾部切除の80%を腹腔鏡およびロボット支援下に行っています。膵頭十二指腸切除においても適応拡大をしています。いずれも、肝胆膵外科学会高度技能指導医・専門医や、内視鏡外科学会技術認定医のもと、経験豊富な外科医が手術を行っています。腹腔鏡手術・ロボット支援手術の適応と詳細に関しては、遠慮なく担当医にお問い合わせ下さい。
泌尿器科
泌尿器科では、前立腺がん対する前立腺全摘除術は、ほぼ全例をロボット支援下で行っています。腎細胞癌に対する腎部分切除は、95%の患者をロボット支援下で行って居ます。腎摘除は、90%の患者を、腹腔鏡下で手術しています。腎盂癌、尿管癌に対する腎尿管摘除も、概ね9割の患者は腹腔鏡下手術で行います。膀胱癌の多くは、経尿道的膀胱腫瘍切除で治療されますが、膀胱全摘が必要な患者には、条件が合えばロボット支援下の膀胱全摘を実施します。具体的な適応は、担当医にご相談ください。
婦人科
婦人科では主に子宮頸がんに対しては腹腔鏡手術、子宮体がんに対しては腹腔鏡もしくはロボット支援下手術を行っており、日本産科婦人科学会で高難度新規医療技術に指定されている腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術も実施しています。いずれも日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、婦人科腫瘍専門医のもとで行っております。手術の詳細、適応に関しては担当医にお問い合わせください。