AYA世代の診療

AYA世代の定義

思春期・若年成人(AYA Adolescents and Young adults)は、本邦では、15-39歳と定義されています。各国、様々な定義がある中、この中でも、若い“A:Adolescents”世代と、これよりも成熟した“YA:Young adults”世代では、病気の特徴や必要と支援が少し異なります。

疫学と特徴

国立がん研究センターから発表された、がん診療連携拠点病院等院内がん登録2018-2019年小児AYA集計報告では、2018年、2019年の2年間の小児がん(0-14歳)は、4,688例(2018年2,288例、2019年2,400例)、AYA世代のがん(15-39歳)は、58,062例(2018年28,996例、2019年29,066例)でした。

がん腫の分布は、癌腫(37.8%)、脳脊髄腫瘍(4.9%)、胚細胞腫瘍他(4.1%)、悪性リンパ腫(3.6%)、白血病(3.2%)、軟部肉腫(1.5%)、骨軟部肉腫(0.6%)、黒色腫皮膚がん(0.9%)、変換不能(上皮内がん等)(41.4%)でした。

AYA世代に発症するがんには、いわゆる希少がんと、若くして発症した成人型のがんが含まれるため、患者さんは多診療科に分散して診療を受けるという特徴があります。現時点では、診療自体は、この世代に特有な標準治療はないため、それぞれの疾患の標準治療に準拠した専門的医療が望ましいです。一方で、支持療法に関しては、この世代に共通する点が多くあります。

静岡がんセンターでのAYA世代診療への取り組み

この世代の医療ニーズは、共通する点もありますが、この世代のなかでもライフステージによって異なるものもあり、個別性が高くなります。具体的なニーズは、意思決定、生殖、教育、就労、経済、育児など多岐にわたります。長期的な視点としての晩期合併症も重要な課題です。

当院では、全国に先駆け、「AYA世代のがん患者さんを集める、AYA世代病棟」を整備し、2015年6月から運用しています。この世代の患者さんの入院治療をおこなうAYA世代病棟で、入院治療を支援しています。

個別の診療科や施設でこれらのニーズを完結することは困難です。施設内連携や、生殖医療のように特殊技能を有する施設との施設間連携も大切で、院外の他の専門施設とも連携しています。教育や就労などでは、学校、雇用者、企業との意思疎通といった医療機関以外との連携やハローワークなどのリソースの活用が必要です。当院では、よろず相談などの窓口を設け、多職種チームで支援しています。それぞれの診療科での治療に加えて、AYA・こどもサポートチームなどが、AYA世代診療のトータルケアーを目指して、この世代の治療やケア―に参加しています。

子育て世代のがん診療支援

子育てをしながらがん闘病を行っているたくさんの親たちがいます。そして、これを支える家族がいます。お子さんへの支援はとても大切なので、当院では、それぞれの家族に合った子育てを支援しています。お子さんたちの力を引き出す応援をしています。

希少がんとしてのAYA世代診療

当院で治療を行うAYA世代のがんは、希少がんであることが多く、診療の判断は、困難な場合もあり、キャンサーボード(多診療科での総合的な話し合い)などで、より科学的な診療方針決定を考慮します。また、遺伝性腫瘍が含まれる割合が多く、遺伝子パネル検査の適切な使用が、望まれることがあります。遺伝外来を含めて、わかりやすい説明や相談しやすい場を提供します。

公的支援について

発症18歳未満にて小児慢性特定疾患より医療費助成制度、都道府県毎に、妊孕性温存支援等の公的支援整備が進んでいます。ソーシャルワーカーなどがこうした制度の活用の情報提供を行っています。

民間資源の活用

AYA世代がん経験者のピア-支援団体、医療者の設立した一般社団法人など、さまざまな情報共有や患者さん同士の交流の場があります。適切な情報や人と人と結びつきは、大きな力になります。活用できるように応援します。

*当院の上坂克彦病院長が、『静岡がんセンターのAYA世代のがん医療』をご紹介していますので、ぜひご覧ください。
 ⇒動画:「静岡がんセンターのAYA世代のがん医療」

 

「AYA week 2021」の講演(動画)

若い世代のがんについて社会に発信していく1週間「AYA Week 2021(3月14日~21日)」の間に掲載された講演動画です。

SCCのAYAがん医療のいまと未来
静岡がんセンターのAYA世代のがん医療 AYA week 2021
静岡がんセンターのAYA世代のがん医療(11分)
病院長 上坂克彦
AYAがん医療の概要と実際 AYA week 2021
AYAがん医療の概要と実際(8分)
小児科 石田裕二
AYAがんをうまく治す~PartⅠ
整形外科で治療するAYA世代のがん(骨・軟部肉腫)とその治療 AYA week 2021
整形外科で治療するAYA世代のがん(骨・軟部肉腫)とその治療(13分)
整形外科 片桐浩久
AYA世代の脳腫瘍~胚細胞腫瘍について~ AYA week 2021
AYA世代の脳腫瘍~胚細胞腫瘍について~(7分)
脳外科 出口彰一
AYA世代の白血病と移植医療 AYA week 2021
AYA世代の白血病と移植医療(10分)
血液内科 池田宇次
AYA世代の放射線・陽子線治療 AYA week 2021
AYA世代の放射線・陽子線治療(9分)
放射線・陽子線治療センター 尾上剛士
AYAがんをうまく治す~PartⅡ
AYA世代胃がんの現状 AYA week 2021
静岡がんセンターにおけるAYA世代胃がんの現状(21分)
胃外科 坂東悦郎
若年性乳がん・妊孕性 AYA week 2021
若年性乳がん・妊孕性(18分)
乳腺外科 西村誠一郎
子宮頸がんの予防と早期発見

AYA week 2021
子宮頸がんの予防と早期発見(8分)
婦人科 笠松由佳

AYA世代と希少がん AYA week 2021
AYA世代と希少がん
原発不明科 小野澤祐輔(4分)
若者たちの未来を支えるサポーティブケア
SCC多職種チーム医療推進委員会による支援 AYA week 2021
SCC多職種チーム医療推進委員会による支援
~AYA・こどもサポートチームの発足・起動と
          多職種チーム医療推進委員会の関わり~(14分)
多職種チーム医療推進委員会 清原祥夫
AYA世代のがんの闘病生活について AYA week 2021
AYA世代のがんの闘病生活について
~治療中の教育や就労などの社会生活への支援~(8分)
よろず相談MSW 御牧由子
AYA世代の「こころ」のこと AYA week 2021
AYA世代の「こころ」のこと~心理社会的な支援について~(9分)
緩和医療科 心理士 枷場美穂
抗がん剤治療と晩期合併症について AYA week 2021
抗がん剤治療と晩期合併症について(7分)
薬剤部 池内昌哉・川岸佐和子・杉山洋介
小児、AYA世代における身体活動量の重要性について AYA week 2021
小児、AYA世代における身体活動量の重要性について(12分)
リハビリテーション科PT 岡山太郎
AYA世代・ライフステージに必要とされる「生活行為」への支援 AYA week 2021
AYA世代・ライフステージに必要とされる「生活行為」への支援
~作業療法士(リハビリテーション科)のかかわり~(12分)
リハビリテーション科OT 田尻寿子
若年性乳がんと妊孕性 AYA week 2021
若年性乳がんと妊孕性~AYAがんをうまく治す~(15分)
看護部 的場めぐみ
治療中だからってあきらめさせない。若者たちの夢と希望をまもる
6東病棟の紹介 AYA week 2021
6東病棟の紹介(AYA世代病棟)(11分)
看護部 松本貴也
多職種協働によるAYAがんチーム医療の体制 AYA week 2021
多職種協働によるAYAがんチーム医療の体制
  ~AYA患者さんをチームで支える~(8分)
小児科CLS 西本恭子・看護部 津村明美
こどももケアの輪の中に AYA week 2021
こどももケアの輪の中に
   ~こどもを持つがん患者さん・ご家族への支援~(14分)
小児科CLS 常石悠子

 

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