患者家族支援

静岡がんセンターの3つの理念の一つである「患者さんと家族を徹底支援する」という理念を遂行するため様々な部門やシステムを整備し、協働で患者家族支援を実施しています。

患者家族支援を展開する上で、 (1)患者さんの悩みや負担等を軽減する情報や支援を提供する、(2)患者さんが知っておかなければならない情報を提供する、の2点からアプローチを実施しています。

患者さんの悩みや負担等を軽減する情報支援

(1) 患者や家族の視点による悩みや負担等の実態

患者視点で、がん患者さんの悩みや負担等の全体像を明らかにするために、2003年、我が国で初めて、がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査(全国のがん体験者7,885人が参加)を自由記述式による大規模調査で実施しました。その結果を体系化した上で、悩みのデータベースをインターネットで公開し、誰でも閲覧できる環境を整備しました。

調査から10年経過した2013年、2回目の全国調査(全国のがん体験者4,054人が参加)を実施し、がん対策基本法制定前後の悩みや負担等の変化などを含めた解析を行うとともに、2003年と同様、静岡分類により体系化し、2003年の悩みデータベースとあわせて、1万2千人のがん体験者の悩みデータベースを構築し、インターネットで公開しました。また、調査報告書は、概要版と通常版、乳がん編を作成し、冊子体で配布するとともに、PDFでダウンロードできるようにしました。

(2) 悩みデータベースに基づいた情報支援

インターネットによる情報発信としては、2007年から、悩みのデータベースを基盤としたweb版がんよろず相談Q&Aサイトを公開し、利用状況等に合わせ、デザイン、機能の変更や追加等を実施し、誰でも使いやすいように、レスポンシブルデザインにも早くから取り組み、モバイル端末でも見やすいサイトをめざしました。2017年に静岡がんセンターのホームページがリニューアルされ、この悩みデータベースに基づいたコンテンツは、【がん体験者の悩みQ&A】(http://cancerqa.scchr.jp)と名称を変更し、2020年のページビュー数も850万と多くの方に利用されています。現在も引き続き、地域住民、患者さんやご家族の悩みや負担、疑問に関して、地域で安心して医療を受け、暮らしていくための情報支援を目的にさまざまなコンテンツを提供しています。

患者さんが知っておかなければならない情報の提供

患者さんが積極的に治療に参加し意思決定すること、自分が受けている治療と治療に伴う体の変化を知り、判断し行動すること(セルフケア行動)を支援するための情報提供、技術支援に関する研究を行っています。

(1) 情報処方

「情報処方」とは、「がん患者さんやご家族が、知りたいこと、知っておかなければならない情報を的確に提供する」ことです。
がん薬物療法別に、がん患者さんやご家族向けの説明書を検討しています。
現場の医師、看護師、薬剤師らの協力を得て、治療内容、期待される効果、起こりうる副作用の種類や時期、病院連絡が必要な目安、副作用対処の工夫など、がん患者さんやご家族へ行う説明を1冊にまとめて、病院で運用しています。作成した説明書はホームページで公開しています。

(2) がん薬物療法による副作用の記録用紙(副作用メモ)

治療で起きる体調の変化を患者さんが自ら評価し、記録する「副作用メモ」を作成し、活用を検討しています。副作用メモを診療に活用することで、医療者と患者の視点の違いを埋めるコミュニケーションに役立つことを期待しています。

「情報処方」の説明書と合わせて使うことで、患者さんのセルフケアが向上すると考えています。

研究活動

研究活動