がん免疫療法
目的
患者さんに役立つ新しいがんの免疫療法を開発します。
背景
がん免疫療法は、本来身体に備わっているがんに対する免疫の反応を強化し、がんの増殖・進展を制御する治療法です。患者さんの体内で免疫反応を誘導する能動免疫療法(ペプチド・樹状細胞ワクチン等)や抗腫瘍効果を持つT細胞や抗体などを体外で増幅・活性化し、体内に戻す受動免疫療法の開発研究を行っています。免疫療法は、手術や化学療法を受けられない患者さんでも実施可能な第4のがん治療法として認識されています。特に抗体医薬である免疫チェックポイント抗体[抗PD-1抗体 (ニボルマブ)等]と言われる治療法は、がんによる免疫抑制状態を回復させ免疫反応を活性化することができます。この抗体によりこれまでに有効な治療法がなかった進行がんに対して腫瘍の縮小のみならず、生存期間の延長やQOLの向上が確認されています。本プロジェクトでは、現在施行中のHOPE研究で同定された標的抗原に対して新しい免疫チェックポイント抗体の作製を含めた有効な免疫療法の開発を目指しています。
方法
樹状細胞ワクチンを用いたがん免疫療法
新しいがん抗原を同定してその免疫ペプチドを利用して樹状細胞ワクチンを作製しています。転移性メラノーマにて樹状細胞ワクチンの投与による延命効果を確認しています。樹状細胞ワクチンは、現在厚生省から認定を受けた細胞加工施設である細胞慮法センターで製造されています。
新しい標的のがん免疫療法(抗体医薬の開発)
新規のがんの標的抗原が同定されればこれに対するモノクロ―ナル抗体を作製して診断や治療に利用することができます。現在ハイブリドーマや1細胞抗体遺伝子クローニング技術を利用して抗体の作製を行っています。
免疫チェックポイント分子を阻害する低分子化合物の開発
静岡県の化合物ライブラリーを活用してPD-1/PD-L1結合を阻害する低分子化合物を同定しています。
免疫チェックポイント抗体治療のバイオマーカー
抗体医薬(抗PD-1抗体等)にて治療を受ける患者さんでは、効果が期待できる方は約30%であり、実際の効果を予測することは難しいとされています。我々は、腫瘍に対する効果のあった患者さんの臨床検体を用いて治療効果を予測できるマーカーを探索する研究を行っています。
業績
転移性メラノーマや悪性グリオーマ症例を対象に施行した樹状細胞ワクチンの臨床試験(静岡がんセンター細胞療法センターが細胞加工施設として厚生省から認定を受ける)