放射線治療のご案内

対象とする疾患や担当領域

・放射線治療の対象となる悪性腫瘍全般

主な照射方法

主な治療法

神経膠腫では、その悪性度や腫瘍の広がりに応じて手術や抗がん剤治療との併用をおこないます。放射線治療による正常臓器の耐容線量を考慮した安全な治療をめざし、必要な患者さんではIMRTを実施しています。悪性リンパ腫では、放射線治療は、薬物療法と並ぶ根治治療であり、30~40グレイ程度の全脳照射をおこなうのが標準です。聴神経腫瘍や下垂体腺腫といった良性腫瘍に対する放射線治療も実施しています。いずれの場合も、患者さん個々の機能や合併症に配慮した治療をこころがけています。

頭頸部

頭頸部領域のがんは多種多様で、その病態や放射線治療に対する感受性も様々です。放射線治療は声門がん、上咽頭がんなどに対する根治治療としてだけでなく、口腔がんなどで手術を行った場合の術後補助療法、根治が困難な場合の症状緩和目的に行っています。どの治療をどのタイミングで行うかは多職種合同のカンファレンスを通じて、がんの種類や病期・年齢・全身状態・社会的背景を考慮し、患者さんごとに検討、決定しています。
頭頸部の放射線治療は臓器温存という利点がある反面、唾液腺障害等のQOLに影響する有害事象も発生するため、近年ではIMRTや陽子線治療を用いてこれらの有害事象の低減に取り組んでいます。

食道

食道がんでは内視鏡治療の適応となる症例を除いたⅠ〜Ⅳ期の患者さんを対象に放射線治療を行っています。根治的な放射線治療を行う場合には患者さんの年齢・全身状態・病期等を考慮し、抗がん剤の併用、照射範囲、照射線量を決定します。また根治治療が難しい患者さんについても食事の通過障害を改善する目的で放射線治療を行っています。

乳腺

早期乳がんで乳房温存手術を選択された患者さんについては、原則として乳房温存手術後に術後放射線治療が行われています。また局所進行乳がんで乳房切除術が行われた患者さんについては、リンパ節転移個数が多いなど局所・領域リンパ節再発リスクが高い場合には術後放射線治療を行う必要があります。当院では乳腺外科との合同検討会を定期的に開催して、乳房温存手術、乳房切除術が行われた個々の患者さんについて、年齢、病気の広がり、手術前の術前治療内容、手術病理標本の所見などを考慮して放射線を照射する範囲、線量などを決定しています。

非小細胞肺がんのI期では手術療法が標準ですが、高齢者や合併症によって手術ができない、あるいは危険性が高い患者さんでは定位放射線治療がおこなわれることもあります。これによって8割以上の局所制御を得ることが可能です。胸部のリンパ節転移(肺門・縦隔)がある場合には、60グレイ・30回程度の胸部放射線治療をおこないます。全身状態が良好な患者さんでは化学療法と併用療法をおこないます。限局期の小細胞肺がんにおいても、化学療法と胸部放射線治療の併用療法をおこないます。1日2回治療をおこなう方法を用いることが標準です。局所進行期の放射線治療では、強度変調放射線治療を導入しています。
非小細胞肺がんのⅠ-Ⅲ期では陽子線治療も行っています。

婦人科

子宮頸がんの扁平上皮癌は手術可能なⅠB期、Ⅱ期については患者さんの治療選択に基づいて治療を行っています。放射線治療を選択された場合には、外照射と小線源治療の組み合わせにより治療を行い、病期により抗がん剤の同時併用を行います。より進行したⅢ期以上の場合は抗がん剤と外照射+小線源治療の併用で治療を行うことが原則です。
腟がんは手術療法が困難な場合が多く、子宮頸がんの治療に準じて放射線治療を行います。子宮体がんの治療は、手術を行うことが標準的ですが、年齢や合併症で手術が適していない患者さんには外照射+小線源治療の組み合わせによる根治的な放射線治療を行います。

前立腺

前立腺がんの外照射は低リスク群から骨盤リンパ節転移を有するケースまで幅広く根治治療の対象として実施しています。中間リスク以上では内分泌療法の併用を原則としており、高リスク群では骨盤リンパ節領域の予防的な照射も行っています。患者さんの年齢や全身状態等も考慮に入れたうえで適切な照射範囲、線量を選択し3次元原体照射やIMRT(強度変調放射線治療)、陽子線治療を実施しています。ヨウ素125シード線源を用いた密封小線源永久挿入療法は低リスク群と一部の中間リスク群の患者さんを対象に泌尿器科と共同で行っています

骨、軟部腫瘍

整形外科、小児科などと検討会を開催して骨、軟部組織肉腫の個々の患者さんについて、QOLなどを考慮しながら治療方針を決定します。放射線治療は手術可能なケースでは手術範囲の縮小を図る、局所再発を予防する目的で、一方手術不能のケース症例では根治を目的に行われます。たとえば四肢原発例では、患肢を切断しないで根治達成を図ります。また手術が困難な骨盤部・後腹膜・傍脊椎原発例の場合も、より強度の高い治療をより安全に行う目的で、抗がん剤(全身、動注)と最先端の高精度放射線治療(3次元原体照射・IMRT・陽子線治療)などを適切に組み合わせて治療を行っています。

緩和照射

放射線治療は腫瘍による症状緩和に有効な場合が多く、大切な役割を果たしています。骨転移による痛みや神経の麻痺、脳転移による症状、気道の圧迫による呼吸困難、腫瘍からの出血など様々な症状の改善に用いられます。この場合の治療は、治療開始から1~2週間以内の短期間に治療を完了させることが殆どです。
 一方、転移病巣が少数個に限られる場合や、脊椎転移病巣へ強度を高めた放射線治療が必要な場合には、定位放射線治療がおこなわれることもあります。

放射線・陽子線治療センター

放射線・陽子線治療センター