レジデント向け情報

研修の特徴

 近年、消化器がんに対する薬物療法の発展はめざましく、消化器の各臓器においても非常に複雑になってきています。消化器癌領域においても1次治療より免疫チェックポイント阻害剤が承認され、標準治療の選択肢も大きく増えました。しかしながら、患者さんの状態を適切に判断し、適切なタイミングで、これらの薬剤を投与できなければ、患者さんに最大限のベネフィットを与える事ができません。これを実現するには、多くの知識と経験が必要となります。当科のがん薬物療法の件数は非常に多く(図1図2)、消化管がん、胆膵がん、頭頸部がんまでカバーしており、様々ながん腫、臓器特有の病態、有害事象が経験できるため、治療技術を磨くことが出来ます。薬物療法だけにとどまらず、複数科と連携し、内視鏡的処置、IVR、放射線治療や終末期の緩和治療に至るまで全職種を含めたチーム医療をベースとして消化器悪性腫瘍の総合的なマネジメントも学ぶことができます。また、当院は全国で12ヵ所しかないがんゲノム医療中核拠点病院の一施設に指定されており、毎週エキスパートパネルが開催され、がんゲノム医療を積極的に実践しています(図3)。

 また、がんセンターの使命として日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)、西日本がん研究機構(WJOG)、SCRUM-Japanなどの多施設共同医師主導臨床試験、国内外の第Ⅰ相から第Ⅲ相までの新薬治験、製造販売後臨床試験、特定臨床研究など、多くの臨床研究に参加し、新規治療薬や治療方法の開発に積極的に参加しています(治験・臨床試験一覧へ)。
 研修終了後には施設でがん薬物療法や緩和ケアなど包括的がん診療のリーダーシップをとり、がん臨床研究についても日本の中核を担うような人材の育成を目指しています。

 *消化器内科では開院当初より抄読会(30分程度)を行っています。当科のみならず、生物統計家や食道外科の医師らも参加し持ち回りで最新の情報から日常臨床での疑問などについてプレゼンテーション、ディスカッションを行っています。ASCO、ESMOなど国際学会直後は速報という形で情報共有を行っています。

研修コースと研修内容

当科ではスタッフとペアになり診療を行います。研修内容や研修期間(3か月~3年)はレジデントの希望や研修の目的にあわせて柔軟に対応しています。消化器内科だけでなく、内視鏡科、病理診断科、画像診断科、感染症内科、緩和医療科など、他科のローテートも可能で、日本臨床腫瘍学会の認定資格である「がん薬物療法専門医」や、日本消化器病学会認定の「消化器病専門医」の取得も可能です。医師レジデント3年コースや医師チーフレジデントの場合には、スタッフサポートのもと、外来診療を行うことも可能です。がんセンターでレジデントが外来診療を実施できる施設は少なく、当科の特色と言えます。

研究面では、スタッフ指導のもと、臨床研究の基本となる後方視的研究から取り組み、その後は多施設での研究や医師主導治験の立案、計画、実施へ繋げていきます。また、研究成果については、国内・海外での主要な学会で発表し、論文作成まで行っています(業績一覧へ)。国内・国際学会への参加については、参加費・旅費のサポートも行っています。

 当院は静岡東部の長泉町にあります。都心へのアクセスは良好(新幹線で40―60分程度、東京から当院へ通院している先生もいます)、新東名高速道路の長泉沼津ICまで10分程度で、高速道路へのアクセスも非常に良好です。伊豆・熱海・箱根・富士五湖にも近く、休日には観光も楽しめます。お気軽にお問い合わせ下さい。

レジデントの声

西村 在 医師

私は2013年に徳島大学を卒業後、奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科に入局し、頭頸部外科医として研修、耳鼻咽喉科・頭頸部外科専門医を取得しました。その後、がん薬物療法を学ぶため、2022年から3年間、静岡がんセンター消化器内科でレジデントとして過ごす機会に恵まれました。
 最初の2年間はがん薬物療法修練医レジデントとして、消化器、呼吸器、血液、乳腺の4診療科をローテーションさせていただきました。どの科でも濃厚な臨床経験だけでなく、消化器と呼吸器ではそれぞれに学会発表の機会を頂き、どちらの研究もご指導のもと英語論文を執筆することができました。(実は、私は静がんに来るまで、論文を書いたことはありませんでした。)最後の1年はチーフレジデントとして、指導医に指示を仰ぎながら自身で治療方針を決める外来診療を経験しました。
 もし内科医以外でも腫瘍内科、がん薬物療法に興味をお持ちであれば、是非静岡がんセンター消化器内科での研修をオススメします。

津軽 開 医師

私は2014年に慶應義塾大学医学部を卒業後、4年間の内科研修を経て2018年に慶應義塾大学病院消化器内科に帰室しました。2019年からは同学の医学研究科がんプロフェッショナル養成プラン大学院コース(がんプロ)に入学し、プログラムの一環であるハイボリュームセンターへの研修期間として、2022年4月から1年間、静岡県立静岡がんセンターのレジデントとして研修させていただきました。
 1年間と短い期間ではあったものの、がん診療に特化した機関で、最先端を牽引するスタッフの先生方のご指導の下、多彩な症例を経験し、多くの臨床研究や治験に触れることで治療開発の最先端について体感することができました。このような経験は、がん診療以外の多くの疾患を受け入れる必要がある大学病院ではなかなかできないことではないかと思います。自身で行っている臨床研究に関しても、スタッフの先生方が快く協力してくださり、さらに質の高いものにすることができました。また、このような日本有数のハイボリュームセンターでの研修が、日々雄大な富士山を間近で臨みながら、程よく落ち着いた地域で受けられたことも、個人的にはとても良い点でした。
 貴重な研修期間でしたが、診療面、及び研究面の双方において、静岡がんセンターを選択させていただいてとてもよかったと思っております。ご指導ご支援、誠にありがとうございました。

川口 大貴 医師

私は2019年に日本大学を卒業後、静岡市立静岡病院で研修を行い、今回、後期研修の関連プログラムとして静岡県立静岡がんセンターでレジデントとして研修をさせていただきました。
 医師としての経験も短く、がんに関してはほとんど診療を行うことがなかった状況でした。就職当初はわからないことだらけで、ついていくのに精一杯でしたが、毎日新しい知識や診療における重要な点を教えてくださり、日々少しずつではありますが成長できたと感じております。診療だけでなく、研究や論文執筆、学会発表など貴重な経験もたくさんさせていただきました。
 1年間という短い時間ではありましたが、がん診療専門施設で最先端の診療に触れる機会を得ることができとても充実した時間を過ごすことができました。たくさんのご指導を本当にありがとうございました。

消化器内科

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