研究活動

主な研究内容

1)ロボット手術(ダヴィンチ手術)の安全性と有効性に関する研究

 静岡がんセンターでは2011年より全国に先駆けて直腸がんに対するロボット手術を自由診療として導入し、ロボット手術の安全性と有効性を評価する研究を行ってきました。2018年からは日本国内において直腸がんに対するロボット手術を保険診療として行うことが可能となっています。
 より多くの大腸がんに対するロボット手術の適応拡大を目指して、結腸がんに対するロボット支援下結腸切除術の安全性に関する他施設共同研究を行っています。また、直腸がんに対するさらなる有効性を評価するため、進行直腸がんに対するロボット支援下直腸切除術の腫瘍学的妥当性に関する多施設共同研究(VITRUVIANO trial)を行っています。

2)直腸がんにおける標準治療確立のための研究

 直腸がんの治療成績を改善するための研究は重要な課題であり積極的に取り組んでいます。下部進行直腸がんに対する側方リンパ節郭清の意義に関するランダム化比較試験(JCOG0212)により、側方リンパ節郭清を行うことにより、局所再発が減少することが報告されました。現在では、側方リンパ節転移に関する術前診断能向上を目的とする観察研究(JCOG1410-A)や、MRI診断能に関する研究を行っています。さらに、直腸癌治療における側方郭清に関する多施設前向き観察研究、下部進行直腸がんに対する術前治療と側方リンパ節郭清の最適化に関する国内多施設共同試験、直腸がん術後の後遺症である術後性機能障害に関する多施設前向き観察研究も行っています。

3)結腸がんにおける標準治療確立のための研究

 結腸がん手術においては、腫瘍とリンパ節を適切に切除することが重要です。リンパ節転移の広がりを調査することによる至適腸管切離長についての研究、右側結腸がんのリンパ節郭清に関する多施設観察研究、大腸がん切除の適切な手順に関する研究(JCOG1006)に取り組んでいます。
 また、より進行した結腸がん対する治療成績の向上は今後の課題であり、術前化学療法と手術を組み合わせた集学的治療として、局所高度進行結腸がんに対する術前mFOLFOX6 療法と術前FOLFOXIRI 療法のランダム化第II 相試験(JCOG2006)を行っています。

4)大腸がんの術後補助化学療法(手術に併せ行う再発予防のための治療)に関する研究

 大腸がんの術後補助化学療法の有効性に関する多数の研究に取り組んでいます。現在では、Stage III治癒切除大腸がんに対する術後補助療法としてのアスピリンの有用性を検証する二重盲検ランダム化比較試験(JCOG1503C)、「再発リスク因子」を有するStage II 大腸がんに対する術後補助化学療法の有用性に関するランダム化第III 相比較試(JCOG1805)を行っています。

5)再発がん、遠隔転移(肝臓転移、肺転移など)を伴う進行がんに関する研究再発がん、遠隔転移(肝臓転移、肺転移など)を伴う進行がんに関する研究

 再発がんや、手術療法単独では治療困難な進行癌においては、手術に加えて化学療法や放射線療法と組み合わせた集学的治療が重要となります。
 直腸がん局所再発に対する治療戦略は重要な課題であり、術前化学放射線療法の意義に関するランダム化比較第III 相試験(JCOG1801)を行っています。
 また、化学療法にて消失した大腸がん肝転移病変に対するMRIの術前診断能の妥当性に関する研究(JCOG1609)、 高齢者における切除不能進行大腸がんに対する全身化学療法に関するランダム化比較第Ⅲ相試験(JCOG1018)、治癒切除不能進行大腸がんの原発巣切除における腹腔鏡下手術の有用性に関するランダム化比較第Ⅲ相試験(JCOG1107)を行っています。
 治癒切除不能進行大腸がんに対する原発巣切除の意義に関するランダム化比較試験(JCOG1007)では、症状のない切除不能大腸がんの患者さんに対しては、これまで原発巣切除が多くされていましたが、原発巣を切除せずに化学療法を行うことが標準治療となることが明らかにされました。
 大腸がん肝転移による肝切除後の術後補助化学療法の標準治療の検証(JCOG0603)では、大腸がんの肝臓への転移に対する肝臓切除後の患者さんに補助化学療法を一律には推奨されないことが明らかにされています。

6)がんゲノム医療に関する研究

 静岡がんセンターでは、手術で取り出したがん組織や血液の細胞から遺伝子解析を行い、新しいがん診断・治療技術の開発につなげるプロジェクトHOPEを実施しており、大腸がんの個別化医療に関する研究を積極的に取り組んでいます。
 大腸がんの個別化治療、再発マーカー、治療効果予測に有用性が期待されているリキッドバイオプシー(血液中循環腫瘍DNA(ctDNA)など)を用いた研究を行っています。根治的外科治療可能の結腸・直腸癌を対象としたレジストリ研究(GALAXY試験)、切除可能な大腸癌肝転移及びその他の遠隔臓器転移に対する遺伝子異常に基づく個別化周術期治療の開発を目的とした多施設共同研究(PRECISION試験)を行っています。

7)その他

 上記以外にも、肛門管がんに対する化学放射線療法(JCOG0903)や、肛門管癌の病態解明とStagingに関する研究、虫垂癌に関する研究に取り組んでいます。
 大腸癌研究会による全国大腸がん登録事業に参加しています。

尚、当院で行われている試験や治験の詳細については、「静岡がんセンターで実施している臨床試験・治験の情報」のページ、または「倫理審査委員会で実施情報の公開が必要とされた研究の情報」のページをご覧下さい。

関連情報

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大腸外科

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