よせられた質問及び回答集(がん医療を受けるときー必要な知識と心構え)

2005年度 市民公開講座第1回(2005年10月19日実施)

 インフォームドコンセント、セカンドオピニオンと言う言葉はよく耳にするようになりましたが、その実施にあたっては医療機関による格差がまだまだ大きいと思います。格差是正に向けての取り組みはあるのでしょうか?
 他の医療機関の状況についてコメントできるだけの情報は持ち合わせていませんが、個々の機関、あるいは医師一人ひとりによって対応は様々だと思います。最近、積極的にインフォームド・コンセント、セカンド・オピニオンに対応することを、患者さんへの説明文書等に明記する機関が増えています。インフォームド・コンセントについては、患者さんが気づきにくい形で、すなわち、かなり医師が断定的に治療方針を説明し、医師はインフォームド・コンセントを提示したつもりだが、患者さんはその説明がなかったと誤解することもあるようです。セカンド・オピニオンについては、医師の側から、話を持ちかけることは少ないので、患者さんの側から希望を伝えるのが一般的です。現在、厚生労働省は、地域がん診療拠点病院の整備を進めており、静岡県でも、静岡がんセンターを含む4病院が指定されました。こういう病院に医療相談室を充実させ、セカンドオピニオンに対応させるという計画が進行中です。
 他の医療機関で診断を受けた病気について、静岡がんセンターでの診療を希望する時には、セカンドオピニオンを受ければよいのでしょうか?
 セカンド・オピニオンをきっかけに、別な病院で治療を受けるという考え方は誤りです。セカンド・オピニオンは、治療はあくまで、現在の担当医にお願いするが、現在の担当医の治療方針が正しいかの判断を他の専門家に問うという手法です。従って、静岡がんセンターにセカンド・オピニオンでお出でいただいた患者さんは、原則として、紹介元の病院に意見を持参し、紹介元の病院で治療を受けて頂きます。最初から、静岡がんセンターでの治療を希望する場合、あるいは、セカンド・オピニオンの結果、静岡がんセンターでの治療を希望される場合には、紹介元の病院の担当医に、静岡がんセンターに対する診療依頼書を作成してもらい、受診して頂くことになります。
 告知に関してお聞きします。私自身ががんを患った場合、本人だけへの告知ではだめでしょうか? また、家族ががんを患った場合、本人への告知は必要でしょうか?
 がんの告知は、様々な状況下でなされます。現在の医療では、告知の対象者は、原則として、患者さん本人です。本人が希望した場合には、家族にその内容が伝えられます。がんとの闘いの中で、家族の励ましは大切なので、ほよどのことがない限り、本人と共に、家族の方にも告知をさせて頂くことを多くの医師が求めていると思います。生命倫理学的に厳格な医師であれば、家族に告知する前に、患者さん本人に、家族に伝えて良いかを確認します。逆に、家族ががんにかかった場合には、本人に告知をすることが原則です。様々な理由で、本人への告知が困難なこともあります。状況に応じて、医師を中心に相談されることをお薦めします。
 家族の者でなかなかタバコをやめられない者がおります。食生活も自分でコントロールしません。どうしたら自覚してくれるのでしょうか? 特にタバコはどうしたらやめられますか?
 タバコは、ニコチンでやめられなくなった状況が作り、有害物質を吸い込むという嗜好品です。従って、普通の嗜好品よりも、大変やめにくいのは事実です。しかし、今は、昔のように精神論でやめねばならないということではなく、禁煙のためのニコチンパッチやガムが作られていて、格段に禁煙しやすくなっています。本人に、禁煙外来の受診を勧めたらいかがでしょうか? また、喫煙の害を、ねばり強く訴えることも大切です。ヘビースモーカーの2人に1人は、タバコの害で若死にします。現在、静岡県下の小学5,6年生全員に、防煙教育のための下敷きを配布しています。周りにそういう方がおられたら、見せて頂くことも一つの方法です。講座の担当者に申し出て頂ければ、下敷きをおわけします。食生活については、確かに、内容の調整になるので難しさは増します。最近、発表された厚生労働省の食生活ガイドラインは参考になります。
 陽子線治療の個人負担は300万円かかると聞きましたが、保険は使えないのでしょうか? また、高額医療の対象になるのでしょうか?
 残念ですが、陽子線治療は健康保険や高額医療費減免措置(高額療養費制度)の対象にはなっていません。従って、全額が自己負担になります。静岡県内の銀行が、この治療のためのローンを組み、静岡県も低所得者のための利子補給を実践しています。

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