よせられた質問及び回答集(がんの顕微鏡診断-ミクロの世界)

2005年度 市民公開講座第6回(2006年2月25日実施)

 一つの臓器中、いろいろな種類のがんが発生することはあるのですか?
 なくはないです。ひとつの臓器で異なった時期に異なった種類のがんが発生する可能性はあります。同時期の場合は、きわめてまれです。
 上皮内がんは細胞の性質自体は良性だと思っていました。基底膜を越えるか越えないかの違いで性質は違うのでしょうか?
 上皮内がんは、細胞の性質自体は良性ではありません。しかし、がんの時期が非常に早期だということです。すなわち、基底膜を越えないうちは、がん細胞の数が増えても体に広がらないでその場にとどまります。基底膜を越えると、急に浸潤という形で体に広がり始めるわけです。したがって、基底膜を越えるか越えないかで、がんの性質は大幅に変わるといってよいでしょう。
 胃がんの高分化腺がんと印環細胞がんとではどちらが悪性度が高いでしょうか? また、再発率が高いのはどちらでしょうか?
 高分化腺がんよりも印環細胞がんのほうがたちが悪いです。従って、再発の確立も高くなっています。
 がんの中には、増殖に「ホルモン」が関与する種類があると聞きましたが、もう少し詳しく教えてください。
 特に、よく知られているのは、前立腺がんです。前立腺がんだと男性ホルモンによって増殖しやすくなっています。男性ホルモンが強く働くと増殖しやすく、女性ホルモンを投与すると、がんの増殖は抑制されることが多いです。しかし、そういうことがあまりおこらないホルモンに依存しない前立腺がんもあります。このことは、乳がんについても似たようなことがわかっています。
 転移が発見されても、原発巣がわからない場合があるのでしょうか?
 がんには、原発巣が容易に見つかることが多いのですが、転移がいくつかの部位に発見されてもその原発巣が不明なことがまれにあります。一つは、画像ではわかりにくい場所であること、いまひとつは、原発巣が非常に小さいことなどが考えられます。しかし、死亡に至って、病理解剖で全身を調べてもわからない場合もきわめてまれにあります。
 再発したがんの組織型が変化することはありますか?
 大きく変わることは少ないです。しかし、よりたちが悪くなる可能性はあります。
 病理診断に使用された組織の標本(スライドガラス)は永久保存されるのでしょうか?
 その通りです。50年後でも大丈夫です。少なくとも、その患者さんが亡くなるまでは保存されています。

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