よせられた質問及び回答集(抗がん剤治療の基礎知識)

2005年度 市民公開講座第5回(2006年2月11日実施)

 日本で抗がん剤治療の標準治療が普及していない理由はどのような事が考えられますか?また、標準治療を実施している病院をどのような方法で知ることができますか?
 抗がん剤治療は手間がかかる割に、収支が悪いため、病院経営の点からみると、病院全体としての抗がん剤治療をサポートするシステムが構築しておらず、医師の個人的な努力にまかされていることが大きな原因の一つであると思われます。また、このような状況では、残念ながら日本では外科の先生がお忙しい手術の合間で抗がん剤治療を行っておられることが多いため、標準治療よりも副作用と手間の少ない治療を選ばれる傾向があるようです。さらに、米国では標準治療を行わない医者が訴えられた場合には、裁判にも負けるでしょうが、日本では「お医者様はいいことをしてくれるに違いない」とまかせきりになっていることも影響していると思います。標準治療をしているかどうかは病院単位で異なるのではなく、診療科または担当医師によって異なります。まずは最初に見ていただいた先生に「標準治療かどうか」を確認されて、標準でなかった場合には「標準治療をされている医師」を紹介いただくことがいいかと思います。
 日本では、標準治療を普及させる為にどのようなことがなされていますか?
 日本臨床腫瘍学会などが、抗がん剤癌治療専門医の育成、認定などの努力をしております。
 標準治療のガイドラインは誰でも入手することができますか?
 米国NCCNのガイドラインはinternetで入手可能です。(英語で記載されておりますが)。日本語では、胃癌学会、大腸癌学会などからもガイドラインがだされていますが、あまり具体的な記載のされかたではないと思われます。
 抗がん剤治療で副作用の出現状態と治療効果と関係がありますか?
 多くの抗がん剤では、副作用のでかたと効果との間には明らかな関係はありませ
  ん。
 白血球が減少すると治療を中止しなくてはならない、休めば白血球はもとに戻るとの事ですが、事前に減少しないように患者にできることや、お薬はありますか?
 認可されているお薬は、厚生労働省がある病気に対して使用を許可したものであり、その費用の一部が保険で支払いがなされます。逆に、認可されていないお薬は、日本人での効果安全性が確認されていないために、一般的には使用しないのが原則です。ただし、海外からの情報や日本で進行中の臨床試験での最新の情報を入手した場合には、未承認薬でも使いたいと思うお薬は少なくありません。上記の原則と使いたい気持ちのバランスが担当医によって異なります。また、認可されていないお薬を使用した場合には、保険から病院に支払いされないため、病院にとって赤字となってしまいます。赤字を覚悟でも使用してもいいという病院と、赤字になるので保険適応以外の使用を許可しない病院があることは、やむを得ないと思います。さらに、患者様が自己負担でもいいから使いたいとおっしゃっても、自費と保険の混合診療の問題があり、簡単ではありません。
 抗がん剤治療に関する悩みをセカンドオピニオンで確認したり相談するには、どのようにしたら良いでしょうか?
 担当の先生にセカンドオピニオンを聞きたいから紹介状を書いてほしいとおっしゃればいいと思います。ただし、治療開始前のセカンドオピニオンにしていただいた方が有効です。我々も、すでに治療を開始された患者様に対してセカンドオピニオンをご提示しますが、よほどひどい治療を受けていない限り、「この治療は良くない」、「私の治療の方が優れている」と言うことはできません。一旦同意されてから治療が開始されたのであれば、その治療の効果と副作用が確認されるまで、担当医を信頼して治療を続けていただくことをお勧めいたします。

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