EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける化学放射線療法(CCRT)後のデュルバルマブ維持療法が有効である可能性が示唆(NEJ063研究)

2025年6月17日
呼吸器内科部長 釼持広知

 本研究は、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能Stage III非小細胞肺がん患者に対して、CCRT後にデュルバルマブを投与することの有効性と安全性を検討した多施設共同後ろ向き観察研究(NEJ063研究)です。全国48施設から162例のデータを収集し、年齢、臨床病期、性別を共変量とした「傾向スコアマッチング」という手法を用いて解析を行いました。その結果、デュルバルマブを投与した群はデュルバルマブを投与しなかった群と比較して無増悪生存期間が有意に良好であり(中央値26.8か月 vs. 11.1か月;ハザード比=0.52 [95%信頼区間、0.33–0.83];P値=0.05)、重篤な有害事象の頻度に有意差は認められませんでした(23.5% vs. 20.9%;P値=0.87)。一方で、デュルバルマブ投与終了後6か月以内にオシメルチニブを投与した場合、6カ月以降にオシメルチニブを投与した場合と比較して肺臓炎の頻度が有意に高く(17.6% vs. 0%;P値=0.048)、デュルバルマブ投与後早期のオシメルチニブ投与には肺臓炎のリスクに留意する必要があります。2025年5月に、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能Stage III非小細胞肺がん患者に対して、CCRT後のオシメルチニブの維持療法が本邦で承認されたこともあり、本研究結果の重要性は増しています。これまで免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しいと考えられていたEGFR遺伝子変異陽性肺がんにおいて新たな知見となる可能性があり、今後の治療戦略を検討する上での貴重なデータとなります。

▶掲載論文
Durvalumab after concurrent chemoradiotherapy for sensitizing epidermal growth factor receptor-mutant stage III non-small cell lung cancer: A Japanese Real-World data analysis. Lung Cancer 2025 May 27:205:108597. doi: 10.1016/j.lungcan.2025.108597. 

上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性Stage III非小細胞肺がんに対する同時化学放射線療法(CCRT)後のデュルバルマブ投与の有用性・安全性の多施設共同後ろ向き観察研究(NEJ063研究)

Toshiya Fujisaki, Eisaku Miyauchi, Gen Kida, Yu Miura, Kana Watanabe, Hironori Ashinuma, Motohiro Tamiya, Hajime Kikuchi, Daisuke Arai, Satoshi Takahashi, Ken Masuda, Ayako Takigami, Yoshiaki Nagai, Taichi Miyawaki, Yukari Tsubata, Akira Nakao, Ken Masubuchi, Kazuhiro Nishiyama, Satoshi Watanabe, Satoshi Morita, Makoto Maemondo

筆頭著者 藤崎 俊哉
(静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科)
研究体制 研究責任者(PI):宮内 栄作(東北大学病院)
研究組織:北東日本研究機構 [North East Japan Study Group(NEJSG)]
共同著者の所属施設 静岡県立静岡がんセンター(医療法人立川メディカルセンター 立川綜合病院、新潟大学大学院医歯学総合研究科))
東北大学病院
埼玉県立がんセンター
埼玉医科大学国際医療センター
宮城県立がんセンター
千葉県がんセンター
大阪国際がんセンター
JA北海道厚生連 帯広厚生病院
済生会宇都宮病院
東京医科大学病院
県立広島病院
自治医科大学附属病院
自治医科大学附属さいたま医療センター
順天堂大学医学部附属順天堂医院
島根大学医学部附属病院
福岡大学医学部
群馬県立がんセンター
聖マリアンナ医科大学病院
新潟大学医歯学総合病院
京都大学

呼吸器内科

呼吸器内科