【掲載論文】切除不能進行・再発大腸がんの後方治療において、薬剤の使用順序が生存期間に与える影響は限定的である可能性が示唆

2026年10月30日
消化器内科部長 山﨑 健太郎
医長 川上 武志(筆頭著者)  

 切除不能な進行・再発大腸がんの後方治療(標準的な抗がん剤治療を受けた後の治療)では、レゴラフェニブ(REG)、トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)、およびFTD/TPIにベバシズマブ(BEV)を併用した治療が標準的に用いられています。しかし、これらの薬剤をどのような順序で使用することが最善かは明らかではありませんでした。

 そこで、静岡県立静岡がんセンターが研究事務局を務め、全国42施設が参加する多施設共同前向き観察研究(OSERO試験)を実施し、468名の患者さんの治療経過を解析しました。その結果、REGから治療を開始した場合とFTD/TPI+BEVから開始した場合の全生存期間中央値は、それぞれ12.2か月と10.6か月であり、患者背景の違いを調整した解析でも統計学的に有意な差は認められませんでした。一方、FTD/TPI単独で開始した患者さんの全生存期間中央値は7.5か月でした。

 副作用の特徴は薬剤によって異なり、REGでは手足症候群、蛋白尿、高血圧が、FTD/TPIを含む治療では好中球減少や貧血が多く認められました。

 本研究の結果から、REGとFTD/TPI+BEVの両方を使用できる場合には、治療順序が全生存期間に与える影響は限定的である可能性が示唆されました。そのため、それぞれの薬剤の副作用の特徴や患者さんの状態を踏まえ、個々の患者さんに適した治療を選択することが重要と考えられます。

 ただし、本研究は観察研究であり、治療順序の優劣を結論づけるものではありません。また、研究期間中は使用できなかった新たな治療薬であるフルキンチニブを含め、最適な治療戦略については今後さらなる検証が必要です。

▶掲載論文概要

雑誌名 British Journal of Cancer
タイトル A prospective observational study of treatment sequencing with regorafenib and FTD/TPI in metastatic colorectal cancer: The OSERO study
(日本語表記)切除不能進行再発大腸癌における後方治療の前向き観察研究
(略称表記)OSERO study
筆頭著者 Takeshi Kawakami 川上 武志(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科)
責任著者 Oki Eiji 沖 英次(九州大学病院消化器・総合外科)
共同著者 Toshiki Masuishi 愛知県がんセンター薬物療法部
Tetsutaro Hamano P4統計株式会社
Akihiko Chida 慶應義塾大学病院消化器内科
Seiichiro Mitani 近畿大学病院腫瘍内科
Hisateru Yasui 神戸市立医療センター中央市民病院腫瘍内科
Atsushi Ishiguro 手稲渓仁会病院 腫瘍内科
Takayuki Ando 富山大学附属病院 第三内科
Kentaro Sawada 釧路労災病院 腫瘍内科
Kazuaki Harada 北海道大学病院 腫瘍センター
Naoki Takahashi 埼玉県立がんセンター 消化器内科
Shogen Boku 関西医科大学附属病院 がんセンター
Tomomi Kashiwada 佐賀県医療センター好生館 腫瘍内科
Taito Esaki 国立病院機構 九州がんセンター 消化管・腫瘍内科
Ayumu Yoshikawa 北見赤十字病院 消化器内科・腫瘍内科
Keiji Sugiyama 国立病院機構 名古屋医療センター 腫瘍内科
Kouji Yamamoto 横浜市立大学医学研究科臨床統計学
Hironaga Satake 高知大学医学部 腫瘍内科学講座
Satoshi Yuki 北海道大学病院 消化器内科/弘前大学大学院医学研究科 がんゲノム・個別化医療学講座
Kentaro Yamazaki 静岡県立静岡がんセンター 消化器内科
Eiji Oki 九州大学病院消化器・総合外科
掲載日 2026/9/29
URL https://www.nature.com/articles/s41416-026-03620-w
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42811047/

消化器内科

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