【掲載論文】JCOG1611: 遠隔転移を有するまたは再発膵癌に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法/modified FOLFIRINOX療法/S-IROX療法の第II/III相比較試験結果

2026年8月24日
消化器内科(胆膵))部長 石渡裕俊

 他の臓器に転移がある、または手術後に再発した膵がんでは、複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用化学療法が標準治療となっています。最初に行う化学療法(1次化学療法)としては (modified) FOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法があり、共にゲムシタビン単剤療法よりは効果が高いことがわかったため、いずれも国内外のガイドラインで標準療法として推奨されています。一方でこれら2つの治療を直接比較した臨床試験がなく、いずれが優れているか、どのように使い分けたら良いか、についてはわかっていませんでした。また、FOLFIRINOX療法の5-FUをS-1に置き換えたS-IROX療法も数十人の患者さんを対象に行った第1相試験では良好な結果が報告されており、標準療法になりうる治療として期待されていました。

 そこで本臨床試験では、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法よりもmodified FOLFIRINOX療法やS-IROX療法が優れているかを検証する目的で、3つの治療を直接比較しました。その結果、500名以上の患者さんが登録された後に行った中間解析の時点で、modified FOLFIRINOX療法やS-IROX療法が優れている可能性は極めて低く、むしろゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法を受けた患者さんの方が生存期間は長い傾向にあることがわかったため、試験を早期中止し、結果を公表することとなりました。臨床試験グループとしては、1次化学療法としてはゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法を行うべき、と結論づけています。

 本試験は世界で初めてとなるゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法とmodified FOLFIRINOX療法の直接比較を行ったため、結果は国際的にも注目を集め、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のProffered Paper Session(口演)に採択され、発表を行いました。また、今回臨床腫瘍学の領域で最も権威のある雑誌の1つであるJournal of Clinical Oncology (JCO) にて出版されるに至りました。本試験結果によって少なくとも日本人における1次化学療法の交通整理が行われることや、今後の治療開発の基盤となることが期待されています。

掲載論文

雑誌名 Journal of Clinical Oncology
タイトル Modified Fluorouracil, Leucovorin, Irinotecan, and Oxaliplatin or S-1, Irinotecan, and Oxaliplatin Versus Nab-Paclitaxel + Gemcitabine in Metastatic or Recurrent Pancreatic Cancer (GENERATE, JCOG1611): A Randomized, Open-Label, Phase II/III Trial
JCOG1611: 遠隔転移を有するまたは再発膵癌に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法/modified FOLFIRINOX療法/S-IROX療法の第II/III相比較試験
筆頭著者 Akihiro Ohba 大場 彬博(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科)
責任著者 Makoto Ueno 上野 誠(神奈川県立がんセンター 消化器内科)
共同著者  Masato Ozaka がん研有明病院 肝胆膵内科
 Junki Mizusawa 国立がん研究センター中央病院 JCOGデータセンター
 Takuji Okusaka 国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科 
 Satoshi Kobayashi 神奈川県立がんセンター 消化器内科 
 Taro Yamashita 金沢大学医薬保健研究域医学系 消化器内科学 
 Masafumi Ikeda 国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 
 Ichiro Yasuda 富山大学 内科学(第三) 
 Kazuya Sugimori 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 
 Naoki Sasahira がん研有明病院 肝胆膵内科 
 Kenji Ikezawa 大阪国際がんセンター 肝胆膵内科 
 Ikuya Miki 兵庫県立がんセンター 消化器内科 
 Naohiro Okano 杏林大学医学部 腫瘍内科 
 Nobumasa Mizuno 愛知県がんセンター 消化器内科部 
 Masayuki Furukawa 九州がんセンター 肝胆膵内科 
 Hirofumi Shirakawa 栃木県立がんセンター 肝胆膵外科 
 Yusuke Sano 国立がん研究センター中央病院 JCOG運営事務局 
 Hiroshi Katayama 国立がん研究センター中央病院 JCOG運営事務局 
 Junji Furuse 神奈川県立がんセンター 消化器内科 
 Makoto Ueno 神奈川県立がんセンター 消化器内科 
Hepatobiliary and Pancreatic Oncology Group of the Japan Clinical Oncology Group (JCOG-HBPOG)
掲載日 2025/7/28
URL https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.24.00936
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40720715/

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