【掲載論文】HPV陽性中咽頭癌に対する3剤併用術前化学療法による術後放射線治療回避と低侵襲手術の可能性:多施設共同第II相試験

2026年10月1日
消化器内科(頭頸部)部長 横田知哉

1、研究の背景

 近年、ヒト・パピローマウイルス(HPV)感染陽性の中咽頭癌が若年者を中心に国内外で急増しています。HPV陽性中咽頭癌は通常、手術や化学放射線療法によって治療されますが、いずれの治療を行っても予後良好である一方で、手術や化学放射線療法はいずれも患者さんの負担が大きい治療であるため、特に若年者では癌の治癒が得られても治療後長期間にわたって生活の質(QOL)が低下することが課題でした。
 私達は、局所進行切除可能HPV陽性中咽頭癌を対象として、術前化学療法(TPF療法)を先行することでその後の低侵襲手術と術後放射線治療の回避を目指す新たな低侵襲治療を、国内多施設共同・前向き第2相試験によって検討しました。

2、研究の方法と結果

 対象は、手術を先行した場合に、①遊離組織再建などの高侵襲手術が必要、②術後放射線治療が必要、③術後に嚥下機能が低下する、のいずれかが見込まれる患者とし、国内9施設より33例が登録されました。術前化学療法後に93.8%で経口手術が施行され、遊離組織移植や気管切開をともなわない低侵襲手術の施行割合は81.25%でした。原発巣とリンパ節転移のいずれも病理学的完全奏効(がん細胞の完全消失)を達成した割合は65.63%で、腫瘍組織内におけるハイリスクHPV mRNAが完全に消失した割合は63.3%でした。また術後照射施行割合は9.4%でした。また、EORTC QLQ-C30やQLQ-HN43におけるほとんどのQOLスコアは治療後1年以内に回復していました。

3、まとめと今後の展望

この研究により、NACを先行することにより、その後の低侵襲手術と術後照射の回避が見込まれることが示唆されました。術前化学療法を先行する治療戦略は、HPV陽性中咽頭癌に対する新たな低侵襲治療として期待され、より大規模な検証試験の結果が待たれます。

▶掲載論文概要

雑誌名 British Journal of Cancer
タイトル Neoadjuvant triplet chemotherapy enables radiotherapy avoidance in human papillomavirus-associated oropharyngeal cancer: a multicentre Phase II trial
(日本語表記)HPV陽性中咽頭癌に対する3剤併用術前化学療法による術後放射線治療回避と低侵襲手術の可能性:多施設共同第II相試験
(略称表記)HIPPOCRATES
筆頭著者 Tomoya Yokota 横田 知哉(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科(頭頸部))
責任著者 Tomoya Yokota 横田 知哉(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科(頭頸部))
共同著者  Toyonori Tsuzuki 愛知医科大学 病理診断科
 Tetsuro Onitsuka 三島中央病院 頭頸部外科
 Akira Iizuka 静岡県立静岡がんセンター研究所 免疫治療部
 Yohei Ouchi 香川大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
 Terushige Mori 香川大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
 Kiyoaki Tsukahara 東京医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
 Kenji Hanyu 東京医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
 Takashi Mukaigawa 静岡県立静岡がんセンター 頭頸部外科
 Torahiko Nakashima 九州医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
 Hideoki Uryu 九州医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
 Go Omura 国立がん研究センター中央病院 頭頸部外科
 Hiromu Nakamura 愛知医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
 Hirokazu Uemura 奈良県立医科大学附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科
 Daisuke Nishikawa 愛知県がんセンター 頭頸部外科部
 Satoshi Kano 北海道大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
 Yasuto Akiyama 静岡県立静岡がんセンター研究所 免疫治療部
 Tsuyoshi Onoe 静岡県立静岡がんセンター 放射線・陽子線治療センター
 Shunsuke Oyamada NPO法人JORTC データセンター
 Takuhiro Yamaguchi 東北大学大学院 医学統計学分野 山口 拓洋
掲載日 2026/9/5
URL https://doi.org/10.1038/s41416-026-03610-y
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42701122/

消化器内科

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