ゲノム医療支援室
目次
ゲノム医療支援室では、「がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)」を用いて、がん細胞に起きている遺伝子の変化(遺伝子変異)を調べ、医師や遺伝子の専門家などで構成されるエキスパートパネルを開催し、がんの特徴に合わせた治療法を提示しています。また、2014年より開始した臨床研究「プロジェクトHOPE(ホープ)」を通じて蓄積された知見とその5000症例以上の解析データを用いてエキスパートパネルのレポートを作成しています。
当院では、エキスパートパネルにおける「見える化」を目指し、日本人のがんの遺伝子変化を理解するため、WEB上で利用可能な公開データベースを開発中です。今後は、がん遺伝子パネル検査の結果をもとに、効果の期待できる分子標的治療薬を多くの患者さんに届けるシステムの構築を行っていきます。
がんゲノム医療とは
がんは、遺伝子の変化が一因として引き起こされる病気です。がん細胞の遺伝子に生じている変化(遺伝子変異)は、個々の患者さんによって異なることが近年の研究により判ってきました。現在すでに、ある特定の遺伝子変化を標的とした治療薬(分子標的治療薬)が保険診療で使用されています。
この治療薬を使用するために行われている遺伝子検査は、1つまたは数個の遺伝子の変化しか調べることができません。しかし、がん遺伝子パネル検査は一度に多数の遺伝子変化を解析することができます。その解析結果をもとに、患者さん一人ひとりに効果の期待できる分子標的治療薬があるかを検討します。
がん遺伝子パネル検査について
がん遺伝子パネル検査は、がん細胞に起きている遺伝子の変化を調べる検査です。検査は、⼿術・生検などで採取したがんの組織や血液を用いて、高速で大量のゲノム情報を読み取る「次世代シークエンサー」という解析装置で、1回の検査で多数(数十~数百)の遺伝子を同時に調べます。遺伝子の変化が見つかり、その遺伝子変化に対して効果が期待できる薬がある場合には、その薬の使用を検討します。
現在のところ、遺伝子変化が見つかる割合は9割、遺伝子変化に合う薬剤が見つかる割合は5割、その薬剤を使用できる割合は1割程です。
検査でわかること
〇 患者さんの腫瘍細胞に見られる遺伝子の変化
〇 治療効果が期待できる国内で承認済みの治療薬情報
〇 治療効果が期待できる国内で臨床試験(治験等)中の治療薬情報
〇 国内未承認、海外で承認済みあるいは臨床試験(治験等)中の治療薬情報
当院で受けられる検査
FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル(保険適応) FoundationOneⓇ(ファウンデーションワン)は、がんに関連した324遺伝子を調べます。 |
OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム(保険適応) NCCオンコパネルは、がんに関連した124遺伝子を調べます。 |
FoundationOneⓇ Liquid CDx がんゲノムプロファイル(保険適応) FoundationOneⓇ Liquid(ファウンデーションワン)は、がんに関連した324遺伝子を調べます。 |
Guardant360Ⓡ CDx がん遺伝子パネル(保険適応) Guardant360Ⓡ(ガーダント スリーシックスティー)は、がんに関連した74遺伝子を調べます。 |
GenMineTOP がんゲノムプロファイリングシステム(保険適応) GenMineTOP(ジェンマイントップ)は、がんに関連した737遺伝子を調べます。 |
対象となる方
1~3のすべてにあてはまる方 |
|
1 |
以下のいずれかにあてはまる方 ・標準治療のない原発不明がん、希少がんの方 |
2 |
遺伝子検査に使用可能な病理組織がある方(生検や他院検体でも可) ※病理組織がない方は、血液検体のみを使用するFoundationOne® Liquid CDxがんゲノムプロファイル検査またはGuardant360Ⓡ CDxがん遺伝子パネル検査となります。 |
3 |
臨床的に、2か月後に新たながん治療を行うことが可能と推測できる方 |
検査の流れ
【 当院 通院中の方 】 |
|||
担当医に相談 |
|||
【 他院 通院中の方 】 |
|||
① |
通院中の医療機関の担当医に相談 |
||
② |
通院中の医療機関から、静岡がんセンターの外来を予約 |
||
③ |
(静岡がんセンター)初診日を決定し、通院中の医療機関に連絡 |
||
④ |
通院中の医療機関から、患者さんに初診日の連絡 |
||
⑤ |
初診日に、静岡がんセンターの初診受付へ |
がん遺伝子パネル検査をうけていただく際には、病気の経過などの情報が必要となります。
現在通院中の医療機関からの予約が必要になりますので、必ず担当医の先生に相談をしてください。
受診日が決まりましたら、通院中の医療機関より連絡があります。
費用について
〇 保険診療による検査費用
「ゲノムプロファイリング検査料 44万円 +ゲノムプロファイリング評価提供料 12万円(合計56万円)」
※ 上記の1〜3割が、自己負担となります。
※ 高額療養費制度の対象になる場合があります。
検査を受けるにあたって留意していただきたいこと
- 本検査を行っても、がんの治療に有用な情報が何も得られない可能性があります。
- 検査後の治療に関する費用は、本検査の費用には含まれていません。
- 候補の薬剤が見つかった場合でも、その薬剤が国内で承認されていない場合には、薬剤の入手ができない可能性があります。
- 本検査は、治療効果を保証するものではないため、結果に基づいて治療を行っても、十分な治療効果が得られない可能性もあります。
- 検査の結果で候補としてあげられた薬剤の使用にあたっては、必ず担当医の指示にしたがってください。
- 検査の申し込みは、説明文書の内容を理解した上で、患者さんご本人(または法廷代理人)の自署による同意書が、必要となります。
- 本検査は、がん細胞のみに起こっている遺伝子変化を調べる検査ですが、遺伝性腫瘍の発症に関連した遺伝子の変化(生殖細胞系列の遺伝子変異)などが、疑われる可能性があります。
その場合は、患者さんのご意思を尊重し、必要に応じて当センター 遺伝外来(遺伝カウンセリング室)をご紹介いたします。
医療機関のみなさまへ −患者さんのご紹介について−
「がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)を希望されるご担当の先生へ」(PDF)
※必ずお読み下さい。
がん遺伝子パネル検査は、医療機関からの紹介予約制となります。
予約の窓口は「地域医療連携室」となります。
【地域医療連携室】 電話番号 055(989)5646(医療機関専用) |
ご紹介にあたりご留意いただきたいこと
- ご紹介いただく患者さんは、標準治療後あるいは終了の可能性が高い固形がんの患者さん、もしくは希少がん・原発不明がんの患者さんであり、PS0~1の方に限らせていただきます。
- 検査申込から検査結果通知の準備が整うまで、おおよそ2ヵ月程度かかります。
- 特に、標準治療に抵抗性となった患者さんは予後が厳しいケースも多いため、この点について十分ご留意ください。
- 検査後の治療費は、上記金額に含まれておらず適応外の薬剤を用いる場合には、通常高額の薬剤費を含めた医療費が必要となります。
- 検査には、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本(ブロック)が必要です。
検査に必要なもの
1. 様式1:がん遺伝子パネル検査 診療(検査)依頼書 ダウンロード: Word|PDF
2. 様式2:がん遺伝子パネル検査 検体情報チェックリスト ダウンロード: Word|PDF
3. 様式3:がん遺伝子パネル検査 家族歴問診票 ダウンロード: Word|PDF
4. 病理診断報告書とその診断に使用した病理標本(FFPEブロック含む)
患者さん向け資料
1. がん遺伝子パネル検査(患者さんお渡し用)(PDF)
2. 「がん遺伝子パネル検査」を検討する方にご理解いただきたいこと(C-CAT作成資料)(PDF)
3. がんゲノムパネル検査の費用について(PDF1)(PDF2)
スタッフ紹介
釼持 広知(ゲノム医療推進部長兼室長・呼吸器内科兼務)Kenmotsu, Hirotsugu
- 専門分野
- 肺癌化学療法/臨床腫瘍学
- 所属学会・資格等
-
日本内科学会(認定医) 日本呼吸器学会(専門医・指導医) 日本臨床腫瘍学会(がん薬物療法専門医・指導医) 日本癌学会 日本肺癌学会 日本呼吸器内視鏡学会(専門医・指導医) 日本アレルギー学会(専門医) 日本がん治療認定医機構(認定医) 世界肺癌学会(IASLC) 米国臨床腫瘍学会(ASCO) 医学博士
石田 裕二(副院長兼小児科部長兼務)Ishida, Yuji
- 専門分野
-
小児がん
がん患者家族支援 - 所属学会・資格等
-
日本小児科学会(専門医) 日本血液学会(血液専門医) 日本小児血液・がん学会 日本脳腫瘍学会 日本造血細胞移植学会 米国小児がんグループ国際会員
德留 なほみ(乳腺腫瘍内科部長兼務)Tokudome, Nahomi
- 専門分野
-
乳癌の薬物治療、新薬の開発、がんゲノム医療、臨床研究の品質管理、トランスレーショナルリサーチ
- 所属学会・資格等
-
日本臨床腫瘍学会 (がん薬物療法専門医、指導医、協議員) 日本乳癌学会(専門医) 日本外科学会(認定登録医) 日本がん治療認定医機構(がん治療認定医) 検診マンモグラフィ読影認定医 日本内科学会 日本遺伝性腫瘍学会 日本癌治療学会 日本乳癌検診学会 医学博士 American Society of Clinical Oncology︓Full Member
川上 武志(消化器内科兼務)Kawakami, Takeshi
- 専門分野
-
消化器がんに対する化学療法
- 所属学会・資格等
-
日本内科学会(認定医、専門医)消化器病学会(専門医) 日本胃癌学会 日本メディカルAI学会 日本臨床腫瘍学会(がん薬物療法専門医) 米国臨床腫瘍学会(ASCO) 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)
角 暢浩(婦人科兼務)Kado, Nobuhiro
- 専門分野
-
婦人科腫瘍学
遺伝性腫瘍 - 所属学会・資格等
-
日本産科婦人科学会(専門医) 日本婦人科腫瘍学会(専門医) 日本がん治療認定医機構(認定医) 日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医) 日本遺伝性腫瘍学会(専門医) 日本遺伝カウンセリング学会(国際交流委員会 委員) 婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG) 日本癌治療学会 日本産婦人科手術学会 日本産科婦人科内視鏡学会 日本内視鏡外科学会 リンパ浮腫研修(ステップ1、ステップ2)終了 日本臨床細胞学会 日本婦人科がん検診学会
高 遼(呼吸器内科兼務)Ko, Ryo
- 専門分野
-
呼吸器内科
- 所属学会・資格等
-
日本内科学会(認定医) 日本呼吸器学会 日本肺癌学会 日本臨床腫瘍学会 医学博士
和久田 一茂(呼吸器内科兼務)Wakuda, Kazushige
- 専門分野
- 呼吸器内科
- 所属学会・資格等
-
日本内科学会(認定医、専門医) 日本呼吸器学会(専門医) 日本呼吸器内視鏡学会(専門医) 日本臨床腫瘍学会 日本肺癌学会 本がん治療認定医機構(認定医) 医学博士
豆鞘 伸昭(呼吸器内科兼務)Mamesaya, Nobuaki
- 専門分野
- 呼吸器内科
- 所属学会・資格等
-
日本内科学会(認定医) 日本呼吸器学会(専門医) 日本呼吸器内視鏡学会(専門医) 日本臨床腫瘍学会(がん薬物療法専門医) 日本肺癌学会 日本感染症学会
伏木 邦博(消化器内科兼務)Fushiki, Kunihiro
- 専門分野
-
消化器がんに対する化学療法
- 所属学会・資格等
-
日本内科学会(認定内科医) 日本消化器病学会(専門医) 日本臨床腫瘍学会 日本癌治療学会 日本消化器内視鏡学会 日本胃癌学会 日本膵臓学会