薬別の眼の症状と対処法

 抗がん剤治療中に起こる「眼の症状」の病態や対処法は、まだ十分知られていません。そこで、抗がん剤治療中に「眼の症状」がありましたら、がまんしないで、早めに主治医に相談して下さい。

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン,TS-1)
フルオロウラシル(5-FU)
用いられるがんの種類 胃がん、大腸がん、非小細胞肺がん、乳がん、頭頸部がん、膵臓がん、胆道がん
眼に関する副作用 ・流涙(涙道障害)
・視力低下、眼痛、羞明(角膜炎、角膜潰瘍、角膜びらん)
患者さんの訴え ・涙がすごく出る、しょっちゅう目を拭いている
・見えにくい、かすむ  など
病態 涙の中に抗がん剤が排出されることが原因と言われています。
「流涙」は涙の通り道である「涙道」が狭くなったり、塞がることにより発現します。障害を受ける所は、涙点、涙小管、涙嚢、鼻涙管で、特に涙小管は太さが1mmなので、塞がりやすい所であります。これら涙道が狭くなったり塞がってしまうと、涙が正常に鼻に抜けないため、涙が眼からたえずこぼれ落ちるという現象が起こります。

「視力低下」や「眼の痛み」、「羞明」は角膜の炎症やびらん、潰瘍などの角膜の障害により起こります。
※一時的な症状か持続するかなどの詳細なことは解明されていませんが、放置しておくと視力低下など重篤になることもありますので、早めに医師に相談する事が大切です。

発症までの期間 数週間から数カ月との報告があり、一概には言えません。かなり個人差があるようです。
眼科領域での対処法

涙道障害

軽症の場合は、抗がん剤を洗い流す目的で、点眼薬を用います(1日5~6回、水道水は使用しないで下さい)。次に涙道通水処置をします。病状が進行していれば、涙道内視鏡を使って涙管チューブ(シリコン、ポリウレタン製)を挿入します。これは、抗がん剤治療終了後まで留置しておき、治療後は状態をみながら抜きます。
抗がん剤治療と眼の症状1

挿入された涙管チューブ
下段の写真は意図的に開眼しています。普通は上段の写真のように目立ちません。

症状が強い場合は、抗がん剤の減量や休薬をする場合もありますので、主治医と相談して下さい。

角膜障害

現在、有効な点眼薬はありません。重症化する場合は、抗がん剤を休薬するのが原則です。その際は主治医との相談になります。

 

シタラビン(キロサイド、シタラビン、スタラシド)
用いられるがんの種類 急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫
など
眼に関する副作用 ・結膜炎
患者さんの訴え ・眼が痛い
・眼が赤い  など
病態 血中から涙液中に移行したシタラビンにより起こるとされています。結膜に炎症が起こると「結膜炎」が発症します(特に抗がん剤を大量に使う治療で出現する傾向があります)。
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 ステロイドの点眼薬を行います。医療者から説明された点眼方法を守って下さい。

 

<<上手な点眼薬のさし方>>

医療者から説明された点眼方法(時間、量、両眼か片眼か、など)を守って下さい。
点眼薬の容器の先端を顔の皮膚やまつ毛につけないように注意しましょう。

  1. 手を石鹸と流水で丁寧に洗います。
  2. 上を向いて、下まぶたを引きます。
  3. 引いた下まぶたに、指示されている量をさします(多くの場合は1滴です)。
  4. 点眼後はまばたきをしないで、まぶたを閉じ、1分間ほど目頭を軽く押さえます。
  5. あふれた液は「目の周り専用清浄綿」か、布繊維がでない清潔なハンカチ(ガーゼ製などは避けましょう)でやさしく拭きとります。

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タモキシフェン(ノルバデックス、タモキシフェン)
用いられるがんの種類 乳がん
眼に関する副作用 ・視力低下
・変視症(ものが歪んで見える) など
患者さんの訴え ・ものが歪んで見える 
・かすむ  など
病態 網膜の血管の炎症などの血管障害と言われています。
「変視症」は網膜の黄斑部(網膜の中心部)に異常が生じると起こります。
発症までの期間 個人差があり、一概には言えません。
眼科領域での対処法 有効な治療法は確立されていません。休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

 

<<網膜とは>>

網膜は眼の内側の壁を覆う薄い膜で、その働きはカメラで例えますと、フイルムに相当するところです。
抗がん剤治療と眼の症状2

 

パクリタキセル(タキソール、パクリタキセル)
ドセタキセル(タキソテール、ワンタキソテール、ドセタキセル)
用いられるがんの種類 非小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、胃がんなど(パクリタキセル)
非小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、前立腺がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん (ドセタキセル)
眼に関する副作用 ・視力低下、変視症、小視症
・涙道障害 など
患者さんの訴え ・見えにくい、歪んで見える、かすむ
・涙が止まらない
病態

変視症、小視症は主に網膜に異常が生じると起こります。抗がん剤治療と眼の症状3

涙道障害はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン)、フルオロウラシル(5-FU)のページをご参照下さい。

発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 涙道障害に関しては涙道通水処置や涙管チューブの留置処置を行います。
視力低下や変視症などでは休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

 

パクリタキセル(アルブミン懸濁型)(アブラキサン)
用いられるがんの種類 乳がん、胃がん、非小細胞肺がん、膵臓がん
眼に関する副作用 視力低下、角膜炎、結膜炎、黄斑浮腫
(角膜障害、網膜障害)
患者さんの訴え ・見えにくい、目が痛い
・涙が止まらない
病態 不明
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 角膜炎、黄斑浮腫などによる視力低下では休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

 

シスプラチン(シスプラチン、ブリプラチン、ランダ)
用いられるがんの種類 肺がん、悪性胸膜中皮腫 胃がん、食道がん、頭頸部がん、卵巣がん、子宮頸がん、睾丸腫瘍、膀胱がん、腎盂・尿管腫瘍、前立腺がん、骨肉腫、神経芽細胞腫、胚細胞腫瘍(精巣腫瘍、卵巣腫瘍、性腺外腫瘍)  など
眼に関する副作用 球後(きゅうご)視神経炎(ししんけいえん)(視力低下や視野障害などを起こします)
患者さんの訴え ・見えにくい、かすむ   ・中心がぼやける
病態 眼球より後方の視神経に炎症が生じることにより起こります。
抗がん剤治療と眼の症状2
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

 

ゲフィチニブ(イレッサ)
エルロチニブ(タルセバ)
セツキシマブ(アービタックス)
用いられるがんの種類 非小細胞肺がん(ゲフィチニブ、エルロチニブ)
膵臓がん(エルロチニブ)
大腸がん、頭頸部がん(セツキシマブ)
眼に関する副作用 まつ毛が長くなったり(長生化)、本来の向きに生えず、不揃いな状態になったり(睫毛乱生)、カールしてしまいます。このことにより、まつ毛が眼の表面(角膜)を刺激し、異物感や痛み、炎症などをひきおこします。
患者さんの訴え ・痛い
・ゴロゴロする
病態 不明
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 まつ毛が均一に長くなる場合は、まつ毛の定期的なカットを行います。
まつ毛がカールした場合は定期的に抜去します。
なお、まつ毛がなくなると目にゴミやホコリが入りやすくなります。そのような時は、メガネやサングラスをかけると良いでしょう。
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クリゾチニブ(ザーコリカプセル)
用いられるがんの種類 非小細胞肺がん
眼に関する副作用 ・視力低下
・羞明(異常にまぶしく感じる)
患者さんの訴え ・ものが二重に見える、かすむ
・一部が欠けて見える
・眼がチカチカする
病態 不明
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 経過観察をしていきます。

 

アファチニブ(ジオトリフ)*
用いられるがんの種類 非小細胞肺がん
眼に関する副作用 ・結膜炎
・かすみ目 など
患者さんの訴え ・眼が痛い、赤い
・眼がかすむ  など
病態 不明
発症までの期間 2~3週間頃から発症しますが、個人差があります。
眼科領域での対処法 抗がん剤の減量や休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

* 臨床試験の結果で掲載しています。

 

ベムラフェニブ(ゼルボラフ)*
用いられるがんの種類 悪性黒色腫(メラノーマ)
眼に関する副作用 ・ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞、など
(かすみ目、飛蚊症、羞明、眼の痛み、視力低下、視野障害など)
患者さんの訴え ・眼がかすむ、眼が痛い、眼がチカチカする
・急激に見えにくくなった、ものが歪んで見える など
病態 不明
発症までの期間 2~3カ月頃から発症しますが、個人差があります。
眼科領域での対処法 抗がん剤の減量や休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

* 臨床試験の結果で掲載しています。

 

ダブラフェニブ(タフィンラー)*
用いられるがんの種類 悪性黒色腫(メラノーマ)
眼に関する副作用 ・ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞、網膜剥離など
(かすみ目、飛蚊症、羞明、眼の痛み、視力低下、視野障害など)
患者さんの訴え ・眼がかすむ、眼が痛い、まぶしい
・急激に見えにくくなった、 など
病態 不明
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 抗がん剤の減量や休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

* 臨床試験の結果で掲載しています。

 

トラメチニブ(メキニスト) *
用いられるがんの種類 悪性黒色腫(メラノーマ)
眼に関する副作用 ・ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞、網膜剥離など
(かすみ目、飛蚊症、羞明、視力低下、眼の痛み、視野障害など)
患者さんの訴え ・眼がかすむ、眼が痛い、まぶしい
・急激に見えにくくなった など
病態 不明
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 抗がん剤の減量や休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

* 臨床試験の結果で掲載しています。

 

ニボルマブ(オプジーボ)*
用いられるがんの種類 悪性黒色腫(メラノーマ)、非小細胞肺がん、腎細胞がん
頭頸部がん、胃がん、古典的ホジキンリンパ腫
眼に関する副作用 ・ぶどう膜炎(かすみ目、飛蚊症、羞明)
患者さんの訴え ・眼がかすむ、まぶしい
・虫が飛んでいるように見える など
病態 不明
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 抗がん剤の減量や休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

* 臨床試験の結果で掲載しています。

 

イピリムマブ(ヤーボイ)*
用いられるがんの種類 悪性黒色腫(メラノーマ)
眼に関する副作用 ・ぶどう膜炎、虹彩毛様体炎など
(眼痛、かすみ目、視力低下、羞明、飛蚊症など)
患者さんの訴え ・眼がかすむ、眼が痛い、
・まぶしい、虫が飛んでいるように見える など
病態 不明
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 抗がん剤の減量や休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

* 臨床試験の結果で掲載しています。

 

ペムブロリズマブ(キイトルーダ)*
用いられるがんの種類 悪性黒色腫(メラノーマ)、非小細胞肺がん
眼に関する副作用 ・ぶどう膜炎(かすみ目、飛蚊症、羞明)
患者さんの訴え ・眼がかすむ、まぶしい
・虫が飛んでいるように見える など
病態 不明
発症までの期間 不明
眼科領域での対処法 抗がん剤の減量や休薬の処置が取られることがありますが、抗がん剤の治療計画もありますので、主治医とよく相談して下さい。

* 臨床試験の結果で掲載しています。

 

抗がん剤治療と眼の症状

抗がん剤治療と眼の症状