眼の副作用を生じやすい抗がん剤について

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 抗がん剤の副作用に関する記載をみると、ほとんどの薬において「結膜炎」や「角膜炎」などの症状があります。この中でお知らせする薬は、2023年8月までに症例報告があった薬と当院の現状の中から、治療に使われる頻度等を考慮して選択しました。その一覧を以下に示します。

●●●細胞障害性の抗がん剤●●●

細胞障害性の抗がん剤とは・・・細胞が分裂して増える過程に作用する抗がん剤。細胞増殖の盛んな細胞を障害します。

一般名※ 商品名※ 眼に関する副作用
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム ティーエスワン*(TS-1)
*他に多数の後発品があります)
流涙、視力低下、眼痛、羞明(角膜炎、角膜潰瘍、角膜びらん)
フルオロウラシル 5-FU
フルオロウラシル(注)
流涙、結膜炎
シタラビン

キロサイド

結膜炎、眼痛、羞明、など
シタラビン
(大量療法)
キロサイド
シタラビン
結膜炎、眼痛、羞明、など
カペシタビン  ゼローダ
カペシタビン  
結膜炎、角膜炎、流涙増加、など
パクリタキセル タキソール
パクリタキセル
黄斑浮腫、結膜炎、かすみ目、流涙増加、眼乾燥、角膜炎、など
パクリタキセル
(アルブミン懸濁型)
アブラキサン 視力異常、眼痛、眼乾燥、角膜炎、結膜炎、流涙、黄斑浮腫
ドセタキセル タキソテール
ドセタキセル
ワンタキソテール
視力異常、羞明、流涙、結膜炎、など
シスプラチン シスプラチン
ランダ
視覚障害(球後視神経炎)
テモゾロミド テモダール
テモゾロミド 
かすみ目、眼瞼炎
チオテバ リサイオ 眼そう痒症
ベンダムスチン トレアキシン
ベンダムスチン
眼そう痒症、角膜炎、
流涙増加、など
デニロイキン
ジフチトクス
レミトロ かすみ目、視野欠損、色覚異常、など

※薬の一般名と商品名
「一般名」とは薬の有効成分を示す名前です。これに対して「商品名」とは製薬企業が医薬品を販売するために付けた名前です。

 

●●●分子標的型の抗がん剤●●●

分子標的型の抗がん剤とは・・・がん細胞に存在する特殊な物質をピンポイントで攻撃する抗がん剤。

一般名※ 商品名※ 眼に関する副作用
ゲフィチニブ イレッサ
ゲフィチニブ
睫毛の長生化、睫毛乱生、結膜炎、眼瞼炎、角膜炎、角膜びらん、眼乾燥
エルロチニブ タルセバ
エルロチニブ
睫毛の長生化、睫毛乱生、結膜炎、眼乾燥、角膜炎、眼瞼炎、睫毛/眉毛の異常、など
セツキシマブ アービタックス 睫毛の長生化、睫毛乱生、結膜炎、眼瞼炎、角膜炎
クリゾチニブ ザーコリ 視力低下、光視症、かすみ目、複視、羞明、など
アファチニブ ジオトリフ 結膜炎、かすみ目、眼乾燥、角膜炎、眼瞼炎、など
セリチニブ ジカディア 視力障害、かすみ目、光視症、など
オシメルチニブ タグリッソ 眼乾燥、結膜炎、かすみ目、眼瞼炎、角膜炎、など
ダコミチニブ  ビジンプロ  結膜炎、かすみ目、眼乾燥、角膜炎、など 
ロルラチニブ  ローブレナ  視覚障害 
イキサゾミブ ニンラーロ かすみ目、白内障、眼乾燥、など
カルフィルゾミブ カイプロリス かすみ目、視力障害、白内障、など
エロツズマブ エムプリシティ 白内障
イブルチニブ イムブルビカ かすみ目、眼乾燥、視力低下、など
ポナチニブ アイクルシグ 角膜びらん、眼乾燥、かすみ目、眼痛、結膜炎、視力低下、
など
ギルテリチニブフマル   ゾスパタ かすみ目、羞明、眼乾燥、視力低下、など 
ベムラフェニブ ゼルボラフ ぶどう膜炎、流涙増加、眼乾燥、結膜炎、網膜静脈閉塞、など
ダブラフェニブ タフィンラー かすみ目、ぶどう膜炎、網膜剥離、など
トラメチニブ メキニスト かすみ目、ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞、網膜剥離、など
エンコラフェニブ ビラフトビ  網膜障害、ぶどう膜炎、かすみ目、など 
ビニメチニブ  メクトビ 網膜障害、ぶどう膜炎、かすみ目、など
トラスツズマブ ハーセプチン 流涙増加、結膜炎、視力障害 
トラスツズマブ トラスツズマブBS  流涙増加、結膜炎、かすみ目、など
トラスツズマブ
エムタンシン
カドサイラ 視力障害、流涙増加、結膜炎、眼乾燥
トラスツズマブ
デルクステカン
エンハーツ ドライアイ 、かすみ目
パルボシクリブ イブランス 流涙増加、かすみ目、眼乾燥
アベマシクリブ ベージニオ 流涙増加、眼乾燥
フォロデシン ムンデシン 眼精疲労、結膜炎、など
オビヌツズマブ ガザイバ 眼充血、結膜炎
ブリナツモマブ ビーリンサイト 眼痛、光視症、羞明、視力障害、など
エヌトレクチニブ ロズリートレク かすみ目、羞明
ペミガチニブ ペマジール 網膜剥離、ドライアイ、睫毛乱生、角膜障害、結膜炎、など
ネシツムマブ ポートラーザ 結膜炎
ピミテスピブ ジェセリ 夜盲、かすみ目、視力障害、など
エンホルツマブ ベドチン パドセブ ドライアイ、流涙増加、かすみ目、結膜炎、角膜炎

※薬の一般名と商品名
「一般名」とは薬の有効成分を示す名前です。これに対して「商品名」とは製薬企業が医薬品を販売するために付けた名前です。

 

●●●ホルモン療法薬●●●

ホルモン療法薬とは・・・体内の特定のホルモンの影響を受けて増殖する性質のがんに対して使用する薬。

一般名※ 商品名※ 眼に関する副作用
エンザルタミド   イクスタンジ 流涙増加 
タモキシフェン ノルバデックス
タモキシフェン
視力異常、角膜の変化、白内障、網膜症など
トレミフェン トレミフェン
フェアストン
視覚障害

※薬の一般名と商品名
「一般名」とは薬の有効成分を示す名前です。これに対して「商品名」とは製薬企業が医薬品を販売するために付けた名前です。

 

●●●免疫治療薬(免疫チェックポイント阻害薬)●●●

免疫治療薬とは・・・自分の免疫細胞が、がん細胞を排除しようとする働きを助ける薬。

一般名※ 商品名※ 眼に関する副作用
ニボルマブ オプジーボ ぶどう膜炎、眼乾燥、流涙増加、かすみ目、複視、角膜障害、など
イピリムマブ ヤーボイ ぶどう膜炎、かすみ目、視力低下、結膜炎、など
アベルマブ  バベンチオ   ぶどう膜炎、眼痛、眼掻痒症、流涙増加、かすみ目、など
アテゾリズマブ   テセントリク 結膜炎、かすみ目、眼乾燥、流涙増加
ペムブロリズマブ キイトルーダ ぶどう膜炎、流涙増加、眼乾燥、かすみ目、など

※薬の一般名と商品名
「一般名」とは薬の有効成分を示す名前です。これに対して「商品名」とは製薬企業が医薬品を販売するために付けた名前です。

 

抗がん剤治療と眼の症状

抗がん剤治療と眼の症状