お薬別の末梢神経障害の症状について

末梢神経障害は薬が蓄積されることによって生じることがあります。そこで、初回の治療時に症状が出現しなくても注意が必要です。

パクリタキセル(タキソール、パクリタキセル、アブラキサン)

ドセタキセル(タキソテール、ワンタキソテール、ドセタキセル)

症状

手先・足先のしびれ、刺すような痛み、関節痛、筋肉痛

感覚が鈍い、  など

患者さんの訴え

手首から指先までしびれる感じ、靴下をはいているところがしびれる感じ、手や足の関節が痛い、  など

病態など

パクリタキセル>

微小管の障害が原因となり、手袋や靴下の着用部分からしびれや痛み、知覚異常が起こります。

1回投与量が多い(200mg/㎡(体表面積)以上)と症状が出やすいとされています。さらに総投与量が715mg/㎡(体表面積)を超えると頻度が上がるという報告があります。

シスプラチンとの併用では、高率に発症し、症状が重症になると回復が困難になる場合があります。

発症時期は、投与3~5日後から起こるとされています。

ドセタキセル>

パクリタキセルと病態・症状は同じですが、パクリタキセルよりも末梢神経障害の発症頻度は低いとされています。

 

ビンクリスチン(オンコビン) ビノレルビン(ナベルビン、ロゼウス) 

ビンブラスチン(エクザール) ビンデシン(フィルデシン)

症状

指先の感覚が鈍い、ピリピリした感じ、つま先が垂れる、歩きにくい、便秘、尿閉、  など

患者さんの訴え

指先にピリピリした感じがする、手の感覚が鈍い、

足に力が入らない、   など

病態など

微小管の障害が原因で、手指の異常感覚が生じるので、ボタンかけなどの細かい動作が困難になります。進行すると筋力低下などが起こり、歩きにくくなり転倒に注意せねばなりません。また、便秘や排尿困難が起こることもあります。障害が高度である場合、薬を中止しても症状改善には数か月を要することがあります。

ビンクリスチン(オンコビン)では、18-24週間の総投与量が12mg/㎡(体表面積)を超えないようにすることで症状の増強を予防できると言われています。

 

エリブリン(ハラヴェン)

症状

手足のしびれ、感覚が鈍い、力が入りにくい、  など

患者さんの訴え

指先がしびれる、痛い、手の感覚が鈍くなった、

手や足に力が入りにくくなった、  など

病態など

微小管の障害により引き起こされます。症状は、早ければ投与後1週間くらいで出現しますが、頻度は、微小管阻害剤の中では低いとされています。

 

オキサリプラチン(エルプラット)

症状

手や足、口のまわりのしびれ、痛み、知覚鈍麻、

のどがしめつけられるような感覚、  など

患者さんの訴え

(急性症状)口やのどがしびれる感じがする、指先や足先がしびれる  など

(慢性症状)手や足がしびれる、歩きにくい、  など

病態など

急性症状と慢性症状があります。

急性症状>

神経細胞の刺激伝達のしくみが障害を受け症状が生じます。

投与直後から2日以内で症状が生じ、初回投与時、85~90%の方で症状が認められ、2週間ほどで回復します。主として、手や足、口のまわりのしびれ感や痛みなどが生じ、“冷たいもの”の寒冷刺激で誘発または悪化されるのが特徴です。稀に、「喉がしめつけられる感じ」や「息苦しさ」などの感覚異常の症状が出現することがあります。そのため、治療中は寒冷刺激を避ける事が大切です(20ページ参照)。

慢性症状>

治療が継続され、抗がん剤投与が繰り返されると後根神経節に抗がん剤が蓄積され、神経細胞体が障害を受けやすくなります。急性症状が出現しなかった方でも、慢性症状が出現することがあります。

症状は、手足のしびれ感や感覚低下などです。

多くの場合、投与中止によって症状は軽快しますが、数か月を要することもあります。

総投与量が800mg/㎡(体表面積)を超えると慢性症状が出現しやすいと言われています。

 

シスプラチン(シスプラチン、ブリプラチン、ランダ)

症状

手先・足先のしびれ、痛み、聴力障害(高音域)、  など

患者さんの訴え

つま先がしびれる感じ、

耳が聞こえにくい、  など

病態など

神経細胞が直接障害を受け、二次的に軸索がダメージを受けることで症状が出現します。また、薬の量が増えると影響も大きくなるという特徴があります。特に後根神経節に薬剤が蓄積され、ダメージを受けるため、感覚障害が生じやすいとされています。

症状は、手袋や靴下の着用部分のしびれなどで、総投与量が増加するにつれ、痛みを伴ったり、症状が全身に広がったりします。

また、聴力障害(高音難聴)を合併する場合があります。一方、運動障害はまれです。

投与量にもよりますが、手袋や靴下の着用部分のしびれは、治療開始後早ければ1~7日で症状が出現することがあり、総投与量が540mg~600mg/㎡(体表面積)を超えると70%以上に出現します。

 

カルボプラチン(カルボプラチン、パラプラチン)

症状

手足のしびれ、痛み、感覚が鈍い、  など

患者さんの訴え

手や足がしびれる、手の感覚が鈍い、  など

病態など

神経細胞の障害のため二次的に軸索がダメージを受け、症状が出現します。

同じ白金製剤のシスプラチンやオキサリプラチンに比べて、神経障害の程度は軽く、発症頻度も低いとされています。

 

ボルテゾミブ(ベルケイド)

症状

手足のしびれ、痛み、感覚が鈍い、起立性低血圧、

便秘、 など

患者さんの訴え

指先や足先がしびれる、足に力が入らない、  など

病態など

末梢神経障害の発症機序は十分に解明されてはいませんが、軸索障害による感覚障害が主で、痛みを伴うこともあります。症状は手袋、靴下を着用する部分を中心に、しびれ感や痛みで出現します。総投与量が30mg/㎡(体表面積)を超えると約50%の患者さんに症状が出現するとされ、薬剤を中止しても改善しにくいため、症状出現時から減量し、日常生活に支障がでるようであれば休薬を検討します。また、サリドマイドの服用歴があると発症しやすいとされています。

 

サリドマイド(サレドカプセル)

症状

手足のしびれ、痛み、起立性低血圧、  など

患者さんの訴え

手や足がしびれる、痛い、  など

病態など

末梢神経障害の発症機序は不明ですが、軸索障害をきたし、手袋や靴下を着用する部分のしびれや痛みで発症します。総投与量が20gを超えると症状が出現しやすいとされており、薬剤を中止すると症状は改善します。

 

レナリドミド(レブラミドカプセル)

症状

手足のしびれ、痛み、感覚が鈍い、起立性低血圧、など

患者さんの訴え

手や足がしびれる、痛い、  など

病態など

末梢神経障害の発症機序は不明ですが、手足のしびれや痛みが起こることがあります。症状はサリドマイドより軽度で発症頻度も低いとされています。

抗がん剤治療と末梢神経障害

抗がん剤治療と末梢神経障害