医薬品等を研究・開発する企業を対象に、医療現場体験プログラムを提供します

2024年1月23日

静岡県立静岡がんセンター
公益財団法人ふじのくに医療城下町推進機構 ファルマバレーセンター

 静岡県立静岡がんセンター(以下、「当センター」)は、静岡県が推進するファルマバレープロジェクトの中核医療機関として、また、「がんを上手に治す」、「患者・家族を徹底支援する」、「成長と進化を継続する」という患者さんへの約束(理念)のもと、薬物療法の副作用対策に注力し、支持療法の強化や副作用対策の支援ツールの開発などに尽力して参りました。これらの種々の取り組みを一歩進め、「医薬品等を開発する企業のための医療現場を体験するプログラム」を提供します。

 昨今の抗がん剤は、治療効果が高い分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が開発され、選択した抗がん剤によって効果だけでなく副作用も大きく異なっています。そのため、これまで以上に各々の患者さんに応じた個別の対応が求められており、患者さんへの適切な情報提供を行うことの重要性が増しています。当センターでは、これまでに、患者さんに必要な情報を1冊にまとめた「処方別がん薬物療法説明書」約1万冊を患者さんに配布するとともにウェブ上に公開し全国で活用されています。また、製薬企業の学術担当者や研究員に対しては、薬物療法による副作用の実態を伝えるセミナー等を通じて共通理解のもとで共同研究を実施し、ウェブサイト「サバイバーシップ」を大鵬薬品工業株式会社と立ち上げ、がん患者さんの暮らしの改善に役立つ情報を発信しています。このような取り組みは副作用の早期発見による治療や合併症予防につながっています。

 今回企画した「医薬品等を開発する企業のための医療現場を体験するプログラム」は、製薬企業の研究者や医薬品安全性担当者、MR(医薬情報担当者)等が実際に抗がん剤を投与された患者さんの様子を垣間見ることで、新たな視点が得られることを意図しています。開設以来20年の間には、富士フイルム株式会社やサンスター株式会社等と医療現場において医療スタッフとともに製品開発をする取り組みを実施し、様々な製品を生み出してきましたが、製薬企業を対象として、医療スタッフとともに医療現場を体験できるプログラムは今回が初めてとなります。今回の製薬企業を対象とするプログラムは診療やケアなどの様々な場面で実施することを想定し、見学、研修、共同研究・開発などの種々のケースを受け入れる予定です。企業にとっては、医師・看護師等の医療スタッフが医療現場でどのように患者さんへ情報を伝えているかを知り、また、自社で開発した抗がん剤の効果や副作用の実際を目の当たりにすることで、多職種の専門家が登場する臨床現場の多様なニーズや新たなシーズの探索の場へとつながり、医薬品等の更なる安全性の確保やより効果的な開発に寄与するものと考えております。さらに、研究所で取り組んでいる創薬を目的としたがんのマルチオミクス研究の成果も紹介します。

 一方、当センターにとっては、企業との臨床研究や新規薬剤開発を通じて当センターのがん薬物療法が強化されます。企業と緊密に連携した副作用対策は、より質の高い医療と適切な情報提供が可能となり、将来的には企業とともに創薬へとつながりうる可能性を得たことになります。

 今般、本企画の趣旨に賛同した中外製薬株式会社(本社:東京都中央区)から参加希望があり、内容を協議してきたところ、研修という形で実施することとなりました。

 なお、本企画は、当センターが患者さんからの同意を得て実施し、また、患者さんの個人情報や当センターが保有する関係企業、その他企業等の秘密情報の管理について十分配慮した上で実施するものです。また、本企画を実施するにあたり、企業に対して、原則、費用負担は求めません。

 ※支持療法:がんの進行に伴うつらい症状や治療に伴う副作用の治療や予防・ケアのこと。

<体験プログラム(例)>

安井博史副院長(腫瘍内科医)からのコメント

 企業の社員には、自社が開発した医薬品等を投与された患者さんにどのような効果があり、またどのような副作用で苦しんでいるのかという医療現場の実際を目の当たりにしていただくことで、その経験を、より副作用が少なく、より効果的な医薬品等の開発に活かしていただきたい。そして、患者さんに対するより良い医療の提供につながることを期待したい。

 


●プレスリリース
医薬品等を研究・開発する企業を対象に、医療現場体験プログラムを提供します(PDF:33KB)

本リリースに関するお問い合わせ

本リリースに関するお問い合わせは下記までお願いいたします。
 静岡県立静岡がんセンター マネジメントセンター 医療広報担当
  電話:055(989)5222(代表)

カテゴリー

カテゴリー