医療現場発のものづくり 人工知能搭載 ポータブル ニオイ認識・識別器“Aino-Pro”を開発

2018年1月31日
静岡県立静岡がんセンター
東海電子株式会社
公益財団法人 静岡県産業振興財団 ファルマバレーセンター 

 医療現場発のものづくりを支援する静岡県ファルマバレーセンターは、医療現場で必要とされる医療器具やケア用品などのアイデアを募集し、企業と医療機関で共同開発し製品化する支援を行っています。

 この度、静岡県立静岡がんセンター(総長:山口建、以下静岡がんセンター)と東海電子株式会社(代表:杉本 一成、以下 東海電子)は、がん病巣から放たれる強いニオイ成分を人工知能で臭気判定するポータブルニオイ認識・識別器を開発し、プロトタイプを完成させました。今回開発したニオイ認識・識別器は、装置内部の人工知能がニオイ成分を学習することで、数十種類のニオイの識別を可能にしています。今後は医療用の臭気のみならず、他分野でのニオイ・香り成分を人工知能に学習させ、その精度を高めていきます。

 なお、本装置は、「富士山麓産学官連携フォーラム2018」(2018年2月2日開催、場所:プラサヴェルデ(沼津市))にて初公開いたします。

 

【開発の背景】

進行がん、特に子宮がん及び乳がんの病巣では、がん組織が壊死したり、病巣部分に細菌が感染することにより強い病臭(※2)を呈することがあります。このため、患者さんの中には、四六時中、不快なニオイに悩まされ、外出を控えるなど、療養生活の質が低下するケースが見受けられます。現在、市販されているニオイ測定装置は病臭の種類を識別することが不可能なため、病臭の治療は、医師や看護師の経験則で病臭の種類を判断し、消毒する、軟膏を塗布する、抗菌薬を投与する等、人の臭気感覚に頼った処置や治療が行われています。そこで、病臭成分を高感度で簡便に分析し、より最適な治療法を見いだせないかと考え、本装置の開発に至りました。

 

【開発の経緯】

 静岡がんセンター研究所では、2008年7月、「香りの研究チーム」を立ち上げ、治療空間の「ニオイ」の軽減や緩和をテーマとして高砂香料工業株式会社と共同研究を開始し、その後、病臭を和らげる商品(「デオドラント“ケア”シリーズ」(発売元:株式会社トライ・カンパニー))や、当院の薔薇園の薔薇の香り成分を入れたハンドクリーム(「PRO’S(プロズ) CHOICE(チョイス)ハンドクリーム」(発売元:サンスター株式会社))を開発してきました。そして、2012年に静岡がんセンター研究所と東海電子は「ニオイセンサーを活用した病臭測定用のポータブル診断装置の開発」(経産省課題解決型医療機器等開発事業(総合特区推進委託費))に着手し、今回のプロトタイプを完成させました。

 

【装置の概要】

本装置は、人工知能と可搬式の簡易ガスクロマトグラフで構成されています。人工知能が判別した成分の特徴や微弱な変化をディープラーニングを用いて学習させ、ニオイ識別を可能にしています。装置の詳細は、東海電子のプレスリリースをご覧ください。

Aino-Pro.jpg2

 【写真】Aino(アイノ)-Pro(プロ)のシステム(本体サイズ:210w×450d×320h、重量約10kg)

※1 2018年1月 東海電子株式会社調べ
※2 本リリースでは、疾病(原疾患、感染症、褥瘡等)により直接および間接的に体内や体表から生じる臭気を病臭と定義します。

開発に携わった楠原正俊(静岡がんセンター研究所副所長 兼 地域資源研究部長)からのコメント

乳がんや子宮がんの病臭は、病態や細菌の種類によって産生されるニオイ物質(揮発性有機化合物)が異なります。病臭の治療は、ニオイの種類を判定し、処置・治療法を選ぶことが必要不可欠だと感じています。処置前後のニオイの変化により、処置が十分か、見落としがないかを評価できれば、ケアの評価のツールとしても有用であると考えています。

 

 

「ポータブルニオイ認識・識別器 “Aino-Pro”」に関するお問い合わせ

 

※本リリースに関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。
ファルマバレーセンター 事業推進部
静岡県駿東郡長泉町下長窪1002-1 静岡県医療健康産業研究開発センター1階
電話:055(980)6333  FAX:055(980)6320

プレスリリースはこちら → ico_pdf (PDFファイル:350KB)

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