よせられた質問及び回答集(整形領域のがんと骨転移)

2005年度 市民公開講座第4回(2006年1月14日実施)

 人工関節が入っていると、MRIは通常不可能なのでしょうか? また、腫瘍用の人工関節はMRIが可能なのでしょうか?
 通常の人工関節では、磁性体金属を含むので、この周囲の腫瘍にMRIをおこなっても情報が得られません。ただし、この関節から離れたところの検査であれば可能です。腫瘍用の人工関節は、チタン合金で作られているものもあり、MRIでも影響が少ないですが、必ずしも良好な情報が得られるわけではありません。
 骨シンチはどの位の頻度で検査していくのですか?
 半年から一年に一度でいいです。
 自己骨を戻す場合、熱処理などによる影響について教えてください。
 熱処理骨とはいえ、体外に出して熱を加えるのですから、いったん死んだ骨になります。したがって、これだけでは成長しません。通常は、これに血管つきの骨移植を加えて、血流の再開を待ちます。
 整形外科領域のがんと骨転移における骨シンチ、PET検査について詳しく教えてください。
 骨シンチは骨の異常を見る検査としては、もっとも敏感な検査です。しかし、骨の腫瘍のほかに、炎症や、小さな骨折なども敏感に反映するために時に骨転移と誤認することがあります。また、脳腫瘍や、肝臓癌、甲状腺癌などでは陽性に出ないことがあります。PET検査は、骨の病変のほかに、リンパ節や、内臓の中の悪性腫瘍も反映するので、きわめて敏感な検査です。しかし、骨を豊富に形成するような癌(たとえば、前立腺がんの転移や骨肉腫など)では陽性に出ないことがあります。また、PETは県内に3施設にしかない検査です。
 骨転移の病変がレントゲン検査ではわからないことがあるのでしょうか?
 リンパ腫や胃がんの一部など、骨髄内に病変を作っても、骨を大きく破壊することの少ない腫瘍では、骨転移がレントゲンでわからないことがあります。骨シンチを行っても、肝臓癌や骨髄腫では陽性に出ないことがあります。MRIなどの検査を組み合わせて、総合的に判断しないと診断にいたらないこともあります。
 骨転移の治療の場合、放射線治療、陽子線治療、重粒子線治療では効果的に差異がありますか?
 骨転移の放射線治療は、通常のレントゲン線による治療が原則です。陽子線、重粒子線は治療対象が重要臓器に近接し、小さい場合に威力を発揮しますが、骨転移で対象となることはほとんどありません。
 頭蓋骨に転移があった場合どのような治療をするのか教えてください。
 頭蓋骨転移だけに対して積極的な治療はしません。大きくなって脳を圧迫したり、脳の表面の硬膜の中に浸潤してくるようであれば放射線治療の対象になります。
 前立腺がんで肋骨と骨盤に転移があり、現在無治療で経過観察中です。今後症状が出現した場合はどのような治療法がありますか?
 前立腺がんは最も放射線治療の効果が高い癌のうちのひとつです。したがって、骨転移については放射線治療が原則です。しかし、骨転移があっても日常生活にさほど支障の無い状態であれば、ホルモンや、抗がん剤治療の効果を待ってからでもいいです。
 骨転移は非常に痛いと聞きますが、具体的にどのような痛みなのでしょうか?
 脊椎転移は、体の大黒柱が破壊されるわけですから、起居動作の際に支えが無いと大変になります。頚椎への転移では、手とかカラーなどの支えが無いと、首を動かすのがつらい状態になります。大腿骨への転移では、片足で立つのがとても大変になります。上腕骨への転移では、物を持って持ち上げることが痛みと脱力で困難になります。
 骨転移をした場合でも腫瘍マーカーに数値として現れますか?
 もとの癌で腫瘍マーカーが高かったのであれば、骨転移でもマーカーが上がります。しかし、最初から腫瘍マーカーが上がらない癌もありますので、この場合には骨転移の場合にも指標になりません。
 治療が終了して5年以上が経ちますが、少しでも痛みがあると、骨転移が気になってしまいます。どのような心構えでいたら良いでしょうか?
 骨転移の不安はいつまでもあります(乳癌の場合には15年、20年たっても骨転移が起ります)。しかし、骨転移で怖いのは、骨が弱くなって骨折を生じたり、背骨が潰れて麻痺になったりすることで、この兆候が出始めてから治療しても遅いわけではありません。癌の既往のある人は、骨の痛みがある場合には、念のために骨転移を疑って検査することが必要ですが、逆に骨の転移が早めに見つかっても、日常生活に支障がなければすぐには治療を要さないこともあります。
 軟部腫瘍の検査は専門病院で受けることが必要だと聞きました。静岡がんセンターで検査を受ける場合はホームドクターの紹介状が必要ですか?
 軟部腫瘍の大部分は、脂肪腫とかガングリオンといわれる良性の病変です。したがって、腫瘤に気づいたらまずホームドクターに相談されるのがいいかと思いますが、講演でも述べたように5cm以上で、皮膚より深いところにある腫瘍では悪性腫瘍の可能性がありますから、当院に紹介していただくようにお願いされたほうがいいかもしれません。

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