がん看護力強化プロジェクト
静岡がんセンターは、全国のがん医療の充実を目指す医療機関と協働してがん看護力向上を計り、医師が医療に専念し、患者・家族が最善のケアを受けられる体制づくりを目指すプロジェクト「がん看護力強化プロジェクト」を実施しています。
本プロジェクトでは、派遣病院が推薦した看護師を当院職員(静岡県職員)として受け入れ、病棟などで一般の看護職員として2~3年勤務した後、派遣元病院に復帰させます。派遣費用については、静岡がんセンターが全額負担します。
プロジェクトの目標
1 がん看護総合力をもつナースを育成する。
1)手術療法、化学療法、放射線療法等、主ながんの治療について学ぶ。
2)がん治療の集学的チーム医療について学ぶ。
3)多職種チーム医療の実際について学ぶ。
4)がん看護に求められる知識、技術、態度を学ぶ。
5)電子カルテによる医療情報の蓄積・伝達・共有機能について学ぶ。
2 がん看護領域における専門技術力をもつナースを育成する。
6)化学療法を受ける患者に対して専門的な知識に基づいた看護を提供するための実践能力を習得する。
(化学療法領域)
7)緩和ケアの実践において求められる専門的な知識と看護を提供するための技術を習得する。
(緩和ケア領域)
8)ストーマの造設、褥瘡などの創傷、失禁に伴って生じる問題に対して必要な看護の知識、技術を学ぶ。
(皮膚・排泄ケア)
9)自施設にて研修内容やがん看護の知識・技術を提供できる方法を学ぶ。
3 SCC認定看護師教育課程に進むための経験を積む(希望者)
がん看護力強化研修:コース
1 化学療法看護強化コース
消化器内科、呼吸器内科、化学療法センター、血液幹細胞移植科、婦人科など化学療法の件数が多い診療科から1~2部署選択し、化学療法看護に関する能力(知識・技術・態度)を強化するコース
2 緩和ケア強化コース
消化器内科、呼吸器内科、婦人科、乳腺外科、頭頸科など緩和ケア領域の介入が多い診療科から1~2部署選択し、緩和ケアに関する能力(知識・技術・態度)を強化するコース
3 皮膚・排泄ケア強化コース
大腸外科、泌尿器科、緩和医療科などストーマ造設、褥瘡、失禁などの看護ケアが多く求められる診療科から1~2部署選択し、皮膚・排泄ケアに関する能力(知識・技術・態度)を強化するコース
4 一般外科分野強化コース
外科系の診療科から1~2部署選択し、がんの手術、外科看護に関する能力(知識・技術・態度)を強化するコース
5 がん看護総合強化コース
全診療科から1~2部署選択し、がん看護全般において求められる基礎的知識・技術・態度を習得するコース
研修方法
研修者は、研修開始前に希望するコースを選び、配属部署にて研修する。
2年間は、配属部署にて通常の勤務体制のもと実践経験を積む。
部署ローテーションは、最大2部署までとするが2年間同一部署でもかまわない。
2部署選択した場合のローテーション時期は、2年目4月とする。
配属部署はがん看護力強化プロジェクト担当者が研修者と相談の上、研修開始前に決定する。
プロジェクトの利点
1 派遣元病院の負担無しで日本一のがん看護を研修
派遣元病院が推薦した看護師を静岡がんセンター職員(静岡県職員)として受け入れ、病棟などで一般の看護職員として2~3年勤務した後、派遣元病院に復帰させる。派遣費用については、静岡がんセンターが全額負担する。
2 1年間で一般総合病院の数倍にあたるがん患者ケアに従事
がん治療件数は、都道府県がん診療連携拠点病院(一般総合病院)と比較しても手術件数で約2倍から3倍、放射線療法、内視鏡療法などの治療件数も非常に豊富である。化学療法については、外来化学療法、臨床試験、また、緩和ケア病棟を中心に年間1000例以上を超える看取りなどがんに特化した専門的ケアに集中的かつ連続的に関わることによりがん看護の知識、技術をみがくことができる。
3 多職種チーム医療の実践により、医師を含むすべての職種の役割を理解
患者、家族が心から納得して治療が受けられるように、多職種が目的、情報を共有しながら職種を超えて役割分担し、包括的な支援を行っている。看護師は、医師を含め、全ての職種の役割を理解し、チームを調整、統一する鍵となる。がんの医療において欠かすことのできない多職種チーム医療の運用概念とその実際を学ぶことが可能である。
4 最先端の電子カルテに習熟
静岡がんセンターは単なるパッケージシステムではなく、多職種チーム医療を最大限意識した電子カルテシステムを使用している。実務研修の中で電子カルテを使いこなし、その全容や利点を知ることは、他病院でシステム構築を行う際に役立つと考える。
5 すべての分野のがん専門医療技術者による座学教育の実施
4月の新採用時には、静岡がんセンターでがん医療を実践しているあらゆる分野のがん専門医療技術者による「がん」についての系統的な講義が約2週間行われる。また週1回、年間約20回行っている「臨床腫瘍学コース」は全職員対象のプログラムであり、あらゆるがんについて化学療法のみならず、手術療法や放射線療法、支持療法、緩和ケアについても学べる内容である。さらに看護部門においては、院内の専門・認定看護師が中心となって企画・運営する「がん看護専門コース」があり、がん化学療法、がん性疼痛、創傷ケアなど特定の専門技術力を習得するための教育を実施している。
6 認定看護師資格取得準備
皮膚・排泄ケア、がん薬物療法、緩和ケアなどがん関連の認定分野教育課程に入学するための十分な経験は、日常臨床の中で積むことができる。さらに「がん看護専門コース」は認定看護師教育課程進学を意識したコースでもあるため、特に臨床経験がある場合にはコースに参加することが認定看護師資格取得の準備につながる。また院内の専門・認定看護師の実践を見たり、共にケアを実践したりすることで、資格取得へのモチベーションの向上につながることをねらいとしている。