陽子線治療とは

陽子線治療は、“がん”(悪性腫瘍、肉腫などの総称)に対して用いる放射線治療法のひとつです。放射線と聞くと、X線やガンマ線を連想するかもしれませんが、それらにかわって“陽子線”を使うのが陽子線治療です。陽子線とは何か。なぜ陽子線を使うのかを、以下にくわしくご説明しましょう。

陽子線とは

“陽子”とは、水素の原子核のことで、プラスの電気を帯びた粒子です。陽子は、水素ガスを材料として高温のプラズマ状態の水素原子から電子を引き離してつくります。そして特別な装置を用いてたくさんの陽子を真空中でいっきに加速すると、体のなかへの透過力が大きくがん細胞を破壊する力をもつ“陽子線”となります。このとき用いる装置を加速器とよび、陽子のスピードは光速の70%近くになります。

陽子線の特徴

“陽子線とは”の説明のなかで、「体のなかへの透過力が大きい」と述べました。じつは陽子線の特徴は、それだけではありません。
陽子線がもつ“荷電粒子線”の性質がつぎのような治療に適した特徴を生むのです。
陽子線が一定のエネルギーをもち同じスピードの陽子が体の中に入ると、すべての陽子はある一定の深さで完全に止まります。このため陽子線は、その一定の深さよりも奥へは到達しないので、無駄な照射を防ぐことができます。またこの深さは自由に調節できます。
しかも陽子がもつエネルギーはこの止まる間際のところで、もっとも多く体に与えられます。言い換えると、陽子線として照射される放射線量が、ある一定の深さで非常に効率的に使われるのです。 下図をご覧ください。X線やガンマ線は、放射線量の多くが体の表面近くで吸収され、深部に到達する量は少なくなってしまいます。逆に陽子線は、深部(狙った部分=腫瘍があるところ)でピークを迎えます。この特性を活かすのが陽子線治療です。

深部線量曲線

img_a1

なぜ陽子線を使うのでしょう

陽子線治療のメリット

上にも述べたように、陽子線が完全に止まる場所は、陽子線のエネルギーを変えることで、自在に決めることができます。ですから、陽子線は病巣を狙い撃ちすることができます。さらに特別な装置で高線量を付与するピークの幅を自由に広げることができるので、いろいろな厚みをもつ腫瘍を“体内の標的”とすることができます。こうして狙った場所だけに、多くの放射線量を効率よく照射することができる。陽子線を使う意味は、まさにここにあります。そのメリットを、以下に整理してみました。

患者さんにとってのメリット

 

陽子線治療装置のしくみ

陽子線治療について

陽子線治療について