ASCO 2026で口演発表:脳転移に対する術前定位放射線治療+摘出手術の有効性・安全性試験

2026年7月1日
脳神経外科部長 三矢幸一

2026年5月30日(現地時間)に米国・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)で口演発表を行いました。下記に発表内容をご報告します。

発表内容

 静岡がんセンター脳神経外科が主導する多施設共同・単群第II相試験「脳転移に対する術前定位放射線治療+摘出術の有効性・安全性試験(NEO-TACTICS trial)」の結果を、2026年5月30日(現地時間)、米国・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会年次総会2026(ASCO 2026) において発表しました。

 本試験は、大型脳転移(径2〜5 cm)に対する新たな局所治療戦略として、術前5分割定位放射線治療(SRT)後に摘出手術を行う集学的治療の成績を前向きに検証した、多施設共同・単群第II相試験です。

 主要評価項目である 6か月局所再発割合は4.3% であり、髄膜播種(LMD)は6か月、12か月ともに0% でした。また、無症候性放射線壊死(RN)は6か月時点で5.9%、12か月時点で8.0%に認められましたが、症候性放射線壊死は6か月・12か月ともに認めませんでした(0%)。
これらの結果から、大型脳転移に対する術前5分割SRT+摘出術は、優れた局所制御、髄膜播種の制御、および良好な安全性を示し、有望な新規治療選択肢となる可能性が示されました。

研究代表者からのコメント

今回の研究では、非常に有望な結果が得られました。
 従来、脳転移の手術後には全脳照射が広く行われてきました。しかし、近年のがん治療の進歩により、脳転移の手術後も長期生存が期待できる患者さんが増えています。そのような中で、全脳照射後に数年経過してから生じる認知機能低下や歩行障害など、晩期の神経障害が重要な課題となってきました。
 我が国では、JCOG0504試験(手術+全脳照射 vs 手術後経過観察・残存/再発時サルベージSRS)が実施され、現在では、全摘後は経過観察を行い、残存または再発時にサルベージSRSを行う治療戦略が標準的に用いられています。
 一方で、この治療戦略においても、摘出腔周辺の脳内に染み込んだ“見えないがん細胞”による局所再発、“見えないがん細胞”の散らばりによる髄膜播種、さらに術後照射に伴う晩期の放射線壊死が課題でした。
 NEO-TACTICS trialは、術前5分割定位放射線治療と外科的摘出を組み合わせた新しい治療戦略を前向きに検証した多施設共同第II相試験です。ASCO 2026で本試験の成果を発表できたことを大変光栄に思います。今後は、第3相ランダム化比較試験で、この治療戦略の臨床的意義をさらに明確にしていきたいと考えています。

 ご協力いただきました患者さん・ご家族の皆様、放射線治療科の皆様、14施設の先生方、CRCの皆様、当院のデータ管理室の皆様、臨床研究支援センターの皆様に、心より感謝申し上げます。

静岡がんセンター脳神経外科
部長 三矢 幸一

本試験について

〇 転移性脳腫瘍(脳転移)の手術治療について

大型脳転移に対する従来の治療では、摘出手術単独、または術後に放射線治療を追加する方法が広く行われていますが、局所再発、髄膜播種、放射線壊死など、なお解決すべき課題があります。
これに対し、腫瘍を摘出する前に放射線治療を行う 「術前定位放射線治療」は、これらの課題を軽減しうる新たな治療戦略として注目されています。

〇 NEO-TACTICS trialについて

NEO-TACTICS trialでは、手術適応のある大型脳転移1個(径2〜5 cm) と、手術を要しない最大3個までの小病変(2 cm未満) を有する患者さんを登録しました。
対象患者さんに対し、術前5分割SRT(6〜7 Gy × 5回) を施行した後、外科的摘出を実施し、局所制御、脳内病勢制御、認知機能の維持、安全性 などを評価しました。

〇 試験の結果の詳細

主要評価項目

副次的評価項目

(写真)ASCOで発表する三矢幸一医師

研究内容に関するお問い合わせ

静岡がんセンター 脳神経外科 三矢幸一
電話:055(989)5222(代表)


関連サイト

 ・ 「脳転移に対する術前定位放射線治療+摘出手術の有効性・安全性試験」についてASCO 2026で口演発表へ(2026年4月28日付け) 

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