国内初となる「支持療法センター」の設置について
2016年9月8日
静岡県立静岡がんセンター
がんは、男性の2人に1人、女性の3人に1人が一生のどこかでがんにかかると言われており、大変身近な病気となりました。また、人口の高齢化とともにがんの罹患数が増加するなか、5年生存率も60パーセントを超え※1、がん体験者やがんを抱えながら暮らす方が増えており、がんと共生する時代を迎えています。
静岡がんセンターでは、2002年の開院当初より、病気からくる症状や治療に伴う副作用の治療・予防やケアを行う“支持療法”を、抗がん治療・緩和ケアに並ぶ3大治療方針の一つに掲げて実践してまいりました。具体的には、リハビリテーション科や歯科口腔外科等での治療や予防・ケアの実施や指導、治療にあたって患者さんが知っておかなければならない情報をわかりやすくまとめた冊子やビデオの制作、それらの情報を手に取りやすい場所でコンパクトに情報提供した情報処方の取り組みなどを行って参りました。この十数年間の経験を踏まえ、支持療法をより適切に提供するため、3階の化学療法センターを一部改修、これまでの処置センターを名称変更して国内初となる「支持療法センター」を立ち上げ、8月29日より運用を開始いたしました。1日65名ほどの患者さんに対応しています。支持療法センターでは、静岡がんセンターの様々な部門で実施される支持療法を統括するとともに、センター自身の活動として「からだの苦痛」の軽減に焦点を当ててがんと共生する暮らしを医療面からサポートし、がん患者さんの在宅療養支援を推進して参ります。
「支持療法センター」は、個室治療14床、相談室2床を設け、治療中のプライバシーに配慮した設計にしています。また、専任の看護師と認定看護師を配置し、抗がん治療による副作用には患者家族支援センターと連携し、医師・がん専門の看護師・栄養管理士・薬剤師・リハビリテーション・口腔ケアチーム等で支援し、医療用具の管理方法や衣食住に関する相談・管理方法は、患者さんやご家族だけでなく、連携する訪問看護師にも実技指導を行なって参ります。
※1 国立がん研究センターHP http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160722.html
●支持療法センター開設にあたってのコメント(副院長 兼 患者家族支援センター長 鶴田清子)
この数年の間に、抗がん剤や副作用を抑えるさまざまな薬が登場し、化学療法・放射線療法などは外来でのがん治療が主流になってきています。また、入院日数の短縮化が進み、入院中に患者さんとかかわる時間は以前に比べ短くなりました。しかし、高齢がん患者さんが年々増加し、老老介護や単身世帯の増加、家族関係の変化などで介護力は低下してきています。当院では初診から在宅に至るまで、通常の診療では十分にできない患者家族支援を集中して行う「患者家族支援センター」を4月より本格稼働させ、「よろず相談」とともに、患者さんの悩みや負担を和らげる支援を行って参りました。今回設置した「支持療法センター」により支援体制が更に強化されることになります。この3部門が相互に連携し、患者さんが安心して診断・治療・在宅療養生活を過ごせる質の高い支援が提供できると確信しております。
【支持療法センター概要】
設置場所 | 3階「支持療法センター」(化学療法・支持療法センター内) |
延べ床面積 | 370平方メートル(個室16床、相談室2床含む) |
スタッフ | 看護師長1名(化学療法センター兼任)、看護師7名(うち、がん化学療法認定看護師2名)、看護助手2名、事務員2名 |
実施内容 | 1)がんの症状緩和 ・デルテックポンプ(輸液ポンプ)による疼痛コントロール(麻薬管理) ・体液貯留のドレナージ(胸腔および腹腔穿刺) ・排泄ケア(排便コントロール、尿道留置カテーテル交換) ・褥創ケア ・脱水に対する補液等 2)副作用対応 ・治療(処置) -輸血療法 -制吐療法 -排便コントロール -脱水予防の補液 -骨髄抑制時の抗生剤投与、G-CSF製剤の投与等 ・ケア -ざ瘡様皮疹、爪囲炎のスキンケア等 ・指導 -感染予防セルフケア -制吐剤、緩下剤、止痢剤、解熱剤の使用方法 -静脈ポートの抜針、在宅IVHの指導等 3)その他の治療 ホルモン療法、ビスホスフォネート剤 |
(写真) 左:支持療法センター 上:相談室(静脈ポートの抜針指導例) |
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⇠ 個室 左:リクライニングタイプ 右:ベッドタイプ |
プレスリリースPDFはこちら→ (PDFファイル:162KB)
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静岡県立静岡がんセンター マネジメントセンター 医療広報担当 TEL 055(989)5222