日本人がんゲノムデータベース (JCGA)を公開
静岡がんセンター プロジェクトHOPE 研究成果
日本人がんゲノムデータベース (JCGA)を公開
「がんゲノム医療」における日本人がんゲノム情報の利活用を推進
2021年3月15日
静岡県立静岡がんセンター
静岡県立静岡がんセンターは、国内初の日本人がんゲノムデータベースとして日本版がんゲノムアトラス「JCGA(Japanese version of the Cancer Genome Atlas)」を構築し、このほどウェブサイト(https://www.jcga-scc.jp/ja)に公開いたしました。このデータベースは、ファルマバレープロジェクトの一環として取り組んでいるがんゲノム解析研究「プロジェクトHOPE (High-tech Omics-based Patient Evaluation)」の成果で、現在、がんの臨床検査として用いられている「がん遺伝子パネル検査（以下、がんパネル検査）」の結果評価に役立ち、また、将来におけるがんの本態解明にも役立てられます。
プロジェクトHOPEは、静岡がんセンターで腫瘍摘出手術を受けた患者を対象に、日本人のがんの原因となる遺伝子変化を詳しく調べ、それを臨床情報と結びつけることで、がんの本態を解明し、診断や治療に役立てることを目標に進められている研究です。現在までに約8000症例分のゲノム情報が集積され、日本最大のがんゲノムデータベースが構築されました。その成果を、創薬あるいは診断技術の開発に役立てるため、2014年1月から進められてきた㈱エスアールエルとの共同研究のさらなる強化を目指し、2018年10月には、エスアールエル・静岡がんセンター共同検査機構㈱が設立され、遺伝子検査サービスの開発が進められています。
その成果の一つとして、この度発表するJCGAは、134のがん種から成る約5000症例についての全エクソン解析結果に基づく「がん種横断的日本人がんゲノムデータベース」です。同じがん種であっても欧米人と日本人との間には、遺伝子変化に違いがあります。これまでは、欧米人のがんゲノム情報を用いてがんの遺伝子変化を評価せざるを得ませんでしたが、今後は、JCGAを用い、日本人特有のがんの遺伝子変化を評価することが可能となります。
がんパネル検査は、数百の遺伝子を対象に一度の検査で遺伝子変化を明らかにする臨床検査で、2019年6月に保険収載されました。JCGAでは、保険適用となっているがんパネル検査の解析対象遺伝子すべてを含む460遺伝子を選び、公開の対象としました。JCGAの遺伝子情報は、がんパネル検査で検出された遺伝子変化の評価に役立てるのみならず、利用者ががんゲノム医療の理解を深めるように構築されています。そのため、がんゲノム医療を担当する医療機関に整備されたエキスパートパネルにおける活用が始まっています。さらに、日本語表記であるため、患者への情報提供にも役立ちます。
今後、プロジェクト HOPEでは、「全ゲノム解析」や「ゲノムメチル化修飾※１」などを検討し、日本人がんゲノムデータベースを強化して参ります。この結果、これまでは、がんの原因を明らかに出来なかった一部のがんについての本態解明が進むことが期待されます。
※１：ゲノムメチル化（DNAメチル化）はDNA配列の変化に因らない遺伝子発現に影響を与える遺伝子変化であり、胃がんなど一部のがん種ではがん抑制遺伝子の発現抑制を引き起こし、発がんの要因になっていることが知られている。
☞ JCGA作成者からのコメント
芹澤昌邦（静岡がんセンター研究所 新規薬剤開発・評価研究部 主任研究員）
JCGAは、静岡がんセンター単一施設での研究成果を臨床情報と結びつけ、構築した日本人がんゲノムデータベースです。このデータベースを活用することによって、医療機関はもとより、がんパネル検査を受けた患者やその家族も検査結果の理解を進めることが出来るでしょう。静岡がんセンターは、今後も、がんゲノム医療中核拠点病院として、我が国のがんゲノム医療の発展に貢献してまいります。
日本版がんゲノムアトラスJCGAのホームページ
掲載URL：https://www.jcga-scc.jp/ja
＜EGFRの掲載例＞
・解説：遺伝子の機能や、がんとの関連性についての説明を記載しています。
・がん種別変異頻度
二つのグラフは検出された遺伝子変化の頻度を、値の高いがん種から順に表示しています。最初のグラフは塩基置換および挿入・欠失の検出頻度を、次のグラフはコピー数変化の検出頻度を示しています。
・遺伝子変異総量(Tumor Mutation Burden)の分布
遺伝子変異総量（TMB）のがん種別分布を示しています。ピンクのシンボルはEGFRに変異を持つ症例のTMB値を示しています。
●プレスリリース
日本人がんゲノムデータベース (JCGA)を公開（PDF：560KB)
●関連サイト
「プロジェクトHOPE (High-tech Omics-based Patient Evaluation)」（がんのマルチオミクス解析）
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