医療事故に係る和解の成立について

2024年11月26日
静岡県立静岡がんセンター

 当院において、口腔底がん(ステージⅠ)の手術前検査で食道がん(ステージⅡ)の所見を見落とし、進行食道がんの状態となってから治療を開始したという医療事故について和解が成立しましたことをご報告いたします。
 この医療事故は当院に過失があり、ご遺族様からの訴訟を経て本年9月に和解となりました。

 患者さんは60歳代の男性で、2017年11月、口腔底がんの診断で当院の頭頸部外科を受診しました。頭頸部外科担当医(以下「担当医」)は口腔底がん手術前の検査として、 CT検査、MRI検査、内視鏡検査をオーダーしました。担当医はCT画像をチェックしたものの、画像診断科医師によるCT検査画像読影の報告書は未確認の状態でした。その報告書には「食道にチェック所見があるため追加評価を行う必要がある」と追加検査が必要である旨や、内視鏡検査報告書においても、「中部食道前壁を主座とする粘膜下層深部浸潤を伴う食道表在がん30mmを認める」と記載されていたにも関わらず、担当医はこれらの報告書の確認を失念しました。また、口腔底がん手術前の頭頸部外科カンファレンスにおいても、口腔底がん手術の治療部位に対する画像しか確認しておらず、食道がんに関する画像の供覧は行われなかったため議論されないまま同年12月に口腔底がんに対し切除術が施行されました。
 2018年3月、患者さんは飲み込みにくさの自覚症状があったため、他院で内視鏡検査を実施したところ、進行食道がんを指摘され同月に当院を受診しました。受診時、担当医は患者さんから当院での検査結果を尋ねられ、担当医が未確認であった2017年12月実施のCT検査や内視鏡検査の報告書等を確認し、食道がん所見の見落としがあったことが発覚しました
 食道がんはステージⅢの進行がんとなっており、口腔底がんと食道がんの重複がんであったことがあらためて認識されました。食道がんに対して化学放射線療法がおこなわれ、その後まもなく口腔底がんの再発も認め、2018年10月にお亡くなりになりました。

 当院では、事故原因の究明と再発防止策の策定のため、外部の専門家を含む医療事故調査委員会を開催(2018年5月)しました。その結果、口腔底がん術前の内視鏡検査で粘膜下層浸潤を伴う食道表在がんと指摘されていましたが、そのことに担当医が気づかないまま治療が進められた結果、食道がんの進行をきたしたと判断されたことから、監督官庁に届け出を行うとともにご遺族様へ医療事故調査委員会の結果をお伝えしお詫びいたしました。

 お亡くなりになられました患者さんには心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族様には多大なご心痛をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。当院といたしましては、今回の事故を深く反省し、二度とこのような事故を起こさないよう再発防止に努め、最善で適切な医療を提供できるよう、職員一丸となって努力してまいります。


●プレスリリース
医療事故に係る和解の成立について(PDF:186KB)
(資料編)医療事故に係る和解の成立について(PDF:328KB)

本リリースに関するお問い合わせ

本件に関するお問い合わせは下記までお願いいたします。
静岡県立静岡がんセンター RMQC室(医療の質・安全管理室)
      電話:055(989)5222(代表)(平日:9時30分~17時)

カテゴリー

カテゴリー