腸閉塞の手術後に誤嚥性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症し、 死亡された医療事故のお詫びとご報告

2024年6月13日
静岡県立静岡がんセンター

 当院において、腸閉塞解除術の麻酔導入時に吐物の吸引不足により誤嚥性肺炎からARDS(急性呼吸窮迫症候群)を発症し、お亡くなりになる医療事故が発生いたしました。

 患者さんは70歳代の男性で、S状結腸がんと食道がんの治療を受け、さらに胃管再建術(胃を管状(胃管)にして食道の代用にする手術)を受けられたのち、外来通院されていました。2022年9月、癒着性の腸閉塞の診断により緊急手術となりました。麻酔導入時、マスクを用いて用手的に換気を開始したところ、直後に嘔吐されました。口腔内を吸引し吐物が残存していないこと、喉頭鏡でも吐物がないことを確認した後に気管内挿管を行い、さらに吸引チューブで気管内吸引を行いました。吐物がほぼ吸引されてこなかったことから手術の開始は可能と判断し、予定どおり実施しました。手術終了後、酸素飽和度が低下したため気管支鏡を施行したところ、左肺下葉を中心に両側気管支に緑がかった茶色の液体が多量に存在し、麻酔導入時の嘔吐で誤嚥していたことが明らかになりました。ICUにて集中治療を行いましたが、呼吸状態が悪化し、翌日、お亡くなりになられました。
 お亡くなりになられました患者さんには心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆様には多大なご心痛をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

 当院では、事故原因の究明と再発防止策の策定のため、外部の専門家を含む医療事故調査委員会を開催しました。その結果、死亡原因は麻酔導入時に多量の吐物が気管内に存在している状態で手術を行い、さらに陽圧換気をしていたことにより、誤嚥性肺炎から急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症し、全身状態が急速に悪化したと推察されました。

 本医療事故については、監督官庁に届け出を行うとともに、医療事故調査・支援センターに報告を行いました。2024年3月、ご遺族様との和解が成立いたしましたので、ここに本医療事故のご報告とともに公表させていただきます。当院といたしましては、今回の事故を深く反省し、二度とこのような事故を起こさないよう再発防止に努め、最善で適切な医療を提供できるよう、職員一丸となって努力してまいります。

 ※ 陽圧換気:医療機器や器具を使用して気道内に空気を押し込み、肺を広げる呼吸法。圧を加えることにより気道内圧が高くなるため血液の循環動態や肺に影響を及ぼす可能性がある。一般的な麻酔時の導入、維持には陽圧換気が用いられる。


●プレスリリース

本リリースに関するお問い合わせ

本件に関するお問い合わせは下記までお願いいたします。
 静岡県立静岡がんセンター RMQC室(医療の質・安全管理室)
      電話:055(989)5222(代表)(平日:9時30分~17時)

カテゴリー

カテゴリー