医療現場のものづくり 手術用の頭頸部固定枕を開発~手術時の体位変換に伴う頸部損傷リスクを回避~

2022年12月14日

静岡県立静岡がんセンター
静岡県工業技術研究所
浜口ウレタン株式会社
(公財)ふじのくに医療城下町推進機構ファルマバレーセンター

 医療現場発のものづくりを支援する公益財団法人ふじのくに医療城下町推進機構ファルマバレーセンターは、医療現場で必要とされる医療機器やケア用品などのアイデアを募集し、地域企業と医療機関との共同研究、製品化し販売するまでの支援をしています。

 この度、静岡県立静岡がんセンター(総長:山口建、以下「静岡がんセンター」)、静岡県工業技術研究所(所長:杉山直人、以下「工業技術研究所」)、浜口ウレタン株式会社(本社:静岡県浜松市、代表取締役社長:浜口弘睦、以下「浜口ウレタン」)は、手術中の体位変換時、挿入された気管内チューブの脱落や、患者の頸部損傷が起きないよう、頭頸部の動きを高精度に抑える手術用頭頸部固定枕「エイトフィット」を開発いたしました。

【開発の背景】 
 医療現場からの要望の中に、手術中における頭頸部の固定があります。頭頸部の重さは体重の約7%と人体の他の部位よりも重く、多関節で構成される頸部で体幹と接続されているため、全身麻酔等の手術中は適切な状態に保持して頸部損傷を予防する必要があります。

 手術中、頭頸部は体位変換によって様々な方向に移動しますが、現在使用されている固定枕では体位変換に伴う頭頸部の移動を防止することはできません。その為、頭頸部の固定方法は医療現場の対応に委ねられているのが現状です。そこで今回手術中に頭頸部を安定して固定できる固定枕の開発に至りました。

【開発の経緯】
 ファルマバレーセンターは、2019年4月静岡がんセンター手術室より全身麻酔等の手術中において頭部を適切な状態に保持して頸部損傷による神経障害を予防するための頭頸部固定用枕の研究開発の提案を受けました。

 手術中、頭部は体位変換によって様々な方向に移動するため、人体の頭部形状モデルを用いた力学的な検討に基づいて枕形状を決定する必要がある考え、静岡がんセンター、工業技術研究所が三次元人体モデルを活用した頭部固定性能を有する枕の共同開発に着手いたしました。

 その後、2021年6月より手術用頭頸部固定枕の開発・事業化を図るため、ファルマバレーセンターが県内企業とのマッチングを検討し、ウレタンの成型加工に卓越した技術を保有する浜口ウレタンが新たに共同開発に加わりました。
なお、開発事業化には、ファルマバレーセンターの医療機器等開発助成事業費補助金を活用いたしました。

【本製品の概要】
 開発した枕は「エイトフィット」と名付けられ、手術中における患者の頭部の動きを高精度に抑えることができる手術用枕です。頭頸部の安定した固定と医師・看護師の作業を考えた気管挿管しやすい形状とスニッフィングポジションを取りやすい設計とし、持ちやすく扱いやすい軽量感で患者の肌へのソフトなフィット感とやさしいフォルムを実現しました。

【製品名の由来】

  1. すべての人にフィットする枕にしたいとの思い。
    数字の[8]を横にすると[無限(すべて)]を意味する記号になることから。
  2. 浜口ウレタンとして医療製品のスタートになることから、未来に向けて末広がりになる事業へとの思いから漢数字[八]の英語読み、エイト。 
  3. 「この枕は患者さんに良いと(エイト)」言われる商品にしたいとの思い。

<開発に携わった看護師のコメント(静岡がんセンター看護部手術室看護師長・泉 眞美)>
 手術中は体位変換するたびに頭頸部が移動し、挿管チューブの位置が変化することで換気障害・神経障害が生じるリスクがあります。また、長時間手術においては、頭頸部の皮膚に「ずれ」が生じて褥瘡の原因にもなります。手術中の患者の安全を担保し、かつ医師が挿管しやすい理想的な枕を探し求めていましたが、納得のいくものが見つからず、今回の共同開発に至りました。数々の実験・検証を繰り返し、ようやく頭頸部が固定され移動が少ない理想の枕が完成しました。枕の材質にもこだわり、使用後アルコール製剤で清拭できる素材のため感染管理上扱いやすい枕です。


●プレスリリースPDF

手術用頭頸部固定枕(エイトフィット)に関するお問い合わせ 

※本リリースに関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。

ファルマバレーセンター 事業推進部
 〒411-0934 静岡県駿東郡長泉町下長窪1002-1静岡県医療健康産業研究開発センター1階
 電話:055-980-6333 FAX:055-980-6320

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