国内初 AYA世代を集めた「AYA世代病棟」を設置

平成28年1月21日
静岡県立静岡がんセンター

 血液のがんである白血病や悪性リンパ腫、脳腫瘍、骨軟部肉腫、神経芽腫などは、小児期に発生することが多い小児がんで、年間2500名程度の子どもが罹患して治療を受けています。小児がんは1960年代から年を重ねる毎に治癒率が向上し、今では7~8割程度の患者さんが病気を克服し、長期に生存出来るようになりました。しかし、0歳から15歳くらいまでに発症した小児がんの患者さんは、思春期や若年成人(AYA※1世代)の年代になった後にがん自体により、あるいは治療に関連して身体に望ましくない影響が出ることがあります。その結果、晩期合併症と総称される成長・発達への悪影響、日常生活に支障を来す身体的な変化、生殖機能等への影響、再発や2次がんの問題が生じています。この晩期合併症は、小児科や各がん種の専門診療科で対応している医療機関が大半であるため、小児からAYA世代までの継続的に治療が行える小児がんの診療体勢の整備・改善が望まれていました。

 また、小児がんの倍程度いると推定されるAYA世代がん患者の特徴として、①発生部位が多臓器にまたがっており、小児に多くある小児型のがんと大人に多い大人型のがんが混在していたり、小児型のがんがAYA世代になって発生する場合や大人型のがんがAYA世代のときに発生するなど、その多様性がみられること、②がん治療の進歩を表す指標の一つとされる5年生存率の改善の割合(5年生存率の年平均改善率(1975年から1997年)をみると、AYA世代は他の世代に比べて極端に低い状況にあること(※2)、③小児慢性特定疾患などの公的な補助制度は最長20歳までであり、40歳以上が給付対象となる介護保険からも外れており、社会的支援が乏しいなどが挙げられます。そして、AYA世代のがん患者の絶対数が少く、最適で効果の高い優れた治療方針は十分に確立していると言える状況ではなく、多診療科による広い領域での診療が求められています。さらに、多くの医療機関では小児科は15歳程度までの年齢制限があり、それ以降は成人の診療科で診ていることが多く、AYA世代では、シームレスな診療を受けることが難しいという状況にあります。

 そのため、当院では、AYA世代のがん患者に注目し、この世代に必要な医療ニーズを拾い上げるため、AYA世代のがん患者を同じ病棟に集めた国内初となる「AYA世代の病棟」を設置いたしました。病棟は、4階東病棟にあった小児病室やプレイルームを6階東側病棟に移動し、一部の病室を改修して従来の整形外科との合同病棟とし、小児世代からAYA世代、成人までを1つの病棟内に集約しました。昨年6月半ばより運用を開始し、AYA世代の患者さんの割合を徐々に増やしています。

 この病棟の中心となる小児科は、さまざまな固型がんに対して年令を考慮した幅広い治療を行っており、整形外科・頭頸部外科・脳神経外科・放射線治療科・陽子線治療科等の診療科による連携治療や、リハビリテーション科、歯科口腔外科、形成外科、腫瘍精神科などの支持療法を担当する診療科、これらを支援する多職種の専門スタッフで対応しています。今後は『AYA世代のあるべき診療』を提供することを目標に、最適な治療およびケアを目指していきます。また、若者たちが抱く将来の不安や悩みを共有しながら、夢を支え合うような新しい文化を創り出し、治療への前向きな効果を期待しています。

※1 AYA世代:Adolescent and Young Adultの略。定義は、各種あり、15-29歳程度の年齢層を、含めることが多い。

※2 出典:Average Annual Percent Change(AAPC) in 5-year Relative Survival for All Invasive Cander, SEER 1975-1997: Cancer Epidemiology in Older Adolescents and Young Adults 15 to 29 Years of Age,13, Figure 1.28

● 小児科部長 石田裕二医師のコメント
全てのこども、若者は夢を持っています。これらの夢は、社会の大切な財産です。この貴重な財産は大切にされるべきです。小児期やAYA世代にがんに罹患することは、その人、その周りの人達にとって、予想もしない大きな出来事で、この大切な夢をむしばんでしまいます。この世代の人達には、この世代にあった特別な医療の姿があると思います。この世代の人達を中心に、医療者が集まり、力を合わせる仕組みをつくります。若者の持つさまざまな力を引き出し、医療者がそこから学び、この世代に関わる多くの診療科と新しい連携の枠組みを作り、適切なAYA世代診療の提案をしたいです。こどもや若い人達を、再び笑顔で、社会におくりだす医療を目指します。

【病棟改修の状況】
   病床数  38床
   特 徴 ①無菌室エリアの整備
        2床室2部屋の一般病室をプレイルーム(無菌室(ISOクラス100,000))に改修。
        個室2部屋の一般病室を無菌室(ISOクラス10,000)に改修。
       ②一般個室を陰圧室に改修
       ③良好な療養環境を整備

プレスリリースはこちら →ico_pdf(PDFファイル:155KB)

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※本件に関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。
静岡 県立静岡がんセンター マネジメントセンター 医療広報担当  TEL 055(989)5222

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